第14話 美佳の驚き
ギルドから少し離れてから少し歩いた後、目立たない裏路地で一度足を止めた。
「ねえ神原さん、・・・」
「ミカで良いって言ったでしょ!」
「そうか。じゃあミカはどうやってギルドの建物から離れたというか、出たんだった?」
「トイレに行くって言って、トイレの個室にある窓から出たに決まっているでしょ!」
「あの窓って小さくないか?俺には通れないぞ」
「女なら何とか出られるわよって、今、失礼なこと考えたでしょ?これでもCカップはあるんだからね!」
「・・・」
確かにそれくらいはありそう・・・ってそうじゃなく、俺はそろそろ騒ぎが起きるころかなと感じた。
「分かった。ミカの胸はこの際どうでも良いから、もうすぐ誰かが異変に気がつくはずだ。ちなみに荷物は大丈夫そうか?」
「基本的に講習に必要なのと、召喚時の服を身に着けているわ。ただ、替えの服や下着が少ないのがネックかな。支給された服の殆どは置いてきているわ。召喚時に着ていた制服を後生大事に持ち歩く子は他にもいたから、怪しまれなかったはずよ」
「大丈夫。下着以外はある程度買ってあるよ。逃げる時に下着だけは買っていこうか?ただ、今は俺の指示に従って欲しい」
「了解。アンタの指示に従えば良いのね。フフフ。エッチな指示がないことを祈るわ」
美佳はニヤリと笑った。
「え?どういう意味だ?」
「今のアタシはアンタの指示に何でも従うしかないのよ。おっぱいをちょっと触ったり、パンツぐらいなら見せたりくらいなら我慢するわ。夜伽と言われたら従うけど、そんなこと要求してきたら佳苗に嫌われるんだからね!」
「そ、そんなこと要求しないに決まってるだろ!」
俺は顔を赤らめながら反論した。
そのやり取りを聞いていた佳苗はジト目で俺を見つめた。
「ふーん、私にもそんな要求するつもりなの?」
少し冷たく言われた。
「ち、違うよ!そんなこと絶対に言わないって!」
「わかってるわよ、冗談よ。冗談よ。真に受けるなんてかわいいわね!」
佳苗は笑みを浮かべたが、ほっとしたように胸を撫で下ろすのを見逃さなかった。
このように言ってきたが、俺を全面的に信頼できるはずもなく、機先を制したのかな。
再び歩み始めたが、目当ての服屋に辿り着いた。
「悪いけど最低限の時間で下着とか、肌着を買ってくれ。落ち着いたら買いなおせば良いからえり好みをする時間はないから・・・」
2人は頷くと店に入る。
2人には俺では買えなかった女性用の下着や肌着を中心に買い物をしているが、その間俺はすぐ近くの薬屋で状態異常の解除薬を数個買い足し、彼女たちが必要なものを揃えた後、再び合流すると町の外れ、つまり防壁がある場所を目指した。
買い物を終えて防壁がある方に向かう途中、突然騎士団と思われる1隊が現れ、俺達に緊張が走った。
「やばい、騎士団だ。隠れろ!」
俺たちは近くの裏路地の物陰に身を隠し、様子を窺った。騎士団は急いでいるようで、俺たちの近くを通り過ぎていく。向かった先を見ると、どいたも捕縛劇を行っているようだ。俺達も様子を見に行ったが、どうやら盗賊を追い詰めていたらしい。
「なんだ、盗賊の捕縛劇だったのか・・・」
俺はホッとしながら呟いた。
数分後、無事に防壁に着いたが、ミカが文句を言った。
「ちょっと、ここ防壁よ!逃げるんじゃなかったの!?」
「この扉に入ってくれ。俺のスキルで、安全地帯って言うんだ。詳しくはこの異空間の中で話す」
俺は防壁沿いに出した安全地帯を指差し、美佳の肩を掴んで中に押し込むと、痛いとか文句を言っているのを無視し、佳苗ともども安全地帯の中に入り、直ぐに扉を消した。
「ここが安全地帯なんだ・・・凄い・・・ここって異空間なわけ?」
美佳が驚きながら呟いた。
「そうだよ。ここなら扉を消せば外からは誰も入れないから安全だ。外に出るときも周囲の状況を確認できるから安心して移動できる。別のところに扉を出せば、入口とその分違うところに出られる。うまく活用すれば壁抜けができるんだ」
「確かにこれを使って壁抜けが出来るのなら、王都から難なく逃げられそうね」
「その通り。だけど、これからの計画を立てよう。この安全地帯を活用して、王都の外に出てから他の国までのルートを考えるんだ。」
そうして3人による逃避行は本当の意味でスタートしたのだった。
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