第34話 2人の王女
時は少し戻り、カナエとミカが忽然とギルドから消え失せた翌日、城の一室のこと。
王宮の一室で、第2王女リリアナと第4王女シルフィスが対峙していた。豪華な調度品が並ぶ部屋の中で、2人の会話は表面的には穏やかだが、その奥には冷たい駆け引きが潜んでいた。
「シルフィス、最近あなたが山田について興味を持っていると聞きましたが、どうしてですの?」
リリアナは優雅に微笑みながらも、探るような口調で尋ねた。
シルフィスはリリアナの質問を受け、ゆっくりと首を傾げた。
「ええ・・・山田のことですか? 彼はもうこの世にいないのではなくて?」
リリアナの目が一瞬だけ鋭くなったが、すぐに穏やかな表情に戻った。
「そうですわね、あの者は追放された後におそらく・・・ね。」
シルフィスは微笑みを浮かべたまま、さらに問いかけた。
「そうですわね。でも、最近聞いた話によると、カナエとミカが行方不明になったと聞きましたわ。まるで山田と同じように。」
リリアナは一瞬だけ表情を硬くしたが、すぐに取り繕った。
「それがどうかしましたの? 彼女たちは講習が終わってから忽然と姿を消したらしいですわ。まさか、私が何かをしたとでも? 山田はメイドを襲おうとしたから追放したのですわ。何人もの兵がその現場を目撃しているのです。壁の外でどうなろうと自業自得というものではなくて? それよりもカナエとミカのことは何もわかりませんの。何か知っているのなら教えて欲しいくらいですわ。特にカナエは魔法適性が飛び抜けていて、期待の星なのです。」
シルフィスは笑みを浮かべながら首を振った。
「いいえ、そんなことはありませんわ。ただ、お姉様は何でも手を回すのが得意だから、つい気になってしまったのです。山田のように。」
リリアナは薄く笑いながら答えた。
「私は何もしていませんわ、シルフィス。それに、あなたこそ何か隠しているのではなくて? 山田が生き延びているかもしれないと、そう思っているのではなくて?」
シルフィスは一瞬だけ驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。
「まあ、もしそうなら・・・山田が生き延びているのなら、彼もまた何かを企んでいるのかもしれませんわ。私たちにとって、それが脅威になる可能性もありますわ。」
リリアナは満足げに頷いた。
「そうですわね。だからこそ、私は彼を排除したのですわ。脅威は未然に防ぐに越したことはありませんもの。」
シルフィスは内心でため息をつきながらも、表情には出さずに続けた。
「でも、お姉様、もし彼が本当に生きていて、そしてカナエとミカもまた彼と一緒にいるとしたら・・・?」
リリアナは少し考えるようにしてから、答えた。
「それならば、彼らはさらに危険な存在になるでしょうね。しかし、それを証明するまでは何も行動しませんわ。貴女、山田を見ていないでしょう? あの肥え太ったみっともない体で一晩すら生き延びれたのなら、私の近衛にして差し上げますわ。」
シルフィスは内心で、リリアナが何かを計画しているのではないかと疑念を抱きながらも、口には出さなかった。ただ、言葉の端々から、生死の確認はしていないも、山田が死んでいると、生き延びるのは無理だと確信していることだけは理解した。
「分かりましたわ。私は私なりに彼女らの行方を調べてみますわ。もし何か分かったらお姉様にも知らせますわ。」
リリアナは皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「ええ、よろしくお願いするわ。シルフィス、何か分かったら教えてちょうだい。」
2人は互いに微笑みを浮かべながらも、その笑顔の裏には鋭い駆け引きが潜んでいた。どちらも相手の真意を探り合いながらも、決して自分の手の内を明かさない。
その後、部屋を後にしたシルフィスは、廊下で待っていた部下に声をかけた。
「リリアナには絶対に気づかれないように、山田たちの行方を追い続けて。カナエとミカのことも含めて、何か情報があればすぐに報告なさい。」
部下は頷き、迅速に動き出した。
シルフィスは深く息をつきながらリリアナとの対話を思い返していた。リリアナが何を考えているのか、そして山田が本当に生きているのか。シルフィスは、真実を知るために全力を尽くす覚悟を固めた。
また、シルフィスは山田と面識がないが、リリアナがなりふり構わず山田を始末しようとしたことから、山田に興味を持った。
何か特別な力を持っており、リリアナが脅威と感じたのか、小太りと聞いているから、単に醜いものが嫌いな彼女の気まぐれか・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます