第39話 対価に待った掛かる!

 シルフィスは俺たちの前で深く息を吸い込み、重い口を開いた。


「山田様、私はあなたに謝罪しなければならないことがあります。そして、あなたに伝えたい真実があります。」


 俺たちは黙って彼女の言葉を待った。シルフィスの目には決意が宿っていた。


「あなたが自作自演の強姦未遂罪に嵌められたのは、姉の仕業です。」シルフィスはそう告げた。俺は驚きと同時に怒りが込み上げてきたが、彼女の言葉はまだ続いた。


「その証拠も、私の手元にあります。」


 ミカとカナエも一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。「それで、あんたはどうしたいのよ!」


 ミカが不機嫌そうに問いかける。


「私にはお願いしつことがあります。」シルフィスは切迫した表情で続けた。


「今、王国は危機に瀕しています。父である国王の様子がおかしく、姉が常に彼の側にいます。姉は野心家で、勇者召喚を強行しました。しかも、それが行われたのは私が所用で王都を離れている間のことで、戻ってきたときにはあなたが放逐された直後でした。」


「それで・・・?」


 俺は彼女の意図を探るように問いかけた。


「私と父は、勇者召喚には反対していました。その理由は・・・元の世界に返す術がないからです。」


 シルフィスは悲しそうな目をした。


「ですが、姉はその反対を押し切って召喚を行いました。そして今、彼女が何を考えているのか、何を企んでいるのかが分からないのです。どうやったのか、父は姉の傀儡に成り下がっております

 」


「つまり、俺たちに力を貸してほしいってことか?」俺は少し冷たい口調で尋ねた。


「そうです。どうか、国を救うために力を貸していただけませんか?」シルフィスは真剣な表情で訴えた。「私には今、あなたに差し出す対価がありません。しかし、もし成功した暁には、名目上あなたを私の夫として王族に迎え入れることを約束します。」


 俺はその言葉に一瞬息を飲んだ。まさかこんな申し出をされるとは思わなかった。しかし、シルフィスはさらに続けた。


「もちろん、ミカさんとカナエさんも第二夫人として…」


 その瞬間、ミカとカナエがシルフィスの言葉を遮った。「ちょっと待ちなさい!」ミカが鋭く言い放つ。


 カナエも鋭い目でシルフィスを見据えた。


「対価の話は私たちが聞くわ。やまっちは外に出てて。」


「え、でも・・・」


 俺は困惑したが、ミカとカナエの勢いに押される形で部屋を出ることになった。


 部屋の外で俺はギルドマスターと二人きりになった。ギルドマスターは少し微笑みを浮かべて肩をすくめた。


「まあ、女性同士の話し合いだ。俺たちはここで待っていればいいさ。それよりここ俺の部屋なんだがなぁ・・・」


 俺はため息をつき、頭をかきながら言った。


「どうしてこうなるんだ・・・」


 ギルドマスターは俺を慰めるように軽く肩を叩いた。


「まあ、王族のことなんて俺たちには分からないさ。しばらく待ってみよう。」


 俺たちは静かに部屋の中から聞こえる話し声を聞きながら待った。これからどうなるのか、俺にはまだ分からなかったが、少なくとも俺たちの物語は新たな展開を迎えようとしていた。


後書き失礼します。1話抜けてました。【油断】です。

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