第21話 森の中での戦い

 打ち合わせを終えた俺たちは、再び森を進み出した。15分くらい経っただろうか、しばらく進んでいると魔物が現れた。


「来たぞ、気をつけて!」


 俺が叫ぶと、カナエとミカがすぐに戦闘態勢に入る。


「私が魔法で牽制するわ。ミカ、ヤマっちのサポートをお願い!」カナエが冷静に指示を出しながら、魔法の準備をする。


「任せて!ぶん殴りに行くから!」ミカがトンファーを握りしめ、前に出た。彼女の目はまっすぐに魔物を捉えていた。


「あっこら!むやみに突っ込むな!」俺が叫んだが、興奮したミカの耳には届かなかったのか、単独で突っ込んでいった。


「ヤマっち、ミカのフォローを!」「分かっている!」


 俺は剣を握り締め、ミカの後を追った。魔物は巨大な狼のような姿をしていた。その鋭い牙が光り、低い唸り声を上げながら近づいてくる。


「行くぞ!」


 ミカはトンファーを握りしめ、カナエは魔法、俺は剣を携え魔物に立ち向かう。



 森の中、巨大な狼に似た魔物が二体、低い唸り声を上げながら迫ってきた。俺たちは戦闘態勢に入り、カナエが前に出た。


「アイスショット!」


 カナエが魔法名を口にするだけで魔法を放った。彼女が最初に作ったこの初級魔法は、シンプルでありながら効果的だった。


「これが最初に作った魔法なの。既存の魔法を特別スキルで作って、自分の魔法にしたのよ」


 カナエが説明しつつ放ったアイスショットは素早く飛び出し、1体の魔物の目を貫いた。


「カナエ!ナイスショットだ!」


 俺は感心しながら声をかけた。


 もう一体の魔物に対して、ミカがトンファーを握りしめて突進した。


「倒れなさい!」


 彼女はそのまま魔物の頭部を強打すると見事に沈黙し、2秒ほどすると崩れ落ちた。


「よし、やった!ミカナイスだ」


 俺は喜びながら叫んだが、カナエの魔法で目を潰されたもう1体の魔物が暴れ始めた。


「このままじゃ危険だ、俺がとどめを刺す!」


 そう言って前に出ようとすると、カナエが手を伸ばして止めた。


「待って、私にやらせて」


 カナエは再びアイスショットを放ち、今度は正確に魔物の頭部を貫くと、ごひゅーっと最後の一息を吐いて倒れた。


「どう?どう?」


 ミカが得意げにこちらを見ていた。


「私のトンファーさばき、見た?」


「うん、すごかったよミカ。見事な一撃だった」


 俺は笑いながらミカに答え、次にカナエにも賛辞を送る。



「カナエも素晴らしいよ。初級魔法だけど、こんなに効果的に使えるなんてさすがだね」


「ありがとう、ヤマっち。でも、まだまだ修行が足りないね。一撃で倒すつもりだったのに」


 カナエは控えめに微笑んだが、その顔には自信が滲んでいた。




 俺たちは再び進む準備を整えなければならないが、ひとまず呼吸を整えるべく、安全地帯の中に入り小休止することにした。


 ・

 ・

 ・


 戦闘後、俺たちは小休止として一息つく時に振り返りを始めた。


「ミカ、単独で突っ込むのは危険だ。何があったんだ?」


「ごめん、ヤマっち。異世界に来てからストレスが溜まってて、恐怖心もなくなってついストレス発散をしてしまったの。でも、反省して次はもっと冷静に動くわ」


「そうだな。次はもっと連携を取ろう。初戦闘で冷静にいられなかっただけだよ。女の子がいきなり魔物と戦闘なんてきつかったろ。俺の方こそ配慮が足らなかった」


 カナエも頷きながら加わった。


「私たちの強みはチームワークだから、次はもっと上手くやれるわ」


「そうだね。これで一歩前進だ。次の魔物が来る前に先へ進もう」


 そして俺とミカの手を握ると、またもや3人で手を重ねて笑うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る