第43話 エライニスの正体
俺は椅子に無理やり座らされ、両脇にはミカとカナエがぴったりとくっついて座っている。左腕をミカ、右腕をカナエがガッチリ掴んでいて、逃げることも暴れることもできない状態だ。
怒りの方が強く、幸せな感触に気が付かないほどだといえば、その怒り具合が分かるだろうか?
無理やり引き剥がすことは可能だが、そうすると怪我をするおそれが高いからやれずにいた。
少しは冷静になろうとするが、この状況で冷静でいろと言われても、それは無理な話だ。
シルフィス様とエライニスが再び土下座をしようとするのを見て、俺は一気に言葉を吐き出した。
「次にこのことで土下座をしたら、俺は二人の元を去る。二度とこの国には足を踏み入れない。」
俺の言葉に彼女たちはハッとして顔を上げ、ようやく土下座をやめて、テーブルの向かいに座った。シルフィス様は緊張した面持ちで、ゆっくりと話し始める。
「エライニスは、私の懐刀として3年前から第二王女の侍女に潜入させていました。その美貌と能力を買われ、第二王女に重宝されるようになりました。彼女には、貞操を失うような命令や、王族を直接手にかける命令以外には従うようにと指示し、逐一報告させていたのです。」
俺はその言葉に眉をひそめた。
「じゃあ、あのとき俺が追放されたのも、全部その第二王女のせいってことか?」
エライニスが涙をこらえながら、震える声で話し始めた。
「第二王女は、精神操作を使って人々を操っていました。あなたのことは、ただ『デブで嫌い』という理由で追放しようと考えていただけだったんです……。私は、精神操作があなたには効いていないことに気づいていましたが、第二王女はそれに気づいていませんでした。」
「……精神操作が効いていない?」
俺はその言葉に驚いた。もちろん、精神操作が存在していることは当初から分かっていたが、第二王女が俺やミカにその操作が効いていないことに気づいていなかったとは、予想外だった。
エライニスは続けた。
「そのことをシルフィス様に報告しようとしていましたが、時期が悪く、結局あなたは追放されてしまいました……。追放された後、私は影の部隊を派遣して、あなたを追跡し、守ろうとしました。街道や町の入口に人を配置し、あなたを見守っていたんです。」
「商人たちか……あいつら、俺を保護するためだったのか?」
エライニスは頷き、俯いたまま続けた。
「はい。彼らは私が手配した影の部隊の一部でした。彼らの若い部下たちは手練れで、あなたに気づかれないように行動していたため、不自然に思えたかもしれません……」
シルフィス様が補足する形で話を続けた。
「すべては私の監督不足です。エライニスは全力であなたを守ろうとしましたが、結果としてあなたに辛い思いをさせてしまいました。本当に申し訳ありません……」
彼女たちの説明を聞きながら、俺の中では様々な感情が渦巻いていた。怒り、困惑、そして少しの安堵――すべてが入り混じって、どう反応すべきか分からなかった。しかし、一つだけ確かなことがあった。それは、彼女たちが俺を本気で守ろうとしていたという事実だ。そのことが理解できた瞬間、胸の中にあった怒りが少しずつ和らいでいくのを感じた。
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