第13話 大好きな彼氏に疑われた私が、大好きな彼氏をもっと好きになるおはなし
私の名前は紺野玲。千玖優君が大好きな高校一年生。
私が優君に再会して、また恋をして、お付き合いする前は四国の徳島に住んでいたの。
でもお父さんの仕事の関係でお引越しすることになって、高校からは誰も知らないこの街へやってきた。
全く知らない土地で全く知らない人ばかりの高校生活は、ほんの少しだけ恐かった。でも全然へっちゃら。
今の私があるのは尊敬する初恋の人のおかげ。恐くても踏み込む勇気を教えてくれた人。
10年以上前に会ったっきり一度も会えない。どこに住んでるかもわからない。名前しか知らないあの男の子。
もう二度と会えないんだろうなと心のどこかで諦めているけれど、でも…もし会えたなら…あなたが私を誇ってくれるようにがんばってきました、と胸を張って再会したい。
そんな私に奇跡が起こった。
高校の入学式の日にハンカチを落としてしまい、それに気づかないまま歩いていたら後ろから声を掛けられたの。
振り向くとパッと見、気弱そうな男の子なのにハッキリとした声でハンカチ落としましたよ、と言って私に手渡してくれた。
胸元に私と同じコサージュを付けているのを見て、同じ新入生だと分かる。
「ありがとう。私は今年入学する一年、紺野玲です。よろしくね」
「どういたしまして。僕も今年入学する一年、千玖優です。よろしく紺野さん」
ピシャーーーーーーーン!!!!! と私の中で衝撃が走った!
千 玖 優 君
あの男の子がいた! 私の初恋で尊敬する千玖優君が、目の前にいた!
私は胸がドキドキする内心の動揺を悟られないように、当たり障りのない話題を話しながら、千玖君と一緒に入学式の会場である体育館へ向かった。
千玖君とはクラスは違ったが、私はことあるごとに千玖君に話かける機会を作ろうとしたんだけど…あぁやっぱり、千玖君はあの時の男の子で間違いなかったと思わせることばかりだった。
本人には自覚がないんだろうけど、何か手伝えそうな事があると磁石で引き寄せられるように手伝っていたり、困ってそうなら声をかけて、手に負えないなら先生に相談しようと解決の方向性を示してくれる。
同じクラスの女の子で今は友達になった、音蔵ユイちゃんが問題に巻き込まれた時も優君は解決のために奔走し、イツキ君とユイちゃん二人のために力を尽くしていた。ちょっとズルいところもあったけど。
優君自身は不思議と縁だけは多くてなんて言ってたが、縁は向こうからやってくることは少ないの。優君が縁を紡いでいることを本人が分かってない、無自覚系主人公ムーブを自然にやっている。
でも根っこのところの相手に寄り添うこと。困っているなら優しく、迷っている相手にはハッキリと、他人の問題ごとに介入する時の千玖君は、私の思い出の中の優君そのままだった。
ただ嫌われることも視野に入れて動くところは、ちょっとカッコよくて、でもちょっと悲しかったけど。
再会してひと月経つ頃にはもう、私は優君にメロメロになってしまった。(初めからメロメロでしたが何か?)
二度と会えないと一度は諦めていた。
初恋を素敵な思い出として、前を向こうと振り切ろうとした。
どれだけ願いやまなかったこの再会のチャンスを、神様がくれた…。
初恋は
お父さんが言っていた。何事も速さが足りないと、事を成すことはできないと。
その教えに従い私はすぐに告白し見事、優君をゲットしたのだ!
それからの優君との交際は、私にとって至福の時間だった。フェンリースちゃんの旦那様とのラブラブ・ラブソングが、表現が乱暴だけど私にぶっ刺さり過ぎてしまうほどに。
でも優君に、私は小さい頃に会った玲ですとは言えなかった。私の名前を聞いても思い出す事がなく、地味だった私を忘れられても10年以上前なら仕方ないかなって…。
私も名前を聞いて初めて、優君があの優君なんだと分かったくらいだしね。
それに、私はあなたに救われて、あなたが私を誇ってくれるように今までがんばってきましたって伝えたら、優君に重い女って思われて嫌われちゃうと
優君はそんなふうに思わないだろうし、思い出してくれたならたくさんお礼を言うつもりだけど、私が知っていれば覚えていればそれで良いんじゃないかって。
だから優君が思い出してくれるなら嬉しいし、思い出さなくても私が優君を大好きなのは変わらないから全く持って問題なし!
ここまで読んでくれた人から見たら私は、なんてちょろインだろうと思うかもしれない。
高校で初めて優君に出会ってたとしても、優君を好きになってたと思うからあながち間違いではないのだけれど。私の初恋で、尊敬する人だったらなおのこと好きになっちゃうと思うんだけど…私だけなのかな。
じゃあどんな出会いだったのか。今の私の原点であり私を変えてくれた人との10年前の出来事…。
つづく
肉食系の女の子って魅力的ですね。玲ちゃんはライオン、優君はウサギがモチーフだったりなかったり
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