第12話 大好きな彼女に浮気されたかもしれない僕が、大好きな再構築系NTR小説に救われた話

 放課後になり、僕と玲ちゃんは学校近くにある公園に来ていた。

 

 砂場や石で出来たゾウさんの滑り台、鉄棒そしてベンチがあったりと規模は小さくとも立派な公園で、知ってる人にとっては重宝されている穴場だったりする。

 

 二人でベンチに座り、玲ちゃんは一冊のアルバムを渡してくれた。


 開いてと促されたので、ゆっくりとアルバムをめくり始める。そこには中学時代の玲ちゃん(写真の下に玲13歳と書かれていた)の写真があった。

 ページをめくると14歳、15歳、と玲ちゃんの中学時代の姿がそこにあった。


 (正直このアルバム欲しい! …違うそうじゃない)


 そこに写ってる玲ちゃんと一緒にいる男の人! この人だ! 男から見てもかっこいいなと思うこの人は、玲ちゃんと二人でピースしたり、玲ちゃんのご両親と一緒だったり、別のご夫婦? と玲ちゃんのご家族と6人で写っていた。並んで見ると似てる。


 玲ちゃんの母方のいとこでたちばな 令平 りょうへいさん。


 僕たちより4つ上で20歳の大学生。小さいころからよく遊んでもらってたらしく、今でも会えば構ってくれるし相談にも乗ってくれるので頼りにしているそうだ。


 あの日も、ホテルレストランで食事するために親族一同で都心に出たところ早く着き過ぎてしまい、それならと玲ちゃんがどうしても行きたいお店があると言ったら、高校生とは言え一人で行かせるのは心配だからと、令平さんが一緒について来てくれた。


 僕が目撃したのは、その行きか帰りのどちらかじゃないかと言うことだった。


 覚えてる限りだと確か歓楽街方面、ホテルとかあったほうに向かったのを見たから帰りだと思う。男性(令平さん)が手荷物を持ってたような記憶が朧気ながらある。


「私もまさか都心まで行って、優君に会えると思ってなかったの。令平にぃと二人で行動するとも思ってなかったから、優君に事前に言うことも出来なくて…」


「それは無理だよ。僕も玲ちゃんに都心に行くなんて言ってないし、それに全く知らない男性とならともかく、玲ちゃんが信頼するいとこのお兄さんと、一緒に行動することまで嫉妬するとか無いから…束縛強すぎるDV彼氏だよそれ…」


「でも屋上での相談の時に、何で二人で行動してたのかを話さなかったでしょ? それは私の完全な落ち度なの。優君に対する信頼と言えば聞こえは良いけど、秘密にしても大丈夫だっていう甘さだったのよね。

 …後はサプライズなんて茶目っ気一つで、一番大切なものを失くすところだったんだから油断大敵ね」


 玲ちゃんはそう言って、鞄から赤いリボンのついた紙袋を取り出した。


「ほんとは優君の誕生日に渡そうと思ってたんだけど…。これがあの日に行きたかったお店の正体? になるのかな。ちょっとだけ早いけどハッピーバースデー優君、お誕生日おめでとう!」


 輝くような笑顔で玲ちゃんは、その紙袋をプレゼントしてくれた。


「あ、ありがとう! 開けてみても良いかな?」


「どうぞ。気に入ってくれたら嬉しいな~」

 

 僕は丁寧にその袋を開けて中身を取り出した。それはシックな色合いの革製のブックカバーだった。どう見ても手作りでカバーの縫い目が真っ直ぐでなく、チグハグだけれど丁寧に作られているのがわかる。


「優君は読書が大好きだから、紙のブックカバーより革のカバーの方が長く使えて便利かと思って。使い込んでいくうちに色にも味が出るっていうしね。

 気に入ったのが見つからなくてそれなら自作しちゃおうって。都心の革屋さんに行きたくて、あの日は私に都合が良かったんだぁ。

 一人でがんばろうと思ったんだけど、ちょっと難しくて。お父さんにアドバイスもらったり、少し手伝ってもらったりしたんだけど…優君?」


 ……………。


 僕は嬉しくて、本当に嬉しくて、胸がいっぱいになるってこういうことなんだって…。嬉しくても涙は出るんだって。


 僕は幸せで、本当に幸せ者で、玲ちゃんが好きで大好きで、大切で………気持ちが溢れ出して…止まらなくて…。


 ちまたで溢れているよく聞く言葉…大人になれば分かるのかなぁなんて思ってたあの言葉の想い…

 


 愛しい、いとおしい



 あぁ、この気持ちが…

 


 「愛してます。僕は、紺野 玲さんを愛してます」



 そして、玲ちゃんを抱きしめた。優しく、抱きしめた。


 彼女は静かに抱きしめ返してくれて、



 「はい。私も、千玖 優君を愛してます。」


 

 この時に初めて、人を好きなる、大好きになる、そしてを知った。


 そして僕と玲ちゃんの、二人の想いが通じ合ったと感じた。



 これが僕に起きた…僕が起こした、が正しいのかな?事件の一部始終です。


 全て読んでくれた人ならわかるだろうけど、僕が勝手に空回りしただけで反省どころじゃなく猛省しなければ。

 

 でも大好きな玲ちゃんを泣かせたり友人に迷惑をかけたりと、どうしようもない僕だけど、NTR小説(再構築系)が僕を助けてくれたのは間違いなくて、その作者様方には感謝してもしきれない。

 

そんな、


 大好きな彼女に浮気されたかもしれない僕が、大好きな再構築系NTR小説に




おしまい






もうちょっとだけ続く


この後は玲ちゃんの視点と、何で玲ちゃんがこんなに優君を溺愛してるのか?


玲ちゃんの印象がかなり変わるかもしれませんが、お付き合いして頂ければ幸いです


玲ちゃんの内心はどんなだったのかな?

と思ってくださいましたら、


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