第11話 揺らぐことのない愛情
私も優君にちゃんと謝らないとね、と僕から少し離れ正座をした。
「優君に疑われるようなことをしてごめんなさい。事前にしっかりと説明すべきだったし、相談してくれた時に全てを話さなかったことも、ごめんなさい」
頭を下げようとする玲ちゃんの両腕を、僕は慌てて掴んで止めた。
「待って待って! 玲ちゃんが謝る事なんて何もないでしょ。僕が勝手に誤解して疑心暗鬼になって被害妄想まで…自分で言っててへこんでくる…とにかく玲ちゃんは悪くないから!」
「でもきっかけは私なんだよ? もっと早く気付いてちゃんと行動してれば、優君に誤解させて不安にさせることも無かったのに…」
「そんなことないから」
「あるの」
「ないって」
「あるもん」
「あ、もんってかわいい」
・・・
・・
・
なんという頑固さ…あぶら汚れに~JOYもビックリだ。
「分かったわかりました!僕も玲ちゃんも両方悪かった…これでいい?」
「うん」
「…玲ちゃん、僕を許して下さい」
「はい許します。…優君、私を許してください」
「許します。」
ハァ~っと息を吐き僕は力が抜けて、そのまま倒れこむように玲ちゃんを抱きしめた。玲ちゃんは受け止めて抱きしめ返してくれた。
玲ちゃんはクスッと笑うと
「もう、なにしてるのかしら私たち。交際の挨拶をしに来てくれたと思ったら、その日のうちに別れ話をされるって滅多にないと思うなぁ」
「ごめん。でもほんとに怖くて聞けなくて、玲ちゃんに捨てられたらどうしようと思って、頭の中がゴチャゴチャで迷走しました…」
「優君を捨てたりしません! でも、そうだよね。私が知らない男性と歩いてたら疑うのも、自分が逆の立場なら分かっちゃうし」
「だからこそ僕は勇気をもって再度、玲ちゃんに聞くべきだったんだ。大好きな人であっても大切な人であっても嫌われる勇気が…」
「あったよ。優君は今も昔もとびっきりの勇気が」
「え~そうかなぁ。…なかったからこんなことになったんだけど」
「確かに相談の後、すぐに聞いてくれれば問題は何もなかったかもしれない。でも優君は嫌われるかもしれないのに、とても怖かったはずなのに、勇気を出してくれた」
「………」
「私は優君が好き。大好き。優君を嫌いになったりなんかしない。浮気なんて、絶対にしない。でも優君が私を好きじゃなくなったら、再度振り向かせる…グス…ど…りょ…くを…する…けれ…ど…ふぇぇぇぇん…」
「ごめんごめんごめん泣かないで泣かないで玲ちゃんを嫌いになんてならないし好きだし! 大好きだし! あ~あ~泣かないで~」
「ごわかっだぁ…ゆーぐんが…わがれるっていっでごわがったぁ~~~」
「あ~よしよしもう大丈夫だから恐い事なんて何もないから大丈夫だから」
「!!! …あぁぁ…ゆーぐん…ゆーくん…」
・・・
・・
・
二人とも目が真っ赤になってしまった。確かに何してんだろね僕たち。
ようやく落ち着いた玲ちゃんに、腫れてしまった顔を見られるのが恥ずかしいから、今日は帰ってもらっていい? …明日全ての誤解を解くので時間をください、と言われ素直に頷いた。
泣き顔も可愛いかったし甘えられた? とは違うけど玲ちゃんをなだめるのは癖になりそうだ。イケナイ扉を開きそうになってしまう。
翌日、朝のHR前に僕はイツキに昨日のことを大雑把に話した。
イツキは、紺野さんにバラしたのは自分だからユイは責めないでくれ、と真剣に謝ってきて僕の方こそ、面倒事に巻き込んで隠しごとを作らせたりして、本当にゴメンと謝った。
二人して吹き出してしまった。
全部分かったらイツキと音蔵さんにも話すよと言ったら、じゃあ四人でダブルデートしようぜ、カラオケでも遠出しても良いしなと笑っていた。この親友とその彼女にも頭が上がらないな。
「そういえばイツキが僕に借りを作ったって何かあったっけ?思いつかないんだけど…」
「マ・ジ・か? そういうとこあるよな優って…まぁ勝手に恩義を感じてるってだけだから気にすんなw」
「気になるんだよなぁ…」
「何が? またHなことなのかな? 優君ったらぁ…」
「違っ! だから玲ちゃんの下着の色じゃなく…て…」
あ、これデジャブ…。
不意打ち気味に言われたことに反応して見ると…まぶしいくらい素敵な笑顔の玲ちゃんだった…。
「oh...no」
「優…やっぱりアホだお前はw」
本当に返す言葉もありません。
「優君は、どうしようもないくらい私の下着に興味があるの? Hなのはいけないと思うけど…優君だけになら特別に…」
そう言ってほほを染める玲ちゃんは世界一可愛いかった。
つづく
さぁやっとこさ此処まで来れた。あとは誰もが想像できるネタバラシをして…
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