第16話 甘えは一人ですること、信頼は二人ですること
その後のことはみんなの知ってのとおり。
大好きな優君と再会して告白してお付き合いして、学生結婚の上で子供は二人? もっとかな? …予定ね予定! 嘘じゃ…ないよ? 半分冗談だけど。
でも本音のところは、優君と再会できるとは夢にも思わなかったの。諦めたらそこで試合終了よって分かってはいても、現実的にはもう無理だって諦めかけていたから。
だからこの街で優君と再び出会えて、お付き合いできるなんて奇跡としか言いようがないの。
しかも優君は私が覚えている優しかったあの頃のままなのに、もっと素敵な男の子になっていた。緊張しぃの気弱そうなとこも変わってなくてそこがまた可愛くて。
毎日優君と会えるのが嬉しくて楽しくて、なんでもしてあげたくなって。お弁当だって本当なら毎日作ったあげたいのに遠慮するんだから…そんな優君も大好きで。
そんな世界で一番幸せな私に、恋に盲目だった私に神様が罰を与えてくれた…。
優君の誕生日が近い事を知った私は、読書が好きなことを聞いていたのでブックカバーをプレゼントしようと思ったの。
でもあまりピンときたものがなくて、こうなったら自分で作っちゃうんだからとカバー用の革を探していた。
そんなある日、親戚の叔父さん達が遊びに来てみんなで食事に行こうと都心に出かけることになった。それが最大の過ちになるなんて想像する事もできなかった。
正確には、都心で行きたかった革のお店でお目当ての買い物ができたのに、心配して一緒についてきてくれたいとこの令にぃと一緒のところを、まさか優君に見られるなんて…。
でもそのことについて優君は誤解せず相談してくれたので、その誤解を一時的に解くことができた。
私の説明は一から十まで全部と言うわけではなくて、優君にサプライズでプレゼントしたいという欲望を優先させて秘密を作るという大雑把なもので終えてしまったのだけれど。
優君も私を信じてくれてスッキリとした顔で納得してくれたから、秘密にしても大丈夫だって思ってしまい…。
この選択が私にとって一番大切なものを手放すことになり兼ねなかったなんて、今思い出しても恐怖で震えそうになる。戻れるならこの時の私に正拳突きをお見舞いしたい。
そんなバカな私は自分の重大なミスに気づくこともなかった。優君の誤解が解けてウキウキと気分良く、さぁ優君の誕生日プレゼントのブックカバーを作らなくっちゃ! なんて呑気に思ってた。
その翌週から優君の私に対する態度はぎこちなくなっていった。
初めの方はまた読書しすぎて寝不足かな? もう優君はしょうがないなぁと、優君のお世話! 優君のお世話! って喜んでいたけど、数日続くと流石におかしいと思い始めた。
さらに部活動に興味のない優君が、私が所属している部活の道場に顔を出してくれたので、カッコいいところを見てもらおうと張り切ったりしちゃったけど、やっぱりおかしいなって…。
そんなある日、部活から帰ろうとしたら校門の近くで親友になったユイちゃん(*パイポテは負けてないと思うんだけど)とイツキ君が待っていた。
優君が私の浮気を疑ってる。一緒にいた彼氏のイツキ君が俺が責任取るから知っててくれって。イツキだけじゃなくて私も責任とるから、玲ちゃんは優君とすれ違いなんかしないで話し合ってって。
冷水を浴びせられるとはこのことかと…、私はなんて大馬鹿者なんだろうと…。
心の底から二人に感謝してお礼を言った。もし二人からの優しい密告がなければ本当に全てを失っていたかもしれない。
すぐに優君に会って誤解を解かなきゃ。でも優君の家が分からないし、呼び出すなんてさせられない。メール? LINE? でだとさらに誤解を招きそうで…焦る頭の中がグルグル回る…。ダメ、速さは大事。でも急いては事を仕損ずる 。釈明の計画を練って、明日のお昼にしっかりと誤解を解かなくっちゃって。
翌日のお昼、すぐに誤解を解こうと思ったけど、優君の方から私の両親に挨拶したいから家に行きたいと言われて、頭の中がてんやわんやのお祭り騒ぎで、もちろん快諾したけど。その時に全部ちゃんと話そうと。
どさくさに紛れて優君の家へ訪問する約束を取れた時に、こぶしをグッと強く握りしめたのは内緒だ。
そして優君が訪問してくれる日、私は誤解を解くために令にぃが載ってるアルバムに誕生日プレゼント、そして貧血の予防・改善効果のあるネトルティーも用意した。
優君は一般的な高校生よりも体力が少ない方だと思う。なので優君のお弁当も少しづつ体質改善を目的とした食事療法の献立だったりする。
ネトルの花言葉の勇気で、後押しして欲しかったのもある。後ろめたいものは何も無いのに? 優君から勇気を与えてもらったのに? と思うだろうけど、優君本人に対してだけは私の勇気も弱腰になってしまう。優君は私限定で無敵なのだ。
お父さんとお母さんにも今日のことは伝えてある。優君が昔の事を覚えていないことも。だから無理に思い出させるようなことは言わないで欲しいって。お礼くらいはいいだろ? って言うから、直接的じゃなければいいよと。
準備万端。あとは今か今かと優君を待っていたら、いつの間にか優君が玄関にいて百面相してる!? 何で? どうして? ホントに優君はもう…。
私があんなに誤解を解くんだって意気込んでいたのに…そんなこと頭から抜けちゃった。
大好きな優君が呼び鈴を押すまで、私は笑いながら幸せな気持ちで待ち続けた。
つづく
彼女が彼氏を上手く扱っていそうに見えて、実はその逆だったかと思ったら、メビウスの輪のようにより良い関係に変化し続けるってすてきだなって…
でも優君も大概だけど玲ちゃんも負けず劣らず…
*パイポテ=オッパイポテンシャル
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