第2話 思わせぶりな彼女?
解決の糸口を見つけた僕は、少しだけ気分が楽になって自分の教室へと向かった。
僕のクラスは1-Aで、玲ちゃんは1-Bでクラスが違う。
住んでる場所も真逆の方向なので、登下校を一緒に出来ないのが少し寂しい。
その代わり、お昼は用事があるとき以外は、必ず一緒に食べている。
教室に入り窓側一番後ろ特等席、自分の席に座ると前の席に座る中学からの友人であるイツキが挨拶してきた。
「優、おはよっす…なんか元気なくね?」
「イツキおはよう。そんなことないよ、ちょっと疲れてるだけ」
「愛しの彼女とついにか? それとも妄想がはかどったかw」
「違うよ。昨日都心まで出かけたから人酔いしちゃって」
「インドア派にはきついわな。彼女見習って体力つけとけ」
「善処する」「あ、これしないわw」
いつもの軽口をイツキとしていると、
「優君、イツキ君、おはよう! 優君、昨日はデート行けなくてごめんね…どうしても断れない用事が出来ちゃって。償い代わりじゃないけど、今度休みの合う日はデートしようね!」
笑顔が眩しい…天使かな? いや、玲ちゃんだった!
「おはよう玲ちゃん、全然気にしないで。用事を済ませられたんなら良かったよ」
「紺野さんおはよっす。優、ちょっと疲れ気味だから元気にしてやって」
「優君元気ないの? 朝ごはんちゃんと食べた? 目に隈も無いし、また夜更かしして睡眠不足? じゃないよね?」
「違う違う、大したことじゃないけどちょっとあって。HR始まっちゃうから、お昼に話すね」
「うん…それじゃあお昼にね」
そう言って、自分の教室に戻って行こうとした玲ちゃんは速足で戻って来た。
どうしたんだろうと思っていたら、玲ちゃんは僕にグッと近づき小声で、
「少しだけ、元気のおすそ分け」
と僕のほほにキスをして、真っ赤になって出て行った。
イツキは、ヒューっと口笛を吹いて
「紺野さんやるなぁ。サラッとやってくとは…w」
僕は赤くなってしまい、何も答えられなかった………元気は出た。
4限の授業を終えて、ようやくお昼どき。
毎日接戦の購買から、無事お目当てのクリームパンとハムカツサンドイッチを入手。それとラスクと飲み物二つを買い、お昼を待ってくれている玲ちゃんのもとへ。
屋上のドアの前で深呼吸をし…よし! っと気合を入れてドアを開いた。
見事な快晴。
高い金網に囲まれてはいるが、晴れた日の屋上から眺める街の景色は、一見の価値があると個人的に思ってる。
玲ちゃんは備え付けられた長椅子に座って、ほのかに微笑みながら遠くを見ていた。
絵になるなぁ…そう思いながらゆっくり近づき
「お待たせ玲ちゃん、ストレートティーでよかったよね?」
そう言って袋から飲み物を取り出した。
「ありがとう優君。今日はお弁当の日じゃないのに」
「週に三回も作って貰って、材料費だってバカにならないんだから。これくらいのお返しはさせてよ」
「うん…わかった。では遠慮なく頂きます!」
そう言って、少し汗をかいた紙パックを受け取ってくれた。
玲ちゃんは毎日自分でお弁当を作っていて「一つ作るのも二つ作るのもそんなに手間ではないから」と僕の分まで作ってくれると言ってくれた。
流石に毎日は心苦しく週三回…無理なく出来る範囲でお願いしますとなった。
中身は「ほとんどお母さんが作ってくれた前日の夕飯の残りを入れて、朝調理をするのは少なめなので大層なお弁当じゃないよ」と謙遜するが、バランスよく作られているお弁当を頂く度に感謝の念は堪えない。
なのでお昼の飲み物とおやつくらいは、お返し代わりにしてるけど…ちょっとした何かをしたいなと思う今日この頃である。
つづく
あれ…個人的に優君にヘイトが…神(作者)の思惑ひとつで絶望に落とせることを忘れてはいけない
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