第3話 事実は小説より奇なり…なんてことはそうそうない

 穏やかな風を受けながら玲ちゃんとお昼を食べた後、おやつをつまみながら


 正直少々の不安もあるが、楽観的な方に気分は傾いている(元気が注入されたから)ので率直に聞いて見た。


「玲ちゃん、昨日は都心の方に行かなかった?」


「ん? そうだよ。親戚の叔父さん達がこっちに遊びに来てて、それで都心の方でお食事しようって…優君もお出かけしてたんだ! 見かけたなら声をかけてくれればよかったのに」

 

 はにかみながら、そう答えてくれた。


 ハイ! 確認終了! 


 やはり玲ちゃんにNTR浮気疑惑なんて起こりうるはずがありません! 事実は小説よりも奇なりどころか奇なんてそうそう…


「都心の大きい本屋で買い物してて、玲ちゃんに似た人を見かけたから。もしかしてと思ってさ。追いかけたんだけど見つからなくて。大人数で出かけたんなら、移動だけでも大変そうだね」


 …二人で一緒に歩いていた男性は誰って、!!!


 いや、男は度胸だ…愛嬌だっけ?


「そうでもなかったよ。車二台で出かけたし。そっかぁ、私の優君センサーもまだまだね。精進しなきゃ」


「なにそのセンサー、限定的すぎるよ。そういえば…玲ちゃんとって、いとこ…とか?」


 よし! 僕がんばった!


「あっ…うん、いとこのお兄さん。それじゃあ二人で歩いてたところを見かけたんだ………! ふ~~ん…」


 あ、


「そっかぁ~優君はその男の人を見て私が疑って、朝は元気が無かったのかぁ~。それならすぐに電話なりなんなり、連絡してくれれば良かったのに。慌てん坊さんなんだから。でもショックだなぁ~愛しの優君に疑われるなんて~」


「ごめん! とっさのことで頭が混乱してて絶対にそんなことないと思ったけど滅茶苦茶カッコいい男性と歩いててそれで…」


「もう…わかりました! そんなにしょぼくれた顔しないで。嫉妬してくれたのは素直に嬉しいし、ちゃんと相談してくれたから…今回は許しましょう」 


「ほんと!」


「はい。もう…優君は小説の読み過ぎです。これは、もっともっと愛情表現を増やす方向にしないといけませんね」

 

 そう言って笑う玲ちゃんは、やっぱり可愛かった。



 

 

 今日は玲ちゃんの部活動もお休みなので、放課後プチデートをしようと言うこととなり二人でカラオケに行った。

 昨日からのもやもやした気分も完全にスッキリとし、話し合うことって大切だなと改めて感じた。ちなみに二人とも歌はあんまり上手くなかったりする。


 その後、玲ちゃんは僕と一緒に夕食を食べますと自宅に連絡してから、学生御用達の年季がかった赤い暖簾の店構えで食事をして解散となった。

 小ラーメンを食べるために、髪を後ろに束ねた玲ちゃんに見惚れたのは内緒だ。








 …ちょっと油断してたかなぁ。

都心まで出て優君に出くわすって相当確率低いと思ってたけど。


 こういうところで綻びが生じるのね…気を付けないと。

心配かけちゃってごめんね優君。…ふふっ…でも優君だけには秘密にしないとね…。



つづく



コミュニケーションは一番大事…でも

何で二人でとか、もっと突っ込み入れて追及しないのは、

誰しもが持つ正常性バイアス

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