第6話 なんちゃって捜査官 優
あれよあれよと一週間。捜査は自分の足で稼ぐと昔の人は言っていた? とおり、玲ちゃんの情報はかなりの量を集められた。
玲ちゃん本人が活動的であり、人当たりも良くクラス委員長も務めているので、情報を集めやすい人物だったことが大きいと思う。
詳細はこちら―――――
クラスの縁の下の力持ち。リーダーを務めているが引っ張るタイプではなく、皆の意見を纏めて実行しやすいように立ち回るのが好きなようだ…。
確かにデートの時は、玲ちゃんが行きたいところを提案してくることは少なく、僕が提案したことに付加するような形が多い気がする。
先生からの評判も良く、優等生ではあるが冗談も通じるので、男女ともに敵を作りにくく頼りにされていると。
部活動は空手部…なんだけど大会を目指すとかではなくこれも多様性なのか。フィットネスクラブのように適度に体を鍛えて、スタイルアップ主体の部活動らしい。
礼儀作法や道徳教育も重視し、健やかな心と体の成長を目指す…玲ちゃんにピッタリだ。
玲ちゃんの部活動の日、直に様子を見に行ってみることにした。
体育館内にある小さめな武道場で20人くらいの女子生徒たちが、学校指定とは違うお揃いのジャージ姿で、格グループごとに練習していた。
「あれ優君? 珍しいね武道場に来るなんて。初めてじゃないかな。優君も部活動に興味を持ったの?」
僕に気づいた玲ちゃんが、一緒に柔軟をしていた娘に断りをいれて、入口の方に来てくれた。
「うんちょっとね。なんとなく玲ちゃんの部活動って、どんなことやるのかなって。お邪魔じゃなければ、見ててもいいのかな?」
「大丈夫だよ。優君もやってみる? そんなに小難しい事とかはないし、初心者向けな部活だから、すぐ参加できるよ?」
「今日は、やめとこうかな。参考に見回ってるだけだし、玲ちゃん頑張ってるかなって」
「そっか………分かった。一緒にやりたくなったら、いつでも言ってね」
そう言って戻って行った。
見学することを許されたので、部活動の邪魔にならないように入り口付近でちょこんと正座をして見学。
普段はストレートの黒髪をポニーテールにしていたので、ついついじっと見つめてしまった。
~ん可愛い!
前に一緒に中華屋さんで食事した時も可愛かったが、僕は髪を後ろに束ねた玲ちゃんに弱いのだろうか…。
どんな玲ちゃんにも弱かった。
視線に気づいたのか僕に向かって微笑みながら、顔の下で手を振るのがまた可愛い!
物珍しさと興味深そうな目で女子部員たちから見られてたけど、結局部活が終わるまで見学し玲ちゃんと少しだけ一緒に下校した。
その時に男性の部員は一人もおらず全員女性だったので、何故かと聞いてみた。
玲ちゃん曰く、
数年前は男女同じ部員として部活動をしていた。けれど男子部員が女子部員を邪まな目で見る事が多く、嫌がった女子部員が声を上げ男子は完全に別の男子空手部として異動させたんだそうだ。
女子空手部に名称変更をしなかったのは、入部する時はソフト空手の女性のみとして説明してるし(例外もあるらしいけど)、女子~とすると色々問題があるらしく僕には難しい複雑な世の中である。
なので部活で玲ちゃんに近い男子の気配は皆無で安心した。顧問の先生も女性なので薄い本のような展開には早々ならないのである。
ちなみに男の僕が今日見学できたのはなんで? と聞いたら
「優君は私の彼氏で、他の子に色目を使ったり不快にさせるようなことはしないと、部員の皆に常日頃から伝えてあるので問題なかったのです」
フンスッ! フンスッ! とドヤ顔で言っていた。
…厚い信頼は嬉しいんだけど、出来れば見学前に言って欲しかったなぁ。
自分の
玲ちゃんをずっと見ていたので、他の女性陣に対して失礼な態度はとってなかった…よね。不安だけど。
休日・祝日以外、部活は毎日やっているが個人の判断で出る出ないは決められるので、ほんとに緩い部活でこれも多様性なのかなと少し不思議に思う。
そのおかげか玲ちゃんも隔日で出たり僕と時間が合えば休んだりと、融通が利くのが一番良いと言っていた。
部活と言えばそう―――――
部活に力を入れすぎた真面目な主人公。
ちょっとしたことでのすれ違いや会えないことから、彼女が不安や寂しさを感じる様になり、あれよあれよとさらに会う時間が減ってしまう。
そしてとうとう…クリスマス。
主人公は彼女と自分の親友との浮気現場を目撃…ふろきち先生の『あの時の僕と』、名作だったなぁ…。
しっかりと相手を捕まえ続けることの大切さを教えてくれた…人の心は移ろいゆくもの…。
僕と玲ちゃんの立ち位置、逆だけど…。
これじゃあ僕が浮気してるじゃん! 僕が不安になって寂しくなって浮気しちゃってるじゃん! ダメじゃんクズじゃん! しないけどね! 絶対に! フリじゃないから!
それに玲ちゃんの親友と呼べる友人は音蔵さんがいるけれど100%有り得ないと断言できるので、親友(音蔵さん)に寝取られる(僕が)こともないQ.E.D.以上‥‥証明終了です。
つづく
なんて穴だけのQ.E.D.…驚きですよ優君…
男の子は好きな女の子の一挙手一投足にやられてしまうのです。ポニテや髪型変わるだけで乙女力上がるのズルい
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