悩みぬいた末にたどり着いた答えは? その3

  優君、私この四つ全て叶えて欲しい!


 ランランと目を輝かせて愛しの彼女にそう言われたら、ハイ喜んで! 以外に選択肢ってあるの? ありません。僕の考えた提案はみごと玲ちゃんのお眼鏡に叶ったようだ。

 当初は無難に日帰り旅行と、自分たちで作れるぺアリングの二つにしようと思ってたんだけど、やっぱり玲ちゃんがして欲しいという願いを、自分の心が脆弱なのでいたしかねますなんて…だせえこと言うやついねぇよなぁ! 


 この欲張りさんめ! と思うかもしれないが、三と四の提案は二つとも実行するつもりで予算も組んでたし、一と二は僕が真摯に取り組めばいいことであって何の問題もない。…ないよね。



 と言うわけで来ました江の島! 天気も快晴! 電車でおおよそ1時間ちょいと今回は湘南モノレールを使ってみた。最高…一度は皆に乗って欲しい。あの高さで時速75㎞はまさに飛んでるかのよう…先頭車両の最前列に乗ることもできて、僕も玲ちゃんもキャッキャとはしゃいでしまった。


 朝早くから出発してまだ9時すぎだと言うのにもう観光客が…僕達もだけどね。朝ごはんもしっかりと食べてきたので、僕も玲ちゃんも今日は歩き回るぞ!とハリキッている。

 それに玲ちゃんとお付き合いをしだしてからウォーキングを始め体力もついてきたし、途中でへばることもないと思う。


 学校のジャージとは別のジャージで朝晩トコトコと歩いているけど誰かに気づかれたこともない。影薄くね? って言わないで。鍛えるは言い過ぎだけどチョットやってみたいことのためにウォーキングと筋力トレーニングも続けている。


 湘南江の島駅を出てから真っ直ぐ進むと、遠目からでもわかる江の島シーキャンドルと呼ばれる展望台が見えた。大きい建物って何故か興奮するものがある。

 テレビの映像なんかでは短そうに思えるけど実際に歩くとかなり長い、江の島大橋を渡り無事到着。


 そのまま江の島弁財天仲見世通りを散策しながら進んでいく。朝食を取ったのにあちらこちらといい匂いが漂ってきて、ふたりで軽く食べ歩き。女夫めおと饅頭、貝最中もなか、丸焼きたこせんべい…食べてばっかりかも。

 でもふたりで半分こしたから思ったほどお腹にたまるものでもなかったかな。


 江の島シーキャンドルセット券という江の島エスカー(エスカレーター)と展望台入場チケットが一緒になってるものを購入。一区から三区まである長いエスカレーター(一区の区間は幻想的なディスプレイが綺麗だった)に乗り、お目当ての展望台へ。

 

 思ってたよりも高かった。僕も玲ちゃんも思わず手を繋いでしまうくらいに。あと風つよっ! 眺めも最高で富士山も見えた。これ夜景も綺麗かもしれない。今度は泊りがけで江の島に来るのもいいねと玲ちゃんが笑っていた。

 

 いけない、江の島観光大使になったわけでもないのについ観光スポットの感想が…。カップルじゃなくても、訪れて欲しい一押しの場所です。


 江の島神社での縁結びでより一層結びつきを固くし、龍宮わだつみのみやで子孫繁栄、龍恋の鐘をあきらちゃんといっしょに鳴らし、鐘の奥にある金網にふたりの名前を書いた絵馬を付けるまでがハッピーセット。


 他にも色々散策したけどとても半日で回り切るには時間が足りなくて、また来ようと玲ちゃんと約束した。



 そして続けざまの本命、午後から鎌倉でペアリングづくり! シルバーでお手頃価格なのもありここはふたり分を、僕が玲ちゃんへの贈り物として出させてもらった。

 ほんとは僕が二つ作って玲ちゃんに片方渡そうと思ってたけど、一緒に作って交換しようって…ふぅ…玲ちゃんは僕に効きすぎる…好き。

 

「優君のプレゼント用のカバーを作ったときとは全然違うけど、物づくりって楽しいよね」


「目覚めちゃった? 玲ちゃん」


「うん! 私は手先があまり器用じゃないからお裁縫とか苦手意識を持っちゃってて」


「あんなに料理上手なのに?」「この前のカレーはそこまで手の込んだものじゃないよ」


「とっても美味しかったからまた食べたいです」


「…それは?」「……………」


 さ、さすが…瞬く間にカウンターを喰らった…お顔が真っ赤なので痛み分けとしよう。

 

 そんなふうにイチャイチャしながらも指輪はひと通り完成。スタッフさんが最後に全体を整えてくれてそのまま持ち帰ることができた。お店を出てすぐに交換するのかと思ったら、指輪はもう少し持ってて欲しいとその場ではしなかった。




 そして運命の日が訪れた。


 月曜日が祝日で土日月と3連休。玲ちゃんからお父さんとお母さんが二人で二泊三日の旅行に出かけるそうで、自分一人だと心細いので泊まりにきて欲しいと。

 玲ちゃんのご両親からの了解は得ているから大丈夫だと。


 僕が大丈夫じゃないので電話を替わってもらい確認を取ったら、玲ママさんからは玲のことよろしくねと…。玲パパさんからは優君が娘婿か…いいね…と。


 篤い…ご両親からの信頼が篤すぎる…しかも斜め上の方向に…。好まれているのはとても嬉しく恐縮なんだけど、なぜあんなに好かれてるのかが分からない…。 

 信頼されているのか後押しされているのか、…試されているんだろうか。


 ともかく、退路は断たれた。僕の全力を持って、この状況に対応しなければならない。

 あ、でもあくまで玲ちゃんへの感謝のお返しの気持ちは大事にしないとね。



 勝手知ったるなんとやら、玲ちゃんへの訪問も二回目ともなれば迷うこともなく辿り着けた。実は初めての時は一軒家ばかりで表札もなかったりする家もあり少しだけ迷った。

 時間に余裕を持たせておいたので大事には至らなかったが、何事も余裕を持たせないといけないなと再確認させられたものだ。


 ぴん・ぽ~ん


 やっぱりとぼけた音色に聞こえる呼び鈴が鳴ると、少ししてから玲ちゃんが顔を出して出迎えてくれた。


「いらっしゃい優君。ごめんね私のわがままにつき合ってもらって」


「そんなことないよ。玲ちゃん心配だし要望にも応えたかったから、ちょうど良かったよ」


「そっか。ではお言葉に甘えてよろしくお願いします!」


「はい、こちらこそ。…ご両親はもう旅行に出かけられたの?」 


「うん。朝早かったよ? 高速混むのが嫌だから朝ごはんもSAサービスエリアで取るからって」


「高速使うのか…どこまで出かけられるのかな」


「二泊三日だからね…伊豆をドライブしながら温泉巡りしてくるって」


「へ~、そうか運転免許も欲しくなってきた。行動範囲が広がるのは大きいし、窮屈だけど車の中で寝ることもできるから便利だしね」


「優君とドライブ旅行…うん、行きたい。私も運転できれば交互に代わって負担も少なくできるね」


「助かるかも…、玲ちゃんと一緒だとやりたいことがどんどん増えてくや」


「私もだよ。さしあたっては今日の夕食の買い出しを一緒に行って欲しいかな」


「喜んで。僕の玲姫あきらひめ」「…良きに計らえ。私の優彦ゆうひこ様」


 姫に彦か…玲ちゃんは姫が似合いそうだけど、僕が彦? 太陽の子って…。お互いなにを想像したんだか、可笑しくなって笑いあってしまった。



 今までの自分もそんなに悪くなかったと思うけど、一人での行動に慣れ過ぎて視野も狭かったし何かに興味を持つことも少なかったように思える。強制的に参加させられたことと、自分から何かに興味を示していくのは似て非なるものなのかもしれないなぁ。

 

 新しい発見ばかりだ。




つづく


清く正しい交際って素敵ですね…ね?






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