ある彼氏と彼女がほんの少しの勇気で不幸を退けるお話 完

 終わりが見えてきたところで実はこうなることは分かり切っていた、な~んてカッコいいこと言ってみたいけど、僕にそんな頭脳はハッキリ言ってありません。

 

 結局のところ僕がしたことなんて、やろうと思えば誰でもできることであり、上手くいったのもイツキと音蔵さんが、ちょっと勇気を出し合えばだったわけで。


 この二人がもし違う世界だろうが不運に巻き込まれようが、のである。


 

 音蔵さん一家(弟君抜き…いつか泣かす)+イツキの話し合いは、話し合いですらなくイツキがそばにいて音蔵さんが本音をぶちまければ、即墜ち二コマのように終わった。


 音蔵さんは家族を信用しなかっただけでわけじゃない。ご両親も音蔵さんにどう接したらいいか分からなかっただけ。


 じゃあどっちも嫌ってるわけじゃなく、歩み寄れば解決するのは自明の理と。

 

 すぐに仲良し家族にはなれなくても、スタートラインに立ったなら後はほっといても…ね。


 これでようやくハッピーエンドまでの道が見えてきた。

別にもう大したことはしないし、する必要もないんだけど…せっかくならご都合主義を目指してみよう。




 イツキが、うちの高校に入学する日がやって来た。ひと月遅れだけど許容範囲内だろう。やること多すぎて大変そうだけど、彼女持ちに慈悲はない。

 まぁクラスは僕と一緒の1-Aだけど。


 

 紺野さんに音蔵さんをいじめていた主犯格の女子含めて数人の女子に、放課後1-Bの教室に残ってもらうよう頼んでおいた。

 別に今さら吊るし上げるって訳じゃない。夕日の中で握手を交わし、友好的になるのもなかなかね…。

 

 なので、手打ちだ。遺恨を残さないやり方は、古今東西これしかないと思う。

どっちも悪かったなんて言ったら、後ろから頭をはたきたくなる。


 いじめた方が、100%悪いに決まってる。


 それでも人が生きていく上でどこかで折り合いをつけないと、今も昔も命の取り合いまで…いくとこまでいくしかなくなる。


 人の恨みは、時代なんか関係ないんだから。


 いじめをしていた女子達の前に音蔵さんが立ち、そのそばにイツキがいる。

仲裁役として紺野さんがいてくれて…僕いらなくね?…端っこの方で大人しくしてます。

 


「何?私たちに復讐でもしたいわけ?彼氏連れてイキってんの?」


「違う。私があなた達からされたことは、消えないし、忘れない。だけど、そうさせた私の態度にも問題があると思ってる。だから、失礼な態度を取って不快な思いをさせてたなら…ごめんなさい」

 

 音蔵さんはキチンとした姿勢で頭を下げ、謝罪した。


「………別に」「…ねぇ」「…」


「音蔵さんは、これをもってあなた達に対する怒りを収めるそうよ。あなた達はどうするの?まだ、続けるの?」


「………」


「ここが分水嶺よ。まだこれ以上つづけると言うのなら、今度は私が…」


 


 紺野さんが数秒、僕の瞳を見てくれる。次に、音蔵さんとイツキを。

そして、主犯格の女子達を見つめる。


「…が、黙っていないから」


 その視線と、イツキと音蔵さんの強い意志を持ったまなざしにたじろいだのか、彼女たちも音蔵さんに対して、しぶしぶながらも謝った。…僕いらん子で悲しい。




 それからのことは、特に言うこともないかな。

音蔵さんに対するいじめはなくなったし、ハブられるようなこともない。

 

 相手の女子達にお咎めなしは納得いかないかもしれないが、恨んでどうこうしてくることもないだろう。

 

 もしそうなったとしても今度は音蔵さんにはイツキがそばにいるし、ご家族にだって相談できる。

 紺野さんもクラスの子達も助けてくれるだろう。僕も手助けできることはするしね。

 落としどころとしてはこのくらいだと思うけど、僕の頭じゃこの程度でいっぱいいっぱいです。これでイツキからの相談事も、全部解決かな。


 そうそう、イツキの親御さんがイツキの生活費も半分以上出してくれるらしい。

これで無理なバイトを入れなくて済むし、学校生活も無理なく過ごせるだろう。


 彼女持ちだよ羨ましい。箪笥たんすのカドに小指ぶつけて痛がれ。

 あの部屋、箪笥ないけど。

 

 それと音蔵さんから僕に対して、辛辣に当たったことへの謝罪とお礼があった。

僕が約束破ってイツキにいじめのことをバラしたのは、事情を知らないときは許せないくらい怒ったけど、今は違うからって。

 

 ありがとう、と言われて少し照れた。

 

 さすが美人。怒っても笑顔でも、人を惹きつけるよね。

内心は友人失いそうになるわ、美人な同級生の女の子に恨まれそうになるわで、僕の心はズタボロですよ。


 それと、MVPは紺野さん。彼女がいなければ間違いなく、このハピエンルートは達成し得なかった。

 一緒にいて音蔵さんの心を穏やかにし癒してくれたからこそ、イツキに依存し過ぎず僕の話も聞いてくれたわけだしね(きっと、マイナスイオンが出てるんだろう)。

 

 ほんと、何かお礼しないとなぁ。


 でも紺野さんには、イツキ脅すわ、音蔵さんの約束を即破るわ、先生たちも脅迫するわ(説得したって言ったけど多分バレてる)、印象下げるとこしか見せてなくて…ドン引きのうえ嫌われてそうで、本気で泣ける。


 いいもん。僕にはバイブルである、NTR小説(再構築系)があるから。

今月新刊の温熱富貴先生のマインド・スワップに、心を癒してもらうんだぁ。楽しみだなぁ。

 …その作品が心に大きな傷跡を残すことになるのだが、本人は知る由もない。



 …当然だよなぁと…それでも後回しにしてくれたのは、先生方の配慮だったのか。

 

 全部解決した後に学校から反省文の提出と僕の両親にも連絡が入り、優く~ん学校で何してるのかなぁ? ってお説教2時間コース。

 

 母から始まり父に交代、そして最後にタッグで追い打ち。仲良すぎなんだよなぁ…良いことなんだけど。

 後悔してないならそれでいい。優をどこに出しても恥ずかしくない子として育ててきた(スパルタ付)ので信頼してると。

 

 ほんと僕は恵まれてる(けっこうろくでもないことしたけど…ごめん父さん母さん)。



 そして今度こそ、穏やかで平凡な日常に戻ってきたある日。


「そういえば、優はなんであそこまで俺達に力を貸してくれたんだ?」


「どしたの突然?」


「いや、なんとなくだけどな。初めの相談もユイのことも、傍から見たら厄介事でしかなかっただろ。」


「ん~まぁ、そうかもね」


「だろ? それに…俺とユイの憎まれ役を買ってでも、手助けしてくれたのが気になってな…。中学の時も、そんなに仲良かったわけじゃないだろ俺達」


「同級生の知人くらい、だったっけ。…特に深い理由じゃないよ」

なんとなく恥ずかしくて、目をそらす。


「あんじゃねえか。教えろよ」


「ん…イツキは、僕がラノベ読んでても馬鹿にしなかった、から」


「そんだけ?」


「そんだけ」


「なんだよそれ。そんなことくらいで、あんなに助けてくれたのかよ…お人よしすぎんだろ」


「そんなことくらい、でもだよ。それとあの時の音蔵さんにはイツキが必要だったし、イツキにとっても音蔵さんは、一番たいせつな人でしょ?」


「ああ」


「ならイツキが一番守りたい人を、手助けするのは友人の務めでしょ。それだけ」


 イツキは呆れた目で僕を見つつ


「本当に、俺もユイも感謝してる。ありがとうな、優」


「もう十分聞いたから。それに、できることしかしてないしね。紺野さんが、一番の功労者だよ」


「もちろん紺野にも感謝してるし、お礼も言ったさ。はぁ~ほんと人間、わっかんねぇもんだな」

 

 僕を見て、ため息つくのはどうかと思う。


「お前が同級生なのが信じられないわ。年齢詐称してないか?」


「失礼な。まごうことなき新一年生です~。そっちこそ、惚れた女の子のために家族から離れて、一人暮らしに踏み切るとか僕からしたら信じられないよ。

 …イツキこそ、何で僕に相談したのさ?」


「あん? それこそ特にはないけどな」


「特になくても、何かはあるんじゃん」


「…俺たち卒業生の中で皆勤賞だったの、優だけだったろ」


「あぁ…あったね。でもそんな大したことないと思うけど」


「信用できると思ったんだよ。他にも学校の掃除さぼったりとか、見たことなかったしな…。それに中学時代の優の噂も…」


「それ当たり前のことじゃない? あと僕の噂ってなに?やだ、怖い…まぁいいか。終わりよければ、全てよしとしよう」


 二人でそんな馬鹿話をしてたら、紺野さんがうちのクラスに顔を出してくれた。


 笑顔が眩しすぎる…天使かな?


 手打ちのときに紺野さんと瞳があってから、少し調子がおかしい。いけないいけない、僕には縁のないはなしだ。


「おはよう優君、イツキ君。今日は優君にお話したいことがあって…いいかな?」


「! 優って名前呼び…お前いつの間にそんなに仲良く…(小声)」

「! 名前はイツキもじゃん…いや違うし分かんないし(小声)」


「お、おはよう紺野さん。え~っと、はい。どうぞ」


紺野さんは静かに深呼吸してから真剣なまなざしで(背にライオンの幻が見え…)、


「千玖優君。大好きです。私とお付き合いしてください!」


 気合い一閃、騒がしかったクラス内が一瞬にして静寂に変わる。

 

 …誰も喋りやしない。


 教室のドアから、音蔵さんがひょこっと顔を出してる。(メッチャ笑顔なんですけど…)

 そしてみんな、一斉に僕を見て…。緊張して、体がウサギのように震える。  

 

 イツキがニヤニヤしながら、肘で僕をつつく。


「はい。ぼ、僕でよければ、よろしくお願い…しましゅ…」噛んだ。



うおおおおおおーーーーーまじか!!!!!

きゃぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!


 クラスが一気に大騒ぎになった。



 これがイツキと僕が、友達になったときのちょっとしたエピソード。


 そしてイツキと音蔵さんにとっては大したことのない、二人がほんの少し勇気を出して不幸を退けた、なるべくしてなったお話。





おしまい





イツキとユイちゃんのお話を最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。優君と玲ちゃんが僕にとっての子供であれば、イツキとユイちゃんはYuki@召喚獣先生のお子さんたちなんですけれど、どーしてもどうにかしたかったんです(自分の中で)

( ;∀;)


NTRや浮気、不倫は本人の意思が介在されているので仕方ないと思うんですけど、ユイちゃんとイツキ君だけは…辛かったんです(自分が!)。でもその辛さも含めて素晴らしい物語を構築された先生は凄いなと。


当初番外編はイツキとユイちゃん視点で活躍めいたものを書いていたのですが、なんか違うと。二人がほんの少し勇気を出し合ってその周りに頼れる友人や家族がいれば…と。

優君は誰もがなろうと思えばなれるヒーロー像だったので動いてもらいました(ポンコツですがw)。玲ちゃんの方が良いとこ全部持ってった気もしますがそれでいいかなと。


余計なお世話でおめえの陳腐でつまらない妄想を押し付けんじゃねえよゴミが!と言われたら、ハイその通りでございますスミマセンと平謝りです(疲れてる時ってネガティブですよね思考が)。


でも大好きな彼女に~のきっかけは、Yuki@召喚獣先生の小説

「何万回の夜を過ごしても忘れないような、愛してるを君に送るから」

であり自分用の2次創作を作りたいと思った出発点です。


もし読まれてない方がいらっしゃったら、ぜひ、ぜひ読んでいただきたい。


そしてNTR再構築系のさわりや、ちりばめたネタ?の出自も登場作品と作者様で載せてますので興味があったり、まだご存じなかった読者様にはこれもまたぜひ読んでいただきたい。

先達の先生方達の素敵な作品ばかりです。(全部読んだことあるわ!このにはかが!というお叱りはお許し下さい…)


物語としてはここで全て繋がった作りとなってる(はずな)のでおしまいとなりますが、アフター物語って好きなので少し増えるかもしれません


自分の小説を読んで少しでもNTR再構築系を知っていただき悪くないんじゃないか? 徹底的に叩くざまぁも良いけど困難でもやり直していく物語にも寛容になってもいいかな? という読者様が増えると嬉しいなと。(なんでもかんでも復縁しろというわけじゃありませんw)

そして皆様にほんわかした、楽しかった、面白かったとプラスの気持ちを湧かせることができたなら幸いです。(綺麗ごとすぎるかな?でも本音です)


読んでくれたみなさま全ての方に、素晴らしいカクヨムライフを!


ありがとうございました!




もう少し優君と玲ちゃんの物語も見てみたいかなぁ

と思ってくださいましたら、


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