悩みぬいた末にたどり着いた答えは?

 それは玲ちゃんが僕の自宅へ訪問する前のこと…。



 さて困った…。いや困ってるけど嫌じゃないと言うか、これも幸せな悩み? と考えるべきなんだろう。

 玲ちゃんから誕生日プレゼントを贈ってもらってから、はや幾日…おつき合いしてからもいろいろとお世話になりまくりなダメ彼氏一歩手前としては、玲ちゃんに何かお返しせねばと。

 こんなふうに大好きな彼女のためにあれこれと試行錯誤するのは初めての体験であり、喜んでもらえたら良いなと思うと幸せを感じる。


 と、ここまでなら彼女持ちの惚気で終わるんだけど、今さらながら重大なことに気づいてしまった。いや気づくのが遅すぎた。

 

 イツキに頼られた時に僕、玲ちゃんを散々頼りまくっておいて、お礼しないとな…と思ってたのに、何もしてないんですけど(´・ω・`)。


 あれから何か月経ったと思ってるの?…。あなたは恩知らずの上に恥知らずで不義理まで働く愚か者だったの? あぁ…彼女になったんだから過去のことなんか、気にする必要ないって? おぉ~おぉ~ご立派な彼氏様だこと。いいご身分だ、亭主関白ここに極まれり…ってか?


 

 ああぁぁぁーーーーーー!!!!! どのツラ下げて玲ちゃんの彼氏してたんですかって話ですよ! いや、玲ちゃんは誰にも渡さないし! 僕の大切な女性だし! 

生涯愛することを心の中で誓うくらい大好きですけど!!!!!

 

 その大切な女性に対して僕は何したのか省みろと…。

 

 友人や先生を脅迫して友人の彼女との約束破ってるとこを直に見られ、彼女の浮気を疑ってストーカーまがいのことまでし…挙句の果てには一途に思ってくれる玲ちゃんに対して別れて下さい?…。


 (;・ω・)ハッ! もしかしなくても僕は…クズなんでは…。いやいやいや…そ、そこまで酷くは…ダメンズウォーカー最新号にて…ダメ男の特徴6選


 第一印象はよい…玲ちゃんと初めて会った時、嫌われてはいなかったと思う

 裏表がある…あ、あるといえばあるのか

 女性に対して甘え上手…上手か分からないけど玲ちゃんに甘えてることは確か… 

 平気で嘘をつく・約束を破る…言わずもがな… 

 頑固すぎる…頭固いかも…

 束縛が激しい…↑方で誰にも渡さないとか宣言して…


 つ、詰んでる。


 こ、ここから巻き返すのは僕のバイブルたちを総動員しても、至難のわざ過ぎる…。NTRネトラレたわけじゃないし、玲ちゃんが僕を好いてくれてることを疑うなんて全くない。

 

 がっ! 

 

 玲ちゃんに呆れられて、がっかりさせて愛想をつかされるのは僕の行動次第でしょって!

 

 言い訳をさせていただきたいのですが…、玲ちゃんにお礼をしようとは考えていて、その一環で単発のアルバイトをしてたんですけれども、その途中で想定外のことが起こりまして。

 玲ちゃんから告白されるなんて夢にも思わなかった…どころじゃないよ。僕の尊敬するラノベ作家の神々達にファンレター送ったら直筆のサイン入り色紙いただいたなんて家宝でしょこれ? レベルですよ…コホン。


 そんなパニック状態のなか玲ちゃんと交際して、ドンドン好きになって幸せすぎてこれは夢? なんて思ってたところに事件があって…。

 とにかく、玲ちゃんの彼氏になれたからとあぐらをかいていた自分を反省し、そしてどう名誉返上、汚名挽回(逆だ逆! 今まさにパニくってる…)の策を講じていくか。それが肝心だ。



「助けてよ~イツキえも~ん」


「優~ほんとさ~…、自分のことになると駄目になる典型だなぁ…あと語呂わるっ!」


 親友の呆れる眼差しが痛い…。


「そんなこと言ったって~」「わかったわかった。でなんだって? 紺野さんにお返しだっけ?」


「そう。あんまり高級なプレゼントとかはふところ事情的にも、玲ちゃんも困るだろうし」


「そうなぁ~、アクセ系なんかは手ごろでいいのあるけどセンスないときついしなぁ」


「玲ちゃんあんまりゴチャゴチャしたのつけるの嫌そう」「だろうな」


「服なんか相手に似合うものを送るとかプロでもむずいし本人が喜ぶかどうかも、ある意味博打だしな」


「む~り~」「まぁ自分好みの服だったり下着を送る奴もいるけど、だいたい痛いからやめとけ」


「下着贈るの!?」「そこ喰いつくのかよ! まぁ相手に似合うのだったり、つけて欲しいのだったりな」


「…Hなのも?」「渡すやつはだいたいエロいのだろ。基本男はアホだからな」


 なんという説得力。頷く事しかできない。


「八方塞がりじゃないか…」「結論出すのはええよ。となるとここは頼れる人材を、ユイミちゃ~ん?」


「はいはい何ですか? イツキも千玖君も何を話してるんだか…」


 洗濯物を取り込んだ音蔵さんが、呆れた声で部屋に入ってきた。



 遅くなったけど、今日僕はイツキの部屋に相談しに来ている(遊びに来た)。

 

 快く迎えてくれたのは嬉しいのだけれど、音蔵さんが来ているとは思わなかったのでまた今度と帰ろうとしたら、音蔵さんが気にしないであがってとなり今ここにいる。


 イツキと音蔵さんの仲は順調そのもので、もうすでに子供がいるかのような、熟練夫婦感を出しているふたりのお邪魔をするのは心苦しかったものの、遠慮しないでと押し切られてしまいお言葉に甘えた所存であります。

 

 エプロン姿が似合ってる音蔵さんは、もう奥さんしてるの? と言う雰囲気でイツキと二人で並んでると30代くらいの年を重ねた深みを感じてしまう。(お幸せに)

 通い妻状態なのか同棲状態なのかいまいち分かり辛かったけど、定番の歯ブラシが二つ、イツキらしからぬ小物の数々、女性もののスキンケアコスメ 、そしてうちでも母さんが使ってるお高めのドライヤー…。イツキあんなの使うかな~。


「それで? 千玖君は玲ちゃんに何かしてあげたいのよね?」「はい…」


「でも女性からしたら好きな男性からの贈り物なら、よっぽど突拍子もないものでない限り、嬉しいものよ?」


「そうかなぁ」


「えぇ。現に私はイツキからの贈り物は全て大切にしてるし、嬉しいもの」


 イツキを見つめる音蔵さんが、ま、まぶしい…。後光が差してて惚気とか云々の前に菩薩かな? と…。


「ば、ばか! 恥ずかしいだろユイ。」「そうかしら。本心よ?」


 オシドリ夫婦とはこのことか。


「贈り物が気を引けるなら、どこかに遊びに連れて行くなんてどうかしら?」


「旅行とか?」「いいえ。お泊りもいいけど日帰りで構わないし、この前イツキが連れてってくれたネズミーランドは素敵だったなぁ」


 目が輝いてますけど…よっぽど楽しかったのか。


「優も紺野と行ってこいよ? かなりお勧めだぜ」


「なるほど…でも止めとこうかなぁ。きっと玲ちゃんは、イツキと音蔵さんも一緒に4人で遊びに行きたいって言うと思うし」


「そうだねぇ。玲ちゃんと遊びに行こうって約束もしたからネズミーは4人で行きたいかも。でもでもふたりで楽しんで来て欲しいのもあるし…うぅ~ごめんね千玖君…」


「いやいや、こっちこそ気を使わせちゃってごめん。お出かけも考慮するよ」


「まぁサプライズもいいけど、紺野と話し合うのが一番早いだろうけどな」


「そうなんだけどさ」「千玖君が提案してふたりで考える方が玲ちゃんも喜ぶと思うよ?」


  

 ふたりで考える…かぁ。いつもなら自分の判断で動き出したら最後まで突き進むけど、傲慢だったのかも…。今日はイツキと音蔵さんに相談できてよかった。




つづく


こうと決めたら貫くと言えば聞こえはいいけど人の意見も聞きましょう

でも人の意見に流されるのもほどほどに…


難しいですね

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