第13話 剣術大会<4>
王家主催の剣術大会はトーナメント戦で行われる。
組み合わせは厳選なるくじ引きと言われているが、実際にどうなのかを知る者はいない。
「ルーカス公、調子はどうだ?」
「騎士団長。今日は見学ですか?」
さすがに公爵家の者を平民や傭兵を含む控室に通すことができないからか、ルーカスには別の部屋があてがわれていた。
そこに第1の騎士団長がやって来る。
「そうだ。ルーカス公が初めて大会に参加するというし、第1の者どもも出るからな」
「ああ…」
(なるほど。団長も団員の言動はよくご存じのようだ)
ルーカスとて自身が下の者たちにどう思われているかは知っている。
それが原因となり今日の参加に繋がっているわけだが。
「皇太子殿下からも発破をかけられましたよ」
「あの殿下ならさもありなん」
話しながらも柔軟など準備に余念がないルーカスを眺めながら、椅子に腰かけて団長は言葉を続ける。
「基本的に人間なんてものは言いたいことを言いやりたいことをやるものだ」
いついかなる時も人格的なことを言う団長の、常にはない言葉にルーカスは動きを止めた。
「それでも、上に立つ者は上に立つだけの価値を示さねばならん」
「統率する人物に値する価値を見せろ、ということでしょうか」
「多くの者をまとめ上げるのは難しい。全員が同じ方向を向いているわけではないからな。それでも、ある程度納得させる必要はあるということだ」
それだけ言うと、団長は腰かけていた椅子から立ち上がる。
「価値を示せ。騎士団の者たちがその足元に跪かずにはいられないくらいの強さを証明してみせるんだ」
「御意」
ルーカスがかつてのように答えると、団長はまなじりを下げて困ったような顔をした。
「私はもう上司ではないぞ。むしろルーカス公が上司になったのだろう」
「団長はいつまでも私の恩師ですから」
ルーカスの真摯な言葉に団長は嬉しいような照れくさいような表情を浮かべる。
「団長に恥じぬような試合をしてみせます。必ず、皆が納得するような強さを示してみせましょう」
ルーカスは、力強く宣言した。
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