第28話 その後の二人<ルーカス、約束する>
その後ルーカスは自身のどこがいけなかったのかを懇々と説明された。
アリシアに相談なく大事なことを決めてしまったこと。
生まれの関係上仕方がない面があるとはいえ、周りの者の気持ちに対して鈍感過ぎること。
自分だけで考えて突っ走ってしまったこと。
多くのことがアリシアの負担になっていること。
それはそれは丁寧に、しっかりと、隅々まで理解するまでセオドアの指導は続いた。
そして最後に、ニコラオスとフィティアの子であるテリオスについて、アリシアに育てさせるのであれば3歳以降からにするようにと約束させられた。
本来貴族の子は乳母に育てられることが多い。
しかしアリシアは自身の子に関してなるべく自分で育てたがった。
アリシアにとって初めての子育て。
初めてのことばかりの中で、自分の子だけでなくテリオスも一緒に育てるのは負担でしかない。
テリオスには可哀想かもしれないが、アリシアが必要以上に苦労するのは違うとセオドアは言い切った。
テリオスに温かい環境を与えたいのであれば、そばに置く人を精査して選び、そして折に触れてルーカスがコミュニケーションを取ること。
それを約束させて、セオドアは再びイリオン国へ戻っていった。
アリシアは兄の行動に苦笑していたが、ルーカスにしてみればいかに自分が多くのところで足りない人間であったかを突きつけられたようなもので、かなり落ち込んだことを覚えている。
しかしあれだけのことを言ってくれる相手というのは、望んでもなかなかいないものだ。
セオドアはたしかにルーカスのためを思い忠告をしてくれた。
だから。
ルーカスは自身への反省も込めて、もらった忠告をしっかりと生かしていかなければならないと思う。
アリシアは子育てを楽しんでいるけれど、たまには子どもと離れて女性同士でお茶をするなどの気晴らしも必要なのではないか。
それが今回ニキアスからの提案を受け入れた理由の一つでもある。
相手が皇太子妃であるディミトラではお茶を楽しむとは軽々しく言えないかもしれないが。
いずれにせよ皇太子であるニキアスからの依頼となればたとえ命令でなくても断れはしないというのもたしかだった。
自分はアリシアや子どもに何をしてあげられるのか。
ルーカスは自問する。
より良い夫、そして良い父親になるための努力は惜しまない。
そのためにも情報が必要だ。
子どもの喜ぶこと、喜ぶものをもっと調べて子育ての時間を楽しみたい。
そんな思いから騎士団の中でも同じ年頃の子どもがいる団員に声をかけたりしていたのだが、それが件の噂となったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます