第35話 その後の二人<王女の来国>
王城の謁見の間にはすでに多くの高位貴族が集まっていた。
王族の入場は最後のため、参加貴族がそろった後となる。
謁見の間に入場したルーカスとアリシアも他の貴族と同じように定位置についた。
ざわついていた場内が次第に静まると、ほどなくして王族も入場する。
そしてニキアスを除いて王座に向かって右側に王子たちが、左側に王女たちが立った。
ニキアスが王座の右後ろに控えたところで、王と王妃がそろって入場する。
アリシアは今まで主に領地にいたこともあり、王族が勢揃いしている場に居合わせたことが少ない。
もともと国としての歓迎の場でない限り王族が全員そろうこともないのだが。
今回は今まであまり交流のなかったトウ国の王女の来国であること、王女の年齢的に交流相手にはロゴス国の王子や王女も含まれることが考えられての配慮だった。
「トウ国、アイラ第三王女のご入場です」
声に合わせて扉が開き、先導の騎士に続いてトウ国の使者が、さらにその後に数人の護衛騎士に囲まれた女性が入場してきた。
王女は17歳という話だが、ロゴス国の同じ年くらいの女性に比べると小柄に見える。
華やかな色合いを持つ者の多いロゴス国の貴族たちの中にあって、王女とトウ国関係者の黒髪黒眼はやはり目立った。
「遠路はるばるよくいらっしゃった。王女の来国を歓迎しよう」
王の言葉に、アイラ王女が頭を下げる。
続いてロゴス国側の許可を得てトウ国の使者が話し始めた。
「王女の勉学と交流のための滞在を許可いただき、さらにはこのような歓迎の場を設けていただいたこと感謝申し上げます。少しばかりではありますが、祖国からの品をお納めください」
使者からの目録を受け取ると今度はロゴス国の宰相が答える。
「今宵歓迎の宴を催しますので、お疲れのところとは存じますが是非ご参加ください」
「ありがたく、参加させていただきます」
その後は滞在中の主な担当者の紹介などを挟み、ロゴス国側とトウ国王女側の顔合わせは滞りなく済んだ。
参加している多くの貴族たちは歓迎の宴までの時間を王城内に割り当てられた休憩用の部屋で過ごすことになる。
しかしアリシアはルーカスと共に別室で王女と個別に顔を合わせるようにあらかじめ申し渡されていた。
「アリシア」
声をかけられて、アリシアはルーカスの腕に手を添えて歩き出す。
「私も一緒にということは、私にも何か役割があるのかしら?」
「おそらく、今回の滞在中にディミトラ皇太子妃殿下が思うように動けない場合に呼ばれることがあるのではないかな。あとは私がトウ国と縁がある関係で、夫婦共に呼ばれることもあるだろう」
ロゴス国で一番位の高い女性は王妃、それに次いで皇太子妃と王女たちとなるが、王族を除く貴族では公爵家が一番高位となる。
そして現在の王家や公爵家の中で王女とある程度年齢がが近いとなるとディミトラ以外にはアリシアしかいなかった。
「クラトスもまだ小さく、育児も含めて大変なところを苦労をかける」
「貴族の勤めでもありますし、ディミトラ様のお役に立てるのなら光栄だわ」
ルーカスが申し訳なさそうにしているから、アリシアはその心配を笑い飛ばした。
(できれば友好的なおつき合いができるといいのだけど)
そう思いながら、アリシアはルーカスと共に別室へと向かったのだった。
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