第14話 みんなが応援してくれるそうです!

 寮長やオー君の計らいでショックから立ち直る事ができた。

 おかげでこの二日間は落ち着いて生活する事ができている。


 だけど当面の問題はまだ解決していない。

 十日後の卒業日に行われるユリアンテとエルクとの決闘、それに対抗する手段を考えなければ。

 できうる事なら穏便に済ませたいけれど、あの二人の事だから謝った所で今さら決闘を取り下げなんてしないだろうし。


「ねぇオー君、君はいつも自慢げだけど、実際には何ができるの?」


 そんな事を悩み、オー君と話しながら竹ぼうきで芝生を掃く。

 対策の方向性も定まってないし、それなら掃除のお手伝いした方がマシなので。


『当機の機能については先日情報をインストールした腕輪型機器にて閲覧せよ。第一九七項にて当機が最適と推定する兵装の説明が記載されている』

「ええっと一九七、一九七……あ、これね。ええっとぉ」


 それでいざ開いてみれば、あいかわらずよくわからない内容がビッチリと。


「ええとぉ……〝えるふぇみなそうかんついでんかりゅうしちょうかそくかでんじゅうあつげきほうについて〟何言いたいのかさっぱりわからない!」

『当説明文は本文明における原生高位生命体の知能レベルに準じて簡易翻訳したものである。これ以上の簡易化は本生命体の知性への冒涜にも繋がるため軽率には容認できない。変更には別途、政府議会の承認が必要』

「あっそう、私に合わせるつもりはないってコト」

『肯定』


 きっと面倒臭いんだろうなぁ。私わかっちゃったよ。

 なんたってオー君とは主従関係だもんね、きっと気持ちが通じ合ってるんだから。


 ……とはいえ、この説明文はほんとわからない。

 この間も読んでみたけど、一ページ目すら読み切れずに頭が焼き切れそうだったし。


 それになーこれ、所々の翻訳が怪しいんだよねぇ。

〝パルスのルース波がトクーンでパーゼ変換である〟とか意味わからない文法と言語で書かれるともうさっぱりだよー。


「つまりこの〝えるふぇみな〟とかいう何かがオー君の攻撃手段って事?」

『肯定。しかしその兵装の使用は今現在においては推奨されない』

「どうして?」

『本惑星の大気組成、物質の比重や導電性、電位変位作用など、兵装使用による影響などを検証する必要あり。その計算は当機AI内にて現在も行われており、完了までは当文化式時刻であと一八二時間、およそ七日を要すると推測』

「それをやらないで使うと?」

『最悪の場合、反粒子拡散の影響により兵装の故障、または周囲環境およびマスターパムの肉体が素粒子分解され消滅する恐れあり』

「ヒエ……」


 よくわかんないけど、多分対消滅系の重力魔法か何かかな?

 超広範囲っぽいし、巻き込まれは怖いなぁ。


 でもそういうのがあるなら試験の時に使えたらよかったのに。

 訓練所には魔防封壁が張り巡らされてるから、魔法の暴発程度なら普通に防げるようになってるし。


「まぁ七日後なら決闘にも全然間に合うね」

『肯定。ただしむやみな使用は推奨されない』

「うん、わかってる。当日にぶっつけ本番って事でいいかな?」

『検証結果次第ではあるが、それが妥当である』


 きっとオー君にも思う所があるのだろう。

 それに反論した所でまた『否定、実験の必要はありませんー』とか言われて怒られるに違いないし。


 ふふふ、呼んでこの数日でオー君の扱いにだいぶ慣れたわね……!


「お、朝から外で何かしてると思ったら。寮の掃除って偉いな」

「あっ……」

「よっ、パム。おはようさん」


 そうオー君との会話を弾ませていたら寮の方から声が聞こえた。

 それで振り返ってみれば、五人の男女の出てくる姿が。ちゃんと従者もいる。

 後ろの方にはコルタ君の姿も。


「う、うんおはよう。掃除は他にやる事ないしと思って。えーっとたしか、うーん」

「ヒューデルだよ。もう三年目なんだから名前くらい覚えてくれよぉ」

「ご、ごめん、普段会話しないと覚えられなくて」

「う……まぁ話し掛けなかったのはすまないと思ってるよ」


 私も申し訳ないと思う。なにぶん記憶力に乏しいもので。

 この寮でも二年間ずっと一緒だったのになぁ。


 まぁコルタ君以外は多分、話した回数が十回未満だけど。


「俺はフィヨンっていうんだ」

「オラはマルット!」

「アタシはラライや!」

「あはは、僕は言わなくてもわかるよね」

「うん、コルタ君はよくお世話になってますっ」

「「「コルタァ~……!」」」

「え、いや、僕はそこまで……あはは」


 それなのになんで今さら話し掛けてきたのだろう?

 私に関わったらそれこそ大変な事になるだろうに。


「実はパムに話したい事があってさ」

「話したい事?」

「うん。大した事じゃねぇんだけど」


 なんだろう?

 愛の告白とかだったらノーサンキューかな。


「あのさ、俺ら、これからお前の事を全力で応援するわ」

「えっ!?」

「今まではあのお嬢様にビビッて何もできなかったんだ。でもなんか聞くと、パムは決闘申し込まれるくらいに怒らせるような事したらしいじゃん?」

「あー……う、うんそうだね」

「あれ聞いて、俺らもう我慢できなくってさあ!」


 全然違った。だけど目がすごい活き活きしてる。

 五人揃ってすごいやる気なんだ。


「それというのも、この数日のあのお嬢様のやる事がエゲつねぇんだ。反乱分子をどんどんと粛清してる。悪口軽口叩いただけですぐ目を付けてきやがって」

「えっ!?」

「昨日もマルットの彼女のナザリーが粛清という名目でな、全裸に剥かれたまま校内で吊るされたんだ。おかげであいつ塞ぎ込んじまった。あれはいくら何でもやり過ぎだぜ……!」


 ナザリーさん……たしか少し前に噂話してた人だ。

 きっと誰かに聞かれて告げ口されたのかもしれない。


 それにしたって女の子を全裸にだなんて酷い、酷すぎる。

 

「この調子じゃ俺達も標的にされかねねぇ。だからもう開き直ってパムを応援する事にしたのさ」

「えええーっ!?」

「勝つ算段なんて無いかもしんねぇ。けどお前が何かやらかしてくれる事を期待してぇんだ! 別に損得とか関係なく、気持ちだけでも、ってよ!」

「「「うんうん!」」」

「みなさん……」


 そっか、みんなも怖かったんだね。

 私だけじゃなかったんだ。


「だから俺達はパム応援団を結成する事にした! これからは何があってもお前の事を応援し続けてやるぜっ!」


 だけどこうして勇気を振り絞って私に期待してくれている。

 その期待が一方的な想いなんだって事くらいはきっと彼らもわかっていて、それでもやらずにはいられないんだろう。


 どうせやられるなら、思う存分にやり返してやれって。


 そんな想いに充てられたからか、私も自然と頷いていた。

 それ以上の言葉とかは出なかったけれど、みんなも私の気持ちに気付いてくれていたと思う。

 だから彼らは大手を振りながら去っていったんだって。




 こうして後援も得られた私はついに決闘へと挑む事になる。

 もちろん、こうなったからには勝つつもりで。


 みんなのためにも怖がってなんていられないんだから!

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