第26話 オー君が思う以上に私の事を考えてくれていました
お父さんとお母さんの追求はすごかった。
おかげで学園生活で起きた事すべてをこってりと絞り出されました。
で、その結果。
「グラテスの野郎め、もう絶対に許さん……!」
「やはりあの男はあの時三枚に卸すべきだったわ……!」
「だ、だめーっ! 暴力はだめーっ!」
二人とも殺意満点です。今にも飛び出しそう!
だからと全力で制止。
シュティエール卿もユリアンテも然るべき罰と報いを受けたんだからもういいの!
はぁ、これだから話したくなかったんだ。
私の事を愛してくれてるのは嬉しいけどさぁ。
「んもぉパムちゃんってば本当に優しい子! もう好き好き!」
「いやーパパ達からこんな聖人が生まれるなんてもう奇跡だよなぁ!」
「自分達の堕落具合を認識しているなら直そうと思わないの?」
まぁ直していたら私はいなかっただろうね。
二人を反面教師にしたからこの人格がある訳で。とても複雑です!
「ところでもう一つ気になった話があったのだけれど」
「えっ?」
「あなた、魔人エルクを瞬殺したって言ったわよね?」
あれ、でもお母さんが珍しく真面目な顔をしている。何年振りだろう?
「知っているのかアリム?」
「ええもちろん。魔人は伊達に不老長寿なのではないわよ?」
へぇ、じゃあお母さんはお父さんに呼ばれる前からエルクと会ってたんだ。
まぁ魔人って見た目じゃ年齢わかんないしね。お母さんも二〇代に見えるし。
「エルクはママよりは弱いけれど、若い分だけ伸び代もあった。後はあの傲慢ささえ抜けて真面目に鍛錬すれば強くなれたと思うわ。マ マ よ り は 弱いけれど」
「ほぉ~」
お母さんも割と傲慢さが抜けてない……!
「けどそれでも強い事に変わりはない。それなのにそんな子を瞬殺したっていうのがちょっと引っ掛かって」
「え、ど、どう引っ掛かったの?」
「……ウッフフフフ、実際に見てみないと、ってねぇ?」
「「ま、まさか……!?」」
ちょ、ちょっとお!? お母さんがまた目を輝かせてる!?
しかもオー君に向けて殺意ビンビンだよぉ!?
「オー君さん?」
『オー君はすでに敬称につき〝さん〟付けは不要である』
「ならオー君、私と戦ってみないかしらぁ? 是非ともあなたの力を見せて頂きたいなぁってぇ!」
あああ! お母さんがもう戦闘モードに入ってるぅ!?
まずいよぉ!? これじゃあお父さんも止められない!
『拒否する』
「「「え?」」」
あれ? 変だ、オー君が敵意に反応しない?
いつもならガンッガンにまくしたてるのに。
『当機が貴殿と戦う事は不利益しか生まない。よって戦闘行為に意義はないと判断したものである』
「あ、あらぁ~~~? 意義が無いなんてどういう事かしら? もしかして私の事を恐れてるぅ?」
『否定。貴殿の能力では当機を破壊する事は万が一にも不可能であると断定』
「ほぉ~~~!? 言ってくれるじゃなあい!!!??」
あばばばば! やっぱりいつものオー君だ!
もうやめて! このままじゃこの一帯が更地になっちゃう!
『理由その一』
「――!?」
『当機が貴殿との戦闘を行った場合、強力な武力衝突は必至。その結果、周囲への影響は計り知れず、近隣住民および当該家族への壊滅的被害はまぬがれない』
「ううっ!?」
『それはマスターパムですら例外ではない。仮に当機が保護したとしても、マスターパムの精神的ストレスは極限に達し、自身の存在意義を失う事になると推測。それは当機や貴殿らにとって何の価値もない結果である』
……そうだね。そんな事になったら私、絶対後悔する。
二人を止められなかったって、色々と諦めてしまうかもしれない。
『理由その二。貴殿が当機に勝利する確率は〇.〇〇〇二%ほどであるが、万が一勝利した場合は当機が破壊される事となる。しかしそれはマスターパムの希望が破壊される事を意味するため、当機にも貴殿らにとってもその結果は望ましくない』
『よって当機は貴殿との戦いを断固として拒否するものである』
それってもしかして全部私のために……!?
あ、ちょっとキュンってしちゃったかも。
「あらやだカッコイイ、イケメンだわ! 食べちゃいたい!」
『当機は食用に適さない。また性的な意味でも当機に生殖機能は存在しない』
「もぉ真面目ねぇ!」
お母さんもいつの間にか殺意が消えちゃってる。
それもお父さんがやれやれって呆れちゃうくらいにあっさりと。
オー君はこうなると見越して説得してくれたのかな。
だとしたら感謝したい。私達の事を一番に考えてくれたんだって。
結果的に大事にならなくてよかった。
「――あ、やっぱりパムだ。おかえり、パム」
「えっ!?」
そう安心しきっていたら突然こんな声が聞こえた。
それで振り返ってみたら、オー君の影からひょっこりと覗く人の姿が。
「あっ! テレルお兄ちゃん!」
「この変なのがあったからもしかして、と思って来てみたら案の定だったよ」
ああ懐かしいなぁ、三年ぶりだぁ。
そのゆったりとした顔はあいかわらずだね、お兄ちゃん。
「パムお姉ちゃんだ! 久しぶりーっ!」
「お姉ちゃんっ! 聞いてあたしね、尻尾生えたの!」
「あ、リムにネムも久しぶり! あ、ほんとだお母さんみたい!」
今度は妹のリムとネムも出てきた。
こっちはずいぶん大きくなったなぁ。成長期がすごいって思えるよー。
「おねーちゃんだー! あそぼ!」
「あそぼー!」「きゃっきゃ!」「おねーちゃん?」
「ああっ、ミム、アムタ、シトラ、フォムも! もぉみんな勢ぞろいだぁ!」
あっはは、下の妹と弟達まで! こっちも大きくなってる!
なんだぁみんな遊びに行ってたんだね。
「おーねーたん!」
「あら~今度は……あれ? 誰?」
あれ、知らない子もいる。村の子かな? かわいい~。
「何言ってるんだ。末っ子の妹チェムだぞ」
「ほら、一昨年産んだ子よ」
「はあああ!?」
えええ待って!? いつの間に増えたの!?
私そんなの聞いてない!
「なら一報くらいくれたっていいじゃない!?」
「あれ、送ったはずなんだが」
「変ねぇ、まさかまた奴の仕業かしらぁ~ウフフフフ」
「ああーもう今度は止められないかもしれないっ!」
くっ、それならそうともっと早く知りたかった!
産まれたばかりのこの子を見てみたかったぁ!
「なおちなみにーママのお腹の中にももう次の子がいまーす!」
「ちょっとウソ!? まだ増えるの!?」
「おお、増やすぞぉ! あと十人はいける!」
「ああんっ、楽しみぃ~~~!」
えぇ……ちょっと信じられない。
欲望もここまで突き抜けられると才能だよね。
なんだろう、うちの親はウサギか何かかな?
『遺伝性生命体にとって子孫を残す事は極めて正しい行為である。特に、優れた種がその母数を増やす事はより効率的に生物的進化を促せるため有効。よって二人の行いは当該高位生命体へ非常に高い貢献をしていると断定する』
「オー君がめっちゃベタ褒めしてるし」
「あはは、面白いねこの人」
もうホント判定基準がわからない。
この二人は普段ほんと獣みたいに抱き合うのに。それって獣的じゃないの?
あーなんかもう考えるのが面倒になってきた。頭痛い。
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