第4話 現れた子は何言っているのかわかりません!

※本話においては物語の演出上、解析困難な言語が散見される。しかし当言語文章は物語に影響を及ぼさないため、基本的にはスルーを推奨する。留意されたし。




「え……もしかして、あれって……!?」


 正直、また召喚に失敗したかと思っていた。

 もうこれで終わりなのかと諦めてもいた。


 だけど今、私の前に何かが現れた。


 それは黒光りする鉄鎧のような外殻に覆われた何か。

 しかもよく見たらこれって――


「おっきい……三ヤームくらいはあるかも」


 ううん、もしかしたらそれ以上かもしれない。

 私の身長の二倍以上はある。

 ぷっくり丸くて頂点部も少し尖っていて、まるで花の球根みたいだけれど。


ウーンズ警告イビュプロ テミフそれ以上許可なく ゼウィズトパミッソ当機へと接近した場合 イヴィコセデホッサ、敵対行為とみなし アカイル ズフォウ実力を行使する


「えっ? えっ!? 待って待って、今の何語!? 授業でも聴いた事ない! 私知らないよぉそんな言語!」


 えええ!? この子の言葉なに!? わかんない!

 精霊語!? 神獣語!? ううん、どれとも違う!


 と、とにかく近くに行って落ち着かせなきゃ!


ジズファウーンズこれは最終警告であるチェゼーユォチリズ当機への敵対行動を アゲメッサシュレミ辞め、直ちに降伏せよ


 ひいっ!? なんか頂点付近からなんか丸いのがシュッて出てきたぁ!?

 しかもなんか赤い目みたいなのが光ってビュンビュンさせてるぅぅぅ!?!?


 怖ぁーーーい!!!


「ごごごめんなさい怒るのはわかりますぅ! いいいきなり変な所に連れて来られて困るのも当然ですよね!? でもお願いですぅ! 少しだけ話を、聞いてくださぁい!」


≪……ファメデコリティオ対象の原生高位生命体ゲプラミアリフォ敵対心減少を確認ラートワザトゥベ警戒値水準より下落キャナラート モデ警戒モードを解除


 あ、赤い光が収まった。わかってくれたのかな?

 よかった、思ったより悪い人じゃないみたい。


 だったら、今なら話を聞いてくれるかな?


「あ、あの、私パムって言います!」


クアダグォマテ原生高位生命体より ゲプラミアリフォ言語情報を取得ニザチャチアナライズ検索アパキブット該当なしプロマダグォヴバブレ近似言語ありトヴァ-ゼンティクォトヴァ型七三銀河 ダ-ヴォダロン第四惑星ダロン ゲプラミアリフォの原生生命体式 ヴェシミダグォブ言語に酷似ニザチャットアナライズ開始


 ええっとぉ? これ、私の話聞いてくれてる、のかな?

 そうだよね、きっと何もわからないもんね、聞いてくれてるよ!


「えっとですね、あなたは私に呼ばれてここに来て、その、従者になって欲しくて……。あ、変な事を言っているのはわかっているんです。でも、ですね……」


 こうなったらスキンシップしかない!

 きっと触れ合えばわかってくれる、はず……!

 勇気を出せ、手を伸ばせ私!


テコフェメス原生高位生命体 ゲプラミアリフォより接触を確認 クアゼネッテォマテ遺伝子情報を取得アパキブット該当なしプロマフォマバブレ近似情報ありクナ-トゥフィクォクナ型二五銀河 ダ-ティジアス第三惑星地球 ヴェシミ ダ-ゼンの第七世代アプラミアリフォ旧人類に酷似ジアプラミリフォなお当該生命体は ケシオハリディ、すでに絶滅を ンコメッテベジキ確認済みである


 手で触れたらまた言葉が長くなってるゥーーーーーー!!!!!

 わかんない! ホントわかんないからぁ! 先生たぁすけてぇい!!!!!


 あ、先生が首を横に振ってる……そ、そんなー!


『言語解析、完了』

「――えっ?」


 あれ?

 今この子、私達の言葉でしゃべった……よね?


『当機は宇宙統合管理政府所属、惑星間航行対応戦略級自立思考型拠星殲滅兵器、正式名称オーヴィウヴトTQH98-F33JL-0002151である』

「お、お、おおーっ!」

『当機は作戦遂行の命令を受諾、作戦領域へと航行を開始。しかし解析不能の発光現象に遭遇。また同時に正体不明の音声を確認、僚機反応をロスト。直後、本座標に到達した。状況確認のため貴殿の説明を請う』


 んっんーーー……???

 言葉はわかる、わかるんだけど!

 でもそれでも何言ってるのかさっぱりわかんないんだけどー?????


 おかげで最後の所しか聞き取れない……ッ!


 えっと要するに、自分がなぜ飛ばされたのかわからないって事でいいのかな?


「ああえっとですね、私があなたを召喚したんです!」

『召喚とは? 転送ではないか?』

「え? あ、まぁそんな感じです!」

『理解不能』

「えぇえーっ!?」

『現在、亜光速飛行中の物体に対し他的転送を行う技術は確立されていない。また当該領域において転送を実行可能な装置は確認できない。よって貴殿の発言を虚偽と認定』

「ひ、ひどい! 本当の事なのにぃ!!!」


 たしかに召喚の仕組みは私にはわからないけどさぁ!

 だけど本当に召喚したのは間違い無いんだからーっ!


 ね、先生? そうだよね?

 お願いだから首を横に振らないでぇ!


『では貴殿に当現象の詳細を問う』

「あ、えっと、魔法の力でビビーッて」

『魔法とは解析不能な技術を示す抽象的代名詞である。よって論理的解説とはならない』

「うえぇ……」

『なお当機の情報によれば現在解析不能な技術・現象は存在しない。以上から貴殿では当機への有用的な情報の開示は不可能と判断』


 おっふ、役立たず認定された……!

 っていうか、君だって魔法の事知らないのにどうしてそこまで自信満々なのよぉ!?


『以上、状況確認を終了――』

「あ、待って!」


 だけどこのまま話を終わらせる訳にはいかない。


 この人が変なのはわかる。

 でもだからって諦めるのだけは絶対に嫌。


 こんなのでも私が召喚して、来てくれたパートナーになりうる子のはずなんだ!


 従者召喚っていうのはそんなものだって教わった。

 私の運命の力を消費してやってきた、なにかしらの因果を持つ子なんだから。


『なにか?』

「あのですね、だったら私と友達になってくれませんか?」

『その質問の意味を問う』

「えっと、たしかに私はあなたの言う通り知識も経験も少なくて教えられないかもしれない。けど、これから色んな所に行って、色んな事をしたいって思っています。だから――」


「どうか私と一緒に来てほしいんです。そうすればもしかしたらあなたが欲しがる情報が手に入るかもしれません!」


 可能性を信じ、訴える。今の私にできる事はこれくらいだ。


 もしかしたら否定されるかもしれない。馬鹿にされるかもしれない。でも、それでもいい。

 なにかにすがるなら、私はこの僅かな可能性にすがりたいんだ!


『肯定』


 ……え?

 今この子、私の言った事を認めてくれた?


『当機は現在オペレーターと交信途絶状態であり作戦領域からも離脱中。よって当機は所在不明機扱いとなる。そのため機密保持により各種機能が制限され、当機単体での情報収集は極めて困難である』

「う、うん」

『ならば結論として、貴殿の提案通りオペレーター登録を行う事が最高効率であると判断』


 お、おおー!?

 なんかウダウダ言ってたけど、実は好意的だったって事!?


『オペレーター登録のため、貴殿の姓名、所属、認識番号を提示されたし』

「あっはい! 私はパム=ウィンストリンです! 所属はええと、ザーツェベルク聖廟国立リトナード召喚騎士訓練学校。に、認識番号は学籍番号でいいのかな? えっとOMG-666です」

『……所属地名、認識番号の形式は規定に付随しないが、非常事態につき当制限を解除』

「それって、まさかっ!」


『よってこれより当機は貴殿の指揮下に入る。マスターパム、命令を求む』


 そんな彼の一言がきっかけで、私の左手に光が集まる。

 すると手の甲に印紋が浮かび上がってきた!


 こ、これってほ、本当に!?

 夢じゃないよね!? 信じていいよね!?


「やった……やったやったぁ! うおーーーーーーーーーっっっ!!!!!」


 思わず変な声出しちゃった! 両腕も振り上げちゃったりして!

 でもそれくらい嬉しい! すごい! 信じられない!


 そうっ、これは間違いなく契約の証。

 私と彼はこの時、間違いなく従者契約を結ぶ事ができたんだ!


 つまり私は、やっと召喚騎士になる事ができる……!

 子どもの頃からずっと夢見ていた理想が、やっと現実に!

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