第29話 昔のトラウマは壮絶です
まさか幼馴染のナディン君までお見合いにノミネートされるなんて。
たしかに小さい頃に「結婚しよー」だなんて話もした事はあるけれど。
今さらって話だけどなんだろうなー。
もう真の意味で大人になったから、かな?
「ナディン君懐かしいわよねぇ。急に向こうから接触を断たれたけれど。なんでだったかしら」
「ははは、まぁ世間にも色々あるからなぁ。しがらみとか考えたら関係を断つ事もあるさぁ」
「そうだねーそうだよねー」
「なにパムちゃん、なんか顔が怖いわ」
そりゃ怒りもするよ。二人とも何も覚えてないみたいだし。
こっちはもうハッキリと思い出しちゃったんだから。
「その話はパスで」
「やはり他の三人の魅力があり過ぎてインパクトに欠けるか」
「いやそんなんじゃないです。全部あなた達のせいです」
「「なんで!?」」
そう、ナディン君は何も悪くないの。
接触を断たれたのも、しがらみを持たれたのも、すべてはうちの親がダメ過ぎたせいなのよ。
――そうそれは私がまだ六歳の頃の事だったわ。
当時の私は純真無垢だった。両親から学んだ事を素直に受け止めるくらいに。
だからこそあんな凄惨な事件をも引き起こしてしまったのだ。
それは唐突に、ナディン君の家に遊びに行った時に起こった。
当時の彼の両親とはすでに仲が良くて、こう言われたのを今でも覚えている。
〝パムちゃんみたいな娘が私も欲しいわぁ〟なんて。
だから私は純粋にこう答えたのだ。
〝だったらおばさんがうちのパパとセックスして子ども産むといいよ〟と。
あとこうも言った。
〝あとね、おじさんがうちのママともセックスして産ませるといいかも〟と。
そのせいでナディン君の家は出禁になった。以降ナディン君とも会っていない。
でもその時の私には原因なんてわからなくて、ただ悲しんでばかりで。
だけどすぐ忘れて六年の月日が流れ、十二歳になって、そして気付いたのだ。
〝あれ、うちの家って非常識なのでは……?〟と。
きっかけはとある事情で一ヵ月のホームステイをした時だった。
そこで私は街であるロジックに気付く事になる。
誰も性的な話をしていない!
むしろ表向きに話そうとする事を避けている節がある!
そう気付いた私は真実を調べ、そしてやっと知ったのである。
自分の貞操概念が世間と大きく乖離していたという恐るべき事実を!
さらにはナディン君の家でとんでもない事を言い放っていたという過ちをも!
その後、私は実家に帰ったら即座に両親を縛って屋内に吊った。そして言及したのだ。〝お前達は間違っている!〟と。
ちなみに縛られた両親は悦んでいた。エロを控えるためにと亀甲縛りの縛り目を減らしたというのに。
しかしその事がきっかけで、私は常に人の目を気にするようになってしまったのだ。自分の行いが恥ずかしくないか怖くて。
これこそが対人恐怖症となった原因なのである。
「今さらナディン君がお見合い希望してくるとは思わなかったけど、もう遅いのよ。私はもう汚れてしまったの……」
「元気出せよパム」
「むしろお前達が記憶を思い出せ。そしてナディン君に誠心誠意の謝罪をして来い」
「「ヒッ!?」」
ああ、当時の事を思い出したら憎悪も溢れてきた。
あのホームステイがなければ私もママみたいになっていたかと思うとゾッとする。
私は絶対に二人みたいにはならない!
もし結婚するなら誠実で素敵な男性とがいい!
それで致すのは最高でも一日一回とする!
アブノーマルプレイは人の迷惑にならない程度まで!
子どもは五人くらいでいい!
私はそういう一般常識の中で生きたいの。
そんな普通の条件を満たしてくれるような人と幸せになりたいの。
そのために私は今でも処女を守り続けているのだから!!!!!
「ま、まぁナディン君の事はわかった。だが他の人の所にはちゃんと会いに行って断るか相談するかをはっきり伝えるんだぞ」
「うん、わかった」
「彼らももしかしたら待っているかもしれないし、もう別の縁談を決めているかもしれないからな。まずは誠意を見せて差し上げなさい」
ま、結婚するかなんて今はまだわからない。
だから今はこれからの事を考えて、あえて言われた通りにしようと思う。
せっかく縁談まで用意してくれていたのだから少しは報いなきゃ。
「ありがとうね、こんなに縁談を温めててくれて」
「おう。できる事なら落ち着いてくれればと思っているよ、親としてな」
「なにも召喚騎士にこだわる必要はないものねぇ」
「うん、パムはパムらしく生きてくれればそれでいいと思う」
みんな幸せを願ってくれている。それがわかっただけでも嬉しい。
だからこそ私がやれる事をやりたいと思っているんだ。
それというのも、私はもうこの時決めていたから。
いわゆる本命と呼ばれる相手を、向かうべき場所を。
――それは第二候補の地、城嶺ファルドハイト王国。
でも決して誇空騎士団の副団長さんに会うためじゃないし、誇空騎士団に滑り込ませてもらうためでもない。
実は彼の写真を見た時、気付いてしまった事があったのだ。
それは彼の写真の片隅に映っていたもう一人の男性、青いワイバーンを駆るツンツン頭のその姿に見覚えがあったから。
だから私は翌日すぐに家を発った。
皇子も商業貴族さんも良い返事を待っていたらしいけどさっくり断りを入れ、その足ですぐファルドハイトへ。
少しでも早くあの恩人に会いたい。
この時、私はただそれだけを考えてオー君と共に空を突き抜けたのである。
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