闇に嗤う乙女
* * *
深い暗闇の中で、ひとりの少女が水晶を眺めている。
地上に送り込んだ『人形』のひとつが破損したのを感じ取り、現場を水晶で映し出しているのだ。
過去視を使い、何が起きたのか確認をする。
アレは我ながら緻密に設計した自信作だ。
そう簡単に人間ごときに滅せられるはずがないのだが。
「っ!?」
少女の目が見開かれる。
黒髪金眼の少年が黒い闇を生み出し、モンスターの体を崩壊させた。
その瞬間を見て、少女は。
「……あはっ。あはははは!」
歓喜の声を上げた。
「なんて偶然なの! まさか、まさか……お父様の血を引く子がまだいたなんて!」
少女は踊るように、その場でクルクルと回る。
嬉しくてしょうがないとばかりに。
「見間違えるはずがない! あの魔力は、間違いなくお父様と同じもの! 人間の血が半分混じっていながら、あれほどの規模の闇を生み出すなんて……なんて素晴らしい才能の持ち主なの!?」
きゃははは、と少女は無邪気に笑う。
感情に合わせるように少女の体から黒いものが生じ、周囲の物がヒビ割れて破壊されていく。
それは……ローエンスが放った黒い闇と同じものだった。
「ご機嫌ですね、姫様。何か良いことでもありましたか?」
執事服を身に纏った男が、少女に語りかける。
周囲を蹂躙する黒い塊を巧みに避けながら、にこやかに笑顔を向ける。
「良いこと……ええ、良いことよ! だって……私に『弟』がいたんですもの!」
長い黒髪をたなびかせ、金色の瞳を光らせながら、少女は満面の笑みを浮かべた。
「嬉しい! 嬉しいわ! 私に血を分けた姉弟がいたなんて! ああっ! 会いたい! 早く会いたい! 迎えに行かなきゃ! 待っていて? すぐにお姉ちゃんが迎えに行ってあげるからね!」
腕を大きく広げ、少女は天を見上げた。
少女の額には、二本の角が生えていた。
頭部の角──それは即ち、少女が『魔人』であることを意味していた。
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