え? 私の弟子、強すぎ?
* * *
魔女として森の館で、のんびりと暮らしている私だけれど、とうぜん資金が必要になることもある。
そういうときは調合した魔法薬を売ったり、街にあるギルドで依頼を受けて報酬を貰ったりなどしている。
魔法薬の素材にはモンスターの体の一部も含まれるから、よく狩りに向かうし、ギルドの依頼も大抵は集落を困らせるモンスター退治がメインだ。
ローエンスは前々から、そんな私のモンスター退治に同行したがっていたみたい。
確かに実戦から学べることは多いし、急激な成長にも繋がるけど……。
ん~、でもなぁ~。
基本的な攻撃魔法は初期の頃に教えたけど、その後はご存じの通り私の快感を満たすためのエッチな修行ばかりしていたものだから、実戦に使える魔法が少ないのよね。
正直モンスター退治に同行させるのは心配というか……まあ、私が全面的に悪いんですけどね!
とはいえ、了承をしてしまった手前、ローエンスの気持ちを無下にするわけにもいかないわ。
しょうがない。今回は魔法薬の素材集めとして、森のモンスターを狩りにいくとしましょう。
実際、良い経験になるのは事実だわ。
とりあえず、私はサポートに徹して、ローエンスの様子を見守りましょう。
……まあ、きっと苦戦して最終的に私が倒すことになって、ローエンスは自信をなくすかもしれないけれど、その挫折もきっと必要な経験だわ。
安心して、ローエンス? 何かあっても私があなたを守ってあげるから。
いまは持てる力を存分にふるいなさい?
……そして! もしうまくいかなくても、私が全力で慰めてあげるからね!?
それはもう、じっくりと! ねっとりと! じゅっぽりと!
「……っ! ローエンス、杖を構えなさい。何か来るわ」
「っ!?」
私たちの眼前に、蜘蛛型のモンスターが現れる。
全身が金属で出来た、メタルスパイダー。
吐きだす糸も金属で、あらゆるものを拘束し、串刺しにする強敵。
ハッキリ言って、初心者が相手にすべきモンスターではないわ。
メタルスパイダーは私たちを見るなり、激しく威嚇してくる。
いつもよりも気が立ってるわね。きっと、ローエンスの魔力に反応して警戒しているんだわ。
……ここは、私が倒して、もっと他に弱いモンスターを見繕うべきかしら。
しかし。
「師匠……僕、やります。このモンスターと、戦わせてください!」
どうやら私の弟子は、ヤル気満々のようね。
仕方ないわ。もしものときは私がすぐに助力すればいい。
いまは、この子のやりたいようにさせてあげよう。
「……いいわ。やってごらんなさいローエンス!」
「はい! 師匠!」
* * *
全身が銀色の鉄で構成された巨大な蜘蛛が、僕を獲物として睨み付けている。
怖い。いまにも足が崩れそうだ!
でも……やるしかないんだ!
師匠に一人前と認めてもらうために、僕はコイツを倒す!
「
僕は初級の火の攻撃魔法を杖から放つ。
金属の体なら、効くのは火のはず!
火球は見事にメタルスパイダーに直撃した!
しかし……。
「き、効いてない!」
よほど丈夫な金属なのか、メタルスパイダーの体には火傷ひとつなかった。
「それなら……
今度は雷の矢を放つ。
金属は雷をよく通す! これなら全身にダメージが通るはず……。
「なっ!?」
ダ、ダメだ! これも効いてない!
やっぱり、初級の攻撃魔法じゃ効果がないのか!?
くっ! せめて中級の攻撃魔法が使えていれば!
師匠はなぜか、初級の攻撃魔法を教え終えると、その後はなかなか上位攻撃魔法を教えてくれなかった。
教わったのはどれもこれも、いったいどんな場面に役立つのかわからない魔法ばかりだ。
きっと師匠のことだから、何か深い意味があるのだと信じたいけど……でも、このままじゃ勝てない! いったい、どうすれば!
「っ!? ローエンス! 危ない!」
「え?」
師匠の叫び。
いつのまにか、メタルスパイダーは口から蜘蛛の糸を吐き出していた。
粘液とは異なる、鉄製の糸だ。
直撃を受ければ、串刺し。
死ぬ。
死んでしまう。
こんなところで、僕は……。
「う、うわああああ!!」
咄嗟に僕は叫んだ。
そして、ほぼ衝動的に呪文を唱えていた。
いつも繰り返し、唱えていた呪文を。
「
瞬間、蜘蛛の糸が、方向を変える。
僕のほうではなく、糸を吐き出した本体であるメタルスパイダーへと。
「え?」
とつぜんのことに、僕は呆然とする。
いま、僕は何を?
方向を変えた鉄の糸は、メタルスパイダーに絡みつき、動きを封じている。
これを、僕が?
「……
試しに念力で、蜘蛛の足を狙う。
すると、呆気ないほどに、まるで枯れ枝のようにメタルスパイダーの足が折れた。
おぞましい悲鳴がモンスターから上がる。
……師匠との修行では、スカート捲りばかりに使われていた念力魔法。
いったい、こんな修行、何の役に立つんだと思っていたけれど……。
冷静に考えてみれば、魔力だけで物を動かすことが、どれだけとんでもないことか。
実際、こうして敵の体にダメージを与えている。
再び念力魔法で蜘蛛の足を折る。
……脆い。師匠の念力魔法に比べたら。
あの鉄壁のスカートに比べたら、こんなの、あまりにも脆い!
メタルスパイダーの足を、一本残らず念力魔法でへし折った。
そこで、僕は気づく。
もしかしたら、いままで修得してきた魔法も……。
「──
瞳に魔力を通す。
見える。見えてくる。敵の体の内部が透き通って見える。
いままでは師匠の服を透かして見ることにしか使われなかった魔法だが……これを使えば、相手の急所である心臓を見つけることができる!
「……あった」
心臓の位置に、僕は手をかざす。
「──
離れた物体を手元に引き寄せる魔法。
師匠の下着を盗む修行で身につけた魔法だ。
『この魔法は、相手の身につけているものを奪い取れれば一人前よ! さあ! 見事に私の脱ぎたてのパンツを奪い取ってみなさい!』
パンツなんて奪い取ってどうするんだ、とそのときは思っていたが……なるほど、あの修行にも、ちゃんと意味があったのだ。
「──心臓を寄こせ」
ずしり、と目前に巨大な臓器が落ちる。
ドクンドクンと脈打ちながら血を滴らせるモノ……メタルスパイダーの心臓だ。
「──
無数の水の鞭を生成する。
師匠がやたらと、この呪文を使ってこいと言うので、すっかりお得意になった呪文だ。
『あぁん♡ 透けちゃう♡ 服が水で濡れて透けちゃう~ん♡ あん♡ 止めちゃダメ~♡ 水魔法は属性魔法の中でも複雑な操作が必要とされるのよ♡ だからもっと鞭を増やして、複雑な動きをさせなさ~い♡ いや~ん♡』
師匠の体を散々といじってきた水の鞭。
おかげで、複雑な動きをコントロールすることができる。
心臓の周りに水の鞭を巻き付かせ、あたかも水槽の中に入ったような状態になる。
そのまま、僕は鞭の水圧を上げる。
「──潰れろ」
鈍い音を立てて、心臓が破裂した。
水の鞭が瞬く間に赤黒い色に染まる。
ズシン、とメタルスパイダーが倒れる。
心臓を奪われ、さらに潰されたことで、完全に活動を停止した。
……やった。
やったぞ!
僕が、僕がモンスターを倒した!
「……師匠! 僕、やりました!」
喜びのあまり、後方で見守っていた師匠に抱きつく。
嬉しかった。
モンスターを倒せたことだけじゃない。
師匠との修行は、すべて意味があったのだ!
「ありがとうございます師匠! やっとわかりました! 師匠の教えたいことが! 上級の攻撃魔法だけに頼っちゃいけない! 限られた魔法で創意工夫をする! 師匠は、僕にそう教えたかったのですね!?」
「……え? ……あ、うん。そうだよ」
師匠は、うんうんと何度も頷いた。
* * *
……え? 何これ?
何で私の弟子、いきなりメタルスパイダーに対して無双しちゃってんの?
え? 怖。
超怖いんだけど……。
私の弟子、強すぎない?
「ありがとうございます師匠! やっとわかりました! 師匠の教えたいことが! 上級の攻撃魔法だけに頼っちゃいけない! 限られた魔法で創意工夫をする! 師匠は、僕にそう教えたかったのですね!?」
「……え? ……あ、うん。そうだよ」
まさか私の欲求を満たすためだけの時間だった、なんて死んでも言えないわねコレ。
いや~、この子の才能は凄まじいとは思っていたけれど……ヤバくない?
あんなくだらない修行で覚えた魔法だけで、この子こんなに戦えちゃったわよ。
ちょっとこれは私にも予想外だったわ。
やっべぇ。私の愛弟子やっべぇ。
「よ~し! この調子で僕もっと強くなるぞ~! 師匠! これからもご指導お願いします! どんな修行でも、喜んで受けさせていただきます!」
「……ん? いまどんな修行でもって言った?」
と、ということは、もっと過激でエッチな修行も積極的にやるってこと!?
……よっしゃああああああ!!!
じゃあ、もっとローエンスたんとエッチな修行しちゃおうっと♡
ローエンスもそれで強く成長できるんだから、一石二鳥よね!
任せてローエンス!
私のエッチな修行で、あなたをどんどん強くさせてア・ゲ・ル♡
愛する弟子との、めくるめく修行の日々に思いを馳せて、私は胸と股間を熱くさせた。
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