第16話 図書室

 覗くと洋書の様な表紙の古い本が落ちていた。

 拾って適当に開いたページを見ると、ナナフシが載っている…


 ナナフシは昆虫だった。


 うん。


 念のため…

 目次のページを開いてフィナフシを探してみる…


 無かった。


 うん。


 図鑑を閉じてそっと棚に戻した。


 それにしても…

 一体全体、何棚有るのかと手前から数えてみるけれど、途中で嫌になった。

 ずらっと並んだ本棚のずっと先、図書室の壁の角に顔を埋めるようにボン子がポコッとはまっている。

 何をやっているのだろう…

 ボン子の後頭部を見ていたら、丁度こちらを向いた。


 まじあったかもー


 え!?

 早い!

 こんなに簡単に見つかるなんて!

 さすがボン子!

 走ってボン子の所へ急ぐ。

 やや筋肉痛ぎみではあるけれど、七不思議の本が早く見たくて、思わず駆け出していた。


「ハァーハァー…」

 イテテテテ


「ハァーハァー…」

 結構遠い。


「ハァーハァー…」

 めちゃくちゃ遠い。


「ハァーハァー…」

 ……


 立ち止まって後ろを向くと、入口の受付カウンターがすぐそこにあった。

 横の本棚を見ると、ナナフシの図鑑が有る。


「ハァーハァ?…」


「ゲリちぃ!」

「わっ!」


 ボン子がすぐ側に来ていた。


「ねえてかまじあったかもー!チョーカド!マジカド!来て来てー!」


 ボン子の後について走って行く。

 けれど…

 やっぱり…


「ハァーハァー…」

「ハァ!?ハァハァてかまじなんで!?ハァハァハァカハッハァ…」


 自分達はまだ、ナナフシの本棚の横に居る。


「ハァー…ボンちぃ向こうまでどうやって行ったの?どうやってこっちに来たの?」

「ハァハえ?…普通に…歩いてーみたいなー…」


 普通に歩いて行ってみる…

 けれど…

 やっぱり…


 自分達はまだ、ナナフシの本棚の横に居る。


「ボンちぃ…本持って来てくれればよかったのに…」

「てかまじ奥に行っちゃってー!ゲリチの指なら細いから、ぎゃくに取れる系かなーみたいなー!」


 ボン子の話では、壁のチョーカドマジカドに本が入っているということだった。

 ササクラ達と言っている事は同じだ。


 壁に入っている…

 近くの壁の角に近づいて見ると、1cmも無い様な隙間があって、薄い物が入っている!


「ねえ!ボンチ!これそうじゃない!?」


「あっ!まじあるじゃん!ウェーイ!!!」

「やったー!」


 本に指を伸ばした…


「あっ…」

「あー…」


 奥に行ってしまった…


 カリカリカリカリ…


 いくらほじっても指に当たらない。


「んなーーー!何か細い物ない!?」


「あ!あ!てかあそこ!ペンあるし!ペンペンペン!」


 カウンターに入って、ペンを持ったボン子がこちらを見たまま固まった。


「ん…?どうした…?」


 動かなくなってしまった。

 魂の抜けた様なボン子を見て、不安になる。


「えっ?えっ?何…どうした…大丈夫…え…ウソ…死んでる…?ボン子ー!!!」

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