第5話 居る
首を伸ばして思わず立ち上がる。
居ない…
誰も居ない…
あ?
ああ?
ああああああ…?
目を見開きキョロキョロしていると、後ろの出入口にボン子の背中が半分見えた。
あああ
ああ
なんだよも~
悪ふざけやめてよ~
G4ウィズミチは突然帰った。
でも、目を閉じていたのは、ほんの一瞬の様に思うのだけれど…
どうだっただろうか…
きっとG3ウィズミチなら、早業でサッと移動出来たのだろう。
ボン子は…
見切れていた。
さすがボン子。
悪戯はボン子のせいで失敗に終わった。
電車の時間が来たので、自分も帰る事にした。
***
次の朝。
寝坊。
「ヤバい~!起こしてよ~!」
そう言って、リビングへ行くと…
誰も居なかった…
忘れていた。
昨日から、両親は泊まりで遠い親戚の家に行っている。
駅までギュンギュンに走って、いつもの電車の次の電車にギリギリ乗れた…
体の右半分だけ乗れた…
非常口のマークの様な形で、電車のドアに挟まった。
「痛ぁ~い!」
ドアはどんどん閉まってくる。
ヤバいーまじでっ!!
ギューッとこのまま出発するのだろうかと、焦っているとプシュッと開いた。
痛いと叫んで、注目を集めまくった車内の視線に刺されながら、ギュンギュンに走って来た結果の息を止められない。
「ハァーハァーグハァーハァー…」
満員の電車内に響きわたる自分の息と、ゆっくりと動き出した電車の走行音のハーモニーに、アナウンスが重なる。
「えぇー駆け込み乗車はぁー大変危険ですのでぇーお止めくださいぃー…」
真っ赤な顔の真ん中を汗が流れた。
「ハァー…ハァー…」
恥は続くよどこまでも…
ゴトンゴトン…
クタクタになって教室に辿り着く。
遅刻は免れた。
自分の席でぐったりしていると、何か違和感を感じた。
アッ!?
教室間違えてる!!?
全くなんという1日の始まり…
慌てて廊下へ出ると、G4がやって来た。
「おはよーゲリちゃーん!」
「ゲーちゃんおはよー!」
「ゲリピー!おはっ!」
「おはー」
4人が教室へ入って行く。
やっぱり…
どう考えても自分の教室はここだ…
G4に続いて入っていくと、4人は各々自分の席に普通に座っていつも通りだ。
自分も座るが落ち着かない。
どうしよう…
今日は、何か特別な行事がある日だったか…
思い出せない…
自分はどうしてしまったのだろう…
記憶喪失になってしまったのかも知れない…
両親が出掛けているのも忘れていたし…
電車のドアに挟まると、記憶喪失になるのかも知れない…
挟まった後の電車内は恥ずかし過ぎた…
恥ずかし過ぎる記憶を消すために、脳内のナナフシが作動したのかも知れない…
不安が体を駆け巡り全身がザワザワする。
足がガクガクする。
足がガクガクするのは駅までギュンギュンに走ったせいかも知れない。
お腹が痛い。
トイレに行きたいけれど、朝のホームルームが始まってしまう。
「グッモーニンエブリワン!」
ああ…
先生も…
誰なのだろう…
知らない…
冷や汗が出る…
クラスメイト達はどこへ行ってしまったのだろう…
この人達は、どこから来たのだろう…
見たこともない知らない人達が…
教室に居る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます