第6話 聞きたい

 ホームルームが普通に終わって、トイレへ駆け込む。

 うううううう…

 ナニコレナニコレナニコレ…

 あの人達…

 誰なんだろう…

 他のクラスの人でもないし…

 なんだか変な感じがした…

 この感じは何なのか、上手く言えない…

 結局自分がおかしいのか…

 G4は普通にしていたけれど…

 なんで普通でいられるのか…

 細かい事はスルーして…

 これは細かい事なのだろうか…

 なぜ、4人だけいるのか…

 ナナフシのせいなのか…

 あああ…

 分からない…

 考えれば考えるほど、お腹が痛い。

 不安なまま教室へ戻ると、G4の声が聞こえる。


「てか…別人だよね…?」


 ハッ!


「まじ整形だしー!」


 整形…


「今日のバーバラ目が変だったー!てかデカくなってたしー!」

「教室入って来てソッコー分かったしー!」

「てかいじってるしまじでー!」


 今日のバーバラ…

 担任の馬場先生は、今日は教室に来ていない。

 ホームルームは、全然知らない人だった。

 目が違うどころか、全部違う…

 整形…

 というか別人だよね?

 バーバラじゃなかった。

 みんな、あの人がバーバラに見えているのだろうか…

 お腹が痛い。


 チャイムが鳴って、謎のまま授業が始まる。

 最初の授業は、ダニが来るはず…


「はい席着きなさいよー」


 あー…

 ダニよ…

 おまえもか…

 知らない人だ。

 ダニじゃない。

 しかし、ダニじゃないのは、これはこれで良いかと思う。

 寧ろダニが居なくて嬉しい。

 だけどやっぱり、何かが変な感じなのだ。

 突然、何の説明もなく、知らない人達に囲まれて、知らない先生が普通に授業を進めているのだから、変に決まっているのだけれど…

 何か引っ掛かってすっきりしない。

 周りを改めて見てみると、本当にG4以外は全員初めて見る顔で怖くなってくる。

 心細さMAXで腹痛もMAXだ。


 ギュルギュルギュルギュル…


 お腹が鳴って小さな笑いが起きた。

 この音は自分ではない。

 ボン子だ。

 斜め前の席のボン子を見ると、なんとなく顔色が悪く見えた。

 イヤホンをしている。

 授業中に、何を聞いているのだろうか…

 変わったイヤホンだと思って見ていると、耳から外して口に入れた。


 アッ!


 イヤホン食べてる…

 咀嚼しながらスーッと立ち上がって、スーッと教室から出ていった。


 アア!?


 先を越された。

 ボン子より自分の方が、絶対に切羽詰まっている。

 冷や汗が止まらない…

 自分もボン子の様にスーッと立ち上がると、先生らしき知らない人と目が合ってしまった。


「あ…あの…お腹が痛くて…」

「お…行きなさい」


 ソロソロ慎重に歩く。

 ざわつく教室を後に廊下へ出ると、端っこにボン子が踞っている。


「ボンちゃん…だいじょぶ?…ごめんっ…悪いけど…お先ぃ…南無三…」


 すり足で行く。

 気を抜いたら負けだ。

 お先と言いつつ、なかなかボン子付近から進んでいかない。

 振動を最小限に、騙し騙しゆっくり急ぐ。


「ゲリリン…なんかさぁ」

「ボンちゃん…ごめっ…マジヤバいのよっ…うー…」

「みんなさぁ…違う顔でさぁ」

「んーっ…イタイタイタイタイ…フーフーーーッ…」

「まじワケわかんないんだけどぉー…」

「ああ…ああ…あああ…あっ…」

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