第34話 とさ

「えりー?今日、出掛けるんじゃなかったのー?」


 ハッ

 今何時!?

 ヤバいー!!!




 駅までギュンギュンに走って行く。






 駅までギュンギュンに走って、電車にギリギリ乗れた…


 体の右半分だけ乗れた…


 非常口のマークの様な形で、電車のドアに挟まった。


「痛ぁ~い!」


 ドアはどんどん閉まってくる。


 ヤバいーまじで!


 ギューッとこのまま出発するのだろうかと、焦っているとプシュッと開いた。


 痛いと叫んで、注目を集めまくった車内の視線に刺されながら、ギュンギュンに走って来た結果の息を止められない。


「ハァーハァーグハァーハァー…」


 電車内に響きわたる自分の息と、ゆっくりと動き出した電車の走行音のハーモニーに、アナウンスが重なる。


「えぇー駆け込み乗車はぁー大変危険ですのでぇーお止めくださいぃー…」


 真っ赤な顔の真ん中を汗が流れた。


「ハァー…ハァー…」


 恥は続くよどこまでも…


 ゴトンゴトン…




 クタクタになって辿り着く。


「ゲリピー!こっちー!」


 ひときわ目立つ4人が居た。


「え?てかゲリピー顔真っ赤なんだけどー!」

「電車ギリギリで…走ったから…あと…名前…」

「てかゲリチ駆け込んでドアに挟まった系みたいなー!?」

「……」

「その顔はぎゃくに挟まってるー!」


 ギャハギャハギャルギャハ…


「ハハハヤバー!ドアサンドー!」

「てかフルーツサンド食べたーい!」

「めっちゃいい!まじ食べよー!フルーツサンド!」




「お待たせしました」


 先に注文していた、ボンコの大好きな、フルーツたっぷり巨大パフェが来た。

 ついでにフルーツサンドと、自分のも一緒に頼む。


「てかその上に乗ってるの何?!いつも無いよね!?」

「まじ枝じゃね!?」

「ぎゃくに昆虫系みたいな!?」

「違うしー!てか普通にバレリーナだしー!」


 ボンコのパフェには、お店のキャラクターの、スケート少女の形をしたチョコレートが乗っていた。


「ほら!めっちゃかわいー!ウチにピッタリー!」


 笑顔満タンでバレリーナの様なポーズをとっている。




「お待たせー!チョコサービスしといたよ!」


 G4レベルのギャル店員がスイーツを運んで来た。


「レノンまじサンキュー!」


 G4は店員さんと知り合いみたいだった。


 各々のスイーツに各々のチョコレートが乗っていて、ササクラにはパンダが、フジミヤには淡い紫の花が散りばめられている。


「ミューミューの顔似てなーい!?」

「え!?そお!?」

「シヨヨのなんかおしゃれじゃね?」

「イエーイ!食べていいよ!」

「ゲリピーのウサギ?かわいー!!!」

「てかホワイトチョコ?シラウさんだから!?」

「そっかー!ゲリピー白いウサギだー!」

「え!?てかゲリチってシラウさんなの!?ウチまじシライさんだと思ってたー!ウケるー!」

「えウソでしよ!?」

「まじありえんしー!ハハハ」

「ウケるー!てかぎゃくにヤバいんだけど!」


「ねえ…アオイちゃんのって…それ…なに?」


「これが目にはいらぬかー!!!みたいなー!!!」


 ギャハギャハギャルギャハ…


「水戸黄門めっちゃウケるー!!!すごいじゃん!」

「てかレノンまじヤバいってー!」

「まじレノンぎゃくにサイコー!!!」


 レノン…


「てかアオイちゃんのチョコ大きくない?」

「たしかにー!!!」

「ウチの枝と交換してー!」


 枝…


「てか欲しいならあげるけど!?」

「えアーシも欲しい!」

「じゃあ☆葵の御紋☆争奪戦!じゃんけん大会ー!!!」

「フーーー!!!」

「イエーーーイ!!!」


「最初はグー!!!じゃんけんぽんっ!!!あいこでしょっ!!!あいこでしょっ!!!あいこでしょっ!!!……しょっ!!!…しょっ!!!…しょっ!!!…しょっ!!!…」




「ッシャアァァァァァァァァ!!!!! 」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

教室四隅同時走 メメ @mementcomori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画