第31話 キーホルダー

 コクンコクンコクンコクン…


 やぐらが下がって地上に降りた。


 盆踊り大会が終わった。


 暗くて雰囲気が違うので気付かなかったけれど、よく見ると今居る所は運動場だった。


 夜店に夢中になっている楽しそうなボンコに駆け寄って、ミチの行方を聞いたけれど分からないみたいだった。


 ミチはそのまんま人だ。


 なんでそのまんまなのか…

 何故、薄い本の後ろに室桝の印鑑が押してあるのか…

 音楽室では、なんて言っていたのか…

 角本2は何処に有るのか…

 何が書いてあるのか…

 どうしたら元の世界に戻る事が出来るのか…

 聞きたい事がたくさんあった。


 名残惜しそうにリンゴ飴を噛るボンコを引っ張って、ミチの歩いて行った方へ急ぐ。


 ワラワルで初めての夜。

 提灯の灯りから離れると、暗い学校は不気味だった。


 ミチの姿は何処にも見当たらなかったけれど、教科書の隠してある教室に行けば、何故か会える様な気がしていた。


 校舎の横にはり付いた、3階へ続く非常階段の入口には、錆びた柵がある。

 鍵がかかっているけれど、高さはあまりないので自分でも乗り越えることが出来た。


「ゲリチー!てかこれちょっと持ってー!」


 リンゴ飴が刺さっていた棒とチョコバナナ2本を渡された。


 いつの間に…


 ボンコは簡単に柵を越えて、暗い階段を2人で上って行く。


 予想はしていたけれど、ドアには鍵がかかっていた。

 仕方なく階段を降りていくと、柵の前でG3がキラキラとこちらを見ている。


「ウェーイ!不審者はっけーん!」

「まじ不法侵入ー!逮捕逮捕ー!」

「てかもう牢屋入ってるしー!」

「うけるー!!!まじ牢屋なんだけどー!!!」

「てかズーじゃね!?まじバナナだしー!」

「ズー!!!」

 ギャハギャハギャルギャハ…


 檻の中で、ボンコに貰ったチョコバナナを白目で食べた。




「ねえ!てかあのドアの鍵アーシ持ってるよん!まじ多分だけどー!」


 まじ多分…


 フジミヤがじゃらっとキーホルダーだらけの塊をだした。


 ミチが落としたのを拾って、返せないままになっているというけれど…


 どれ…




 暗い階段を5人で上がって行く。


「まって!まじ多分これだわ!」


 この暗闇で、その塊からよく探し出せたものだと感心していると、慣れた感じで鍵を回した。

 ガチャンとドアが開いた途端、隙間から何かが飛び出てくる。


 パタパタパタ!…


「うわあー!!!」

「ナニ!!!?コウモリ!!!?」


「てかミッチーの飼ってる鳩じゃね?」


 飼ってる…


 中は暗くてよくわからないけれど、廊下には机が積み上がっているみたいで、奥には行けなかった。

 教室の手前の戸をガラッと開けて、誰かが明かりをつけた。




 え…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る