第3話 教室四隅同時走
重山が、首をかくかく、手首をぶらぶら、足首をぐねぐね回している。
佐々倉が、深くしゃがみ込みアキレス腱を交互に伸ばす。
藤宮が、軽快に腿上げを始めた。
ボン子は…
爪を見ながらアメを噛み砕いている。
嘘でしよ…
G4が家に帰ろうとしている…
七不思議を使って…
この人たちやっぱりアホだ。
「よーい!」
「きゃー!」
「うそっ!」
「まってー!」
各々あわてて走り出した。
ボン子は、壁にもたれていたので大幅に遅れて走り出した。
それだとね…
駄目なのよ。
全力で4人の速さを揃えないと駄目なの。
そして、致命的なのは方向だった。
自分の聞いた話では、時計と反対方向に回るということだったけれど、G4は時計回りに走っていた。
そもそも、速さが揃ったら消えてしまうという話であって、消えたその後どうなるのかは知らない。
家に帰れるというのは、佐々倉の「楽して帰りたい」という願望による思い込みだろう。
…というか思い込みもなにも、教室の隅っこをグルグル走り回っていても家には帰れない。
「待ってストップー!うけるうける!」
「ねー!スタート言ってよ!」
「言ったし!」
「てかボン子走って!」
「まじ走ったしー!ハァーハァー…」
「てかさー!机が狭いんだけど!」
G4は、サッサカ手際よく机を内側へ寄せて四隅へ戻った。
さっきまであんなにダルいと白目をむいていたG4が、生き生きしている。
「よし!いけるー!」
「はいよー!どんっ!」
ギャハギャハギャハギャル…
大爆笑で走り出すG4。
スタートの合図が変だったけれど、まあまあスピードが揃っている。
が…
ボン子が遅れだす。
距離が縮まって重山がボン子に追い付いた。
「ボン子がんばれー!」
藤宮と佐々倉も追い付いて、ボン子を先頭に4人連なった。
「ボン子ッ!ボン子ッ!ボン子ッ!ボン子ッ!…」
テンションが上がって声量が増していく。
「ボン子ッ!ほいっ!ボン子ッ!ほいっ!イッチニーサンシーゴーロクヒッチハッチボン子ッ!ほいっ!…」
もはや七不思議はどうでもいいのだろう。
部活のランニングみたいになっている。
「ヤホッ!てかなにやってんの?」
彼ピとカフェをやると言って学校に来なくなっていた、室桝実知が久しぶりにやって来た。
「ミッチャン代わってー」
ボン子が床に転がった。
「ハムエちゃんどしたん?」
「おなかすいた」
「ああ…これ食べー!」
仰向けに寝転がる腹にグミが置かれると、間髪いれずに袋を開け、ポコポコと口に入れていく。
生き返ったボン子がサッと椅子に座ってグミに専念しだした。
「ハムエちゃん変わらんね!」
実知が不登校になったのは、まだボン子がハムエ時代の事だっけ…?
そんな事を考えていると、実知がこちらへ向かって来た。
「ゲリピーおひさ~」
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