第14話 活用教

「グッモーニンエブリワン!」


 朝のホームルームが始まった。


 ワラワルって…

 夜ないの…


 授業は早く終わるけれど、次が始まるのが早い。

 これは辛い。


 眠らない世界…

 ワラレルワールドン…


 ワラレテナイワールドンに早く戻りたい。


 あれ?

 別人バーバラって…

 こんな人だっただろうか?

 昨日の…

 というか、自分の感覚では今朝なのだけれど…

 微妙に違って見える。

 別人バーバラとは、また別の人なのだろうか…

 毒リも…

 毒リンゴ系ではあるけれど…

 何か違う。

 あー…

 駄目だ。

 脳がオーバーヒートしそうだ。

 何も考えたくない。

 もうどうでもよくなってきた。

 疲れた。

 眠い…


 駄目だ…

 眠っちゃ駄目だ…

 目蓋がゆっくりと閉じていく…


 ぼんやリとしていく中、出入口の方を向くボン子の横顔が愉しそうに見えた…






 ***

 ………ん

 一瞬、自分が何処に居るのか分からなかった。

 あー居眠りしてしまった。

 頭がボーッとして、異世界に居る様な感覚になる。

 古文の授業が始まっている。

 教科書を開かなくては…


 凄く不思議な夢だった。

 変で、非現実的な世界は、少し愉しかった様にも思える。


 ボン子は…

 席に姿が無い。

 今日は休みだったっけ…?


 岡リの後ろ姿が見える。

 なんとなく周りを見わたすと、視界が真っ暗になった。


「ぬぅあっ!?」


 顔にペタッと貼り付いた物を、剥がし取る。


 ナニコレ~!!


 机に泥の様な…

 チョコレートの様な…

 大きなおはぎの様な…

 べっとりとした、丸っこい物が乗っかっている。

 顔を近付けてよく見ると…

 湯葉の様な薄い膜が、ずるりと動いて艶々の黒い玉が現れた。


 はっと息を呑む。


 横から水掻きの付いた手が出て、ひし形の口が開いた…


 ケロルッ


「ひゃぁっ!!!」


 後ろの席に椅子を思いっきりぶつけてゴメンと振り向くと、知らない人が白いハチマキを巻いて座っている。


 うっ…


 太鼓の様な音がして先生を見ると、こちらもハチマキをして団扇のような物を叩いている。


 トントントン

「ケーケーケルケルケレケヨ」

 トントン

「ケーケーケルケルケレケヨ」

 トントン…


 教室中がハチマキをして、呪文のように唱え出した。


 ペタッ


「ひっ!!!」


 顎に引っ付いた蛙を払うと、間髪入れずに頬っぺにまた付いた。

 窓から蛙が、どんどん飛び込んで来る。


「わーわーっうわっうわっうわうわっ!!!」

 トントン

「ケーケーケルケルケレケヨ」

 トントン

 ゲーゲーゲコゲコゲロゲロロッ

「ひぃーーー!!!」


 蛙まみれになった大合唱の教室を飛び出ると、廊下に座り込むボン子が居た。


 夢じゃなかった…

 ここはワラレルワールドンだ。

 夢オチの夢が消えた。

 愉しくない愉しくないワラワル全然愉しくない!

 全身に変な力が入って、どっと疲れた。

 へろへろとボン子の元へ行く。


「ボンちぃ…」

「ゲリちぃゴメンーてか起こしたけどー…」

「うん…」

「なんかもーまじむりなんだけどー…」

「うん…3人に直ぐ教室走って貰おう」

「…!?」


 ん?

 ボン子の目に、みるみる力が入っていく。


「ぎゃーっ!!!」


 え?


「かーかーかたかたかたかた!!」


 え?

 え?


 自分の肩で何かが動いた。


「え?え?肩?何?居る?居る?」

 ケロケロ

「せーせー背ー中!裏!裏!!」

 ケロケロ

「え?え?取って!取って!取って!取って!!」

 ケロケロ

「むーむーむり!てか!まじ!むり!!!」

 ケロケロ…

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