第8話 ワラレ

 仲間が足りない…

 もう少し頼れる感じの仲間を見つけたい。

 他の3人はどうなっているのか気になったけれど、ボン子の話では3人共、話が通じないということだった。

 あの別人バーバラを整形だと言っていたのだから、自分達とは見え方が違うのだろう。

 3人の見た目は変わっていないのに、なぜ自分達とは状況が違うのだろうか…

 自分とボン子だけがなぜ、こんなおかしな状況になってしまったのだろう。


「てかウチら世界が割られてまじヒズミに迷い込んだんじゃね?ぎゃくに!」


 割られる…

 ワールドン…

 なんか逆にしっくりきてしまった。

 自分達はどこでワラレルワールドンに迷い込んでしまったのだろう…

 歪みは何処に出来ていたのだろう…

 本当に今居るのはワラレルワールドンなのだろうか…

 自分とボン子だけナナフシが狂って、違って見えているだけでは…

 明日になれば元通りに戻っていないだろうか…

 どうしてもまだ、夢落ちの希望を捨てられずにいた。


 チャイムが鳴って教室が騒ぎ出す。

 もう授業が終わった…

 何人か出てきた生徒の1人が、こちらへ向かって来る。

 怖~…

 黒い頭巾を被っていたら、毒リンゴでも食べさせられそうな風貌だ。


「お腹大丈夫?前に白卯ちゃんが飲んでた薬と同じの持ってるから、必要だったらいつでも言ってね!」


 ありがとうと、困惑丸出しの顔を直せないままお礼を言った。

 見た目とは逆に、このめちゃくちゃ優しい感じ…

 確かに知っている人なのだけれど、誰だったか…

 名字で呼んでくれる少数派…

 絶滅危惧種の…

 誰だろう…

 ボン子の顔を見ると、悲しい顔でゆっくり頷いた。


 そうなのまじ悲しー


 え?誰!?


 分かっている風のボン子は、頷くだけで教えてくれない。

 悲し気に頷きなから教室に入って行くボン子についていくと、毒リンゴが岡山利果の席に座った。


 可愛いと言うよりも美人という方がしっくりくる、岡リはボン子のお気に入りだった。

 岡リに話しかける時だけ、声がワントーン上がるから分かりやすい。


 その岡リの席に、毒リが座っている。

 ボン子が残念顔で、首を横に振っている。


 ワラワルまじイヤー

 ウチの岡リ返してー


 毒リのあの喋り方は、確かに岡リだった。

 やっぱり、見た目が違って見えるというだけの事なのだ。

 岡リは確かに残念だけれど、そう思うと不安も和らいでくる。


 そんな風にちょっとだけ前向きになれた途端、ザーッと引戸が開いた。

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