第19話 廊下
ノートを見たボンコがビンゴと言った。
「そうだ!レノン!やっぱりー!ウチさっき見たしー!」
レノン…
廊下でイチレツ待ちの時、落合さんが薄い本を手提げに入れて、机の横に掛けたまま帰って行ったのを見たらしい。
それならば今、カドー3の薄い本が、落合さんの席に有るかもしれない!
という訳で、教室に戻る事にしたのだけれど…
「ワーォ!まじキレー!てかこれってまじで宝石系ー!?てかまじダイヤ的なー!?」
渡り廊下の床から、自分の身長程の剣の様な結晶がキラキラザクザクと何本も突き出ていた。
これは…
水晶なのだろうか…
鍾乳洞の様なひんやりした空気のせいで氷の様にも見える。
天井からは、水滴が落ち続けている。
これが凍ったのだろうか…
触ってみようか迷っていると、隣で既に細い感じの所を折ろうと、足をかけてぐいぐいやっている。
ボンコが握ると、剣は氷砂糖にも見えた。
この廊下を渡りたいのだけれど、剣のせいで両端が通れそうな…
通れなさそうな…
微妙な感じになっている。
少しだけ広く見えた右側を、横歩きで通ってみると、ギリギリ通り抜ける事が出来た。
ボンコは、ガサガサと大変そうだ。
「えー!?待ってー!?あー!あっあれっ!?フーッ…ウソ!え!?まじで!?」
ボンコが、剣と壁の間に蟹の様な形で挟まった。
「ちょっ…ゲリチ…引っ張って!」
頑張って引っ張ってはみたけれど、ガッチリはまって少しも動かなかった。
押し込んで戻そうとしたけれど、上手くいかない。
反対側にまわって引っ張ろうと…
「あ…あれ…待って…うそ…え…え…」
もう片方の壁と剣の間に、非常口のマークの様な形で挟まった。
「え!?待って!?てかゲリチも!?はさまってる的な!?」
「んー…大丈夫…ちょっと…引っ掛かって…んー…」
「………」
「んぐー…大丈夫…大丈夫…多分…んー…」
「助けてくださーい!!!」
え…
ボンコが渡り廊下の中心で、助けてと叫びだした。
「誰か助けてくださーい!!!」
止めろー!
こんな挟まってるところ、誰にも見られたくない!
「ボンチ!大丈夫だからっ!」
「助けてくださーい!!!」
「恥ずかしいからっ!」
「助けてくださーい!!!」
「ぐぬーーーっ止めろーっ!!!」
「助けてくださーい!!!」
「ボンコーッ!!!」
「誰か助けてくださーい!!!」
「ハァーハァー通れるからーっ!!!」
「誰かー!!!」
「通り抜けたから抜け出たからーっ!!!」
「………」
「ハァーハァーハァー…」
図書室側からボンコの腕をギュッと掴んで、剣に足を掛けた。
「ちょっと…お腹へこませて…引っ張るよ!せーのっ!」
「イタイタイタイタイーギャーーー!!!」
ボンコも無事に抜け出す事が出来た。
この渡り廊下を通らずに教室へ戻るのは、ちょっと遠回りになるので、ちょっと負傷したボンコを図書室に残して教室へ1人で向かった。
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