第17話 法則

「え?待って?…てかまじそっちに行けないんだけどー!」


「動いた…ハァー…よかったー…」


 自分もカウンターの中に、恐る恐る入ってみる。

 ボン子からペンを受け取って、角へ向かうと普通に歩いて…


 行けない。

 カウンターから出られない。


「ゲリチッ!!あー!動いたー!よかったー!まじ死んじゃったと思ったー!顔死んでる系でチョーヤバかったー!てか顔完全に死体系だしー!まじ完全死体顔だしー!!!死体の顔で…」


 死体顔…


 必死顔で嫌な事を言ってくる。

 ボン子と同じ様に、自分も死体顔になっていた…

 なんで…

 角へ行こうとすると、死体顔になるのだろうか…

 さっきは角に行けた。

 チャンスは1回だけなのだろうか…

 そうなると角はあと2つ…

 行けるのか…

 このままカウンターから出られず、永遠に死体顔で彷徨う事になったらどうしよう…


「ゲリちぃーーーーー!」


 え?

 ボン子が居ない…


「こっちの角入ってないよーーー!」


 あ…


 左側の奥の角で、バツのサインを出している。


 それから直ぐに、本棚の右側から帰って来た。


 え!?


「ジャーン!てかウチ法則見つけちったー!まじ凄くない!?」


 ボン子の話では時計回りであれば普通に進めて、反対に行くと死体顔になるということだった。

 思い返せば確かにそうかも知れない。

 分かってしまえば、なんと簡単なことか…


 入口付近の角を見てみると、隙間は無い。


「てか角本棚ぎゃくに3個みたいなー!」

「じゃあ…最初にボンちが見つけた角1と、次の角2には本が入ってて…角3は、本棚が無くて…角4は、本棚は有るけど本が入ってないって事か…」

「そういうことー!てか角さんと角ヤンはまじ本無いからー!角ッチへレッツゴー!」


 ん…


 ボン子がどんどん進んで行く。

 後をついていくと、角4には隙間が有るけれど、やっぱり何も入っていないように見えた。


 目指す角1へ先に着いていたボン子を見て気づいた。

 2人ともペンを持っていない…


「てか待って!ひらめきー!」


 そう言ってポケットからガシャッと袋を取り出すと、床に転がった物があって、ボン子は普通に拾ってポケットに戻した。


 空になったグミの袋をクルクルと細く丸めて隙間に差し込み、ちょいちょいと本を取り出した。


「やったー!!!てかウチまじ天才じゃね!?」


 細く丸めたグミの袋を、魔法の杖の様に振り回し、期待満タンの笑顔で七不思議の本を開いている。

 どんどん進めるボン子を前に、一瞬だけ見えた、床に転がる補聴器の残像から目が離せないまま、ボン子への勝手なイメージを後悔していた。

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