第27話 階段

 ◇◇◇◇

 教室四隅同時走


 教室の四隅に立った4人が、時計と反対回りに全力で走って、4人の速さが揃った時、その内側に居た人は何処かへ消えてしまいます。


 何処へ消えてしまうのかは色々で分かりませんが、戻り方は全部一緒です。



 戻り方:角本2参照

 ◇◇◇◇




 探していた本があった…

 でも欲しい情報は…


 角本2…


 ぐわーーーーーーーー…


 何処よ!!!?


 でも…

 取り敢えず走って貰わなくて良かった。

 何処へ消えるのか分からないと書いてある。

 危なかった。


 それに、戻り方は有る。

 元の世界に戻る事が出来る!!!

 角本2に書いてあるのだ!

 目標がはっきりした。


「てかまじ角本2てどこにあるのー!?」


 それが問題だー…

 やっぱり図書室だろうか…

 この本の裏表紙にも、室桝の印が有る。

 ミチが置いて行ったのだろうか…

 2も置いて行って欲しかった…




 くちゃくちゃなミチの机の中が頭に浮かんで、先ずは教室へ行ってみる。






「てかまじ空っぽだしー」


 ミチの机には何も入っていなかった。


 不登校になる前は、教科書をガチガチに入れてあって、取り出すのに苦労しているところをよく見かけたのに…


 教科書を置いて帰るのは禁止になっているけれど、みんな机の中に色々入れてある。

 時々、抜き打ちチェックがあって、どこからか事前に噂がまわって来るので、指がちぎれそうになりながら、いっぺんに持ち帰ったりしていた。


 殆ど手ぶらのような感じで、ふらふらと帰っていたミチの姿を思い出す。

 あの人、いつもどうしていたのだろう…


「てかミッチャン上に教科書隠す系みたいなぎゃくにー!」


 上…


 上の階の端には、使われていない机や椅子などが放置されている、物置の様な教室が有る。


 教科書と一緒に角本2も隠してあるだろうか…




 ボンコと階段を上っていく。






「ハァーねえーひょっとして顔死んでる?」

「ハァハァ顔?生きてるーてかウチら進んでない的なー?」


 まただ…


 ボンコと顔を見合わせて止まると、スーッと下がって元の位置に戻った。


 駆け上がってもあまり進んでいかない。

 止まってみると、スーッと下がって行く。


 まるでルームランナーの様に、階段が動いている。


 すぐそこに有る踊場を見上げると、大きな鏡が跳ね返す光が眩しくて目を細めた。


 ボンコは…

 走るのめんどくせーという顔で目を細めた。




「フーーーッ」


 自分なりの全速力で駆け上がる。


 スーッと元に戻る。


 一段飛ばしで駆け上がる。


 スーッと元に戻る。


「ハァーハァーハァー…」




 これは自分には無理だと思った。


「よしっ!ウチ行ってみるっ!」


 ボンコは、ポコッポコッポコッと階段を飛ばして一気に上ると、なんとか踊場まで辿り着いた。


 おー!

 さすがボンコ!


 笑顔で手を叩いていたら、よろけた様なボンコが、腕をバタバタ回しながら、階段の向こう側へ消えていった。

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