スペア失格の私
「マリー?目が覚めた?気分はどう?どこか苦しくないか?」
「ろーさ、ま……えっ!」
私は慌てて起き上がろうとしました。
けれどもそれは肩に置かれた手に止められます。
「急に起き上がらないで。動くのはもう一度診察を受けて、大丈夫だと確認が取れてからにしよう」
お優しい殿下のお言葉に従いながら、私はこの身がとても情けなくなりました。
長年ご一緒してきてお気持ちを察することも出来ず、こんな形でまたお目見えすることになるなんて。
「殿下の御前でこのような失礼な姿勢でありますこと、大変申し訳ありません」
殿下が目を瞠り、私はそれに驚いてしまいました。
けれどもすぐに以前の殿下とお変わりのないお顔をされて、私に何が起きたかを説明してくださったのです。
私は失礼にもヴァイオレット様のお部屋で倒れてしまったそう。
それで自室に運んでいただいたとのこと。
よく知った部屋にいることは安心出来ました。
いつまで私はここにいられるでしょうか。
「お忙しいときに、余計なご迷惑をお掛けして申し訳ありません。スペアとして失格ですね」
身体に掛かる毛布の端をぎゅっと握り、お言葉を待ちます。
未来の王妃様のご心労を少しでも取り除くために存在しているスペアの身にありながら、逆にご迷惑をお掛けしてしまうだなんて。
もっともあってはならないことなのです。
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