答えは一つに


 嫌でもこれが現実なのだと、認めざるを得ないようです。

 殿下が「ほらね」というお顔で私を見ています。


「うふふ。彼だけ逃げるなんて許せないでしょう?私だって好いた方と添い遂げたいもの。その点お二人なら。ねぇ?」


「ヴァイオレット嬢、それ以上は」


「まぁ、なぁに。まだ何も伝えていないとは言わないわよね?」


「いや……言ったには言ったけど……だから……それは……」


 殿下のお声の最後の方は、聴こえないものとなりました。

 珍しいことに対応出来なかった私は、耳を澄ませていてもお言葉を拾えなかったのです。


 くすくすとおかしそうに笑う声がお庭に広がりました。


 その笑い声を鎮めてから、ヴァイオレット様はまっすぐにローレンス殿下を見据え、晴れやかなお顔で宣言します。

 それはやはり為政者としてのお顔に見えていたのですが。


「まぁなんでもよろしいわよ。とにかく私はもう王妃にはなりませんからね」


 ここまで堂々と宣言されては、私はもう選ぶことが出来なくなります。

 今日この場で最終確認を、というお話でしたから、覚悟の上ではありましたけれど。


 私の知らないヴァイオレット様は、優雅に紅茶を味わっておられました。


「やっと美味しい紅茶が飲めるわ。本当に長かったわよ。こういう古臭い慣習は、どうにかならないものかしら?ねぇ、ローレンス殿下?」


 ここで隠さずにむっとした表情をされたローレンス殿下を、私はしばらく見入っていました。

 やはりお二人は特別に仲がよろしいのではないでしょうか。




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