スペアとして知られてきた私たち
お城では、私たちはスペアとしての扱いしか受けません。
王太子殿下に何かあったときの代わりが第二王子殿下であり、私はまたその王太子殿下の婚約者様に何かあったときの代わりです。
けれども一歩外に出れば、第二王子殿下とその婚約者候補という関係で人々から受け止められます。
正式な婚約を結ばないでおくのは、スペアとしていつでも身代わりになれるようにという配慮です。
そしてこの認識は学園でも同じ。
学園だけでなく、私たちがスペアであることは民にも周知されているくらいですからね。
二位以下の王位継承権を持つ王族を担ぐ者が出ないようにと、あえてスペアであることを強調し周知しておくというのが、継承権一位の王族が恙なく王位を継承するためにと考えられた代々の王家の戦略です。
そして私たちのようにスペアとなる存在には、幼い頃から徹底してスペアであることを誇る考えを植え付けます。
すると争いなど起きません。
万が一野心を持つ誰かに誘惑されたところで、スペアである私たちの心がそれを拒絶するからです。
そして即時にこれは王陛下や王太子殿下へと報告されることになります。
そんな状態で悍ましいことを考える方はまず現れないでしょう?
ですからこの国の誰もが、本当に不測の事態でも起きない限りは、スペアがスペアでなくなる未来は来ないと信じているわけです。
そしてそんな未来を誰しもが当たり前に祈っているものでした。
私たちだけでなく誰もが信じていた未来。
それは近い将来スペアとしてのお役目を降りた私たちが婚約なく結婚するというほぼ確定した未来でもありました。
けれどもそれは──。
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