二度目の謝罪


「私たちが説得して、彼が王位を望んでくれたら話が早かったのですけれど。あなたがいる限りは無理そうだったわ」


 私がいる限り?

 それは──お言葉通りの意味に受け取るしかないのでしょうか。


「それならば次の王位が自然にローレンス殿下の元に渡るようにしたらいい。彼はそう考えるようになっていったのよ。でもね、それはそれで道のりの険しいことだったわ。ほら、慣例のこともありますでしょう?そう簡単には話が進まなくて」


 私たちはスペアとして生きてきました。

 ですから王位など彼は求めるはずがないと、私はそう信じていたのです。


 でももし彼だけが違っていたら?


 彼はずっとスペアでありたい私に合わせてくれていただけだった?


「少しずつ始めた地道な根回しのおかげで道筋は立っていたわ。でももう少し時間が欲しかったわね。彼はそれを待てなかった」


 静かに語るそのお声が聞こえなくなるほどに、ドクンドクンと心臓の音が大きく聞こえました。

 私はさらに強く手を握り締め、ヴァイオレット様のお言葉に集中します。


「正式な婚姻の日取りが迫っていたせいよ。婚姻後に離婚となっても、私は別に構わないと言っていたのにね。優しい彼にはこれを認められなかったわ。きっと私だけでなく、お相手のことまで考えられてのことでしょう」


 ヴァイオレット様は、それから少しの間を空けて何か逡巡されているように視線を横に流したあと、今度は為政者として今まで見せられてきたような迷いのない晴れやかなお顔で真直ぐに私の目を見詰めました。


「私が謝る理由をご理解いただけたでしょう?本当にごめんなさい」




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