スペアを降りた先のこと
体調管理さえ出来ないようでは、自らスペアを降りた方がいいでしょう。
けれどもスペアの身の上は、辞退すればそれで終わりという軽いお話にはなりません。
王族に近い教育を受けてしまったからです。
私が嫁ぐ先は王家の方かそれに準ずる方、あるいは生涯結婚せずに王家から監視され国のために生きていく、スペアを降りた私の未来にはそれらの選択肢しかありません。
けれども今となっては一択。
私は生涯結婚しないのでしょう。
ならばどのように生きるかと考えなければなりません。
スペアとして失格となった私では、さらに先の王妃様となられる御方の教育係は難しいことでしょう。
同じ理由で新たなスペアの方の教育も無理かと思います。
いずれ健康問題が解消されると希望を持って。
国のために何が出来るか……。
私は急に思いつきました。
沢山学んできましたから、学園の教師になれないでしょうか?
学園で貴族の子女たちと触れ合う時間は、私にとって大変有意義なものでした。
特に王都ではないそれぞれの領地からお越しの方々のお話は大変勉強にもなりましたし、また皆様が王家や王都について興味を持っていただけたのも嬉しいことです。
学んできた内容のどれが貴族には決して伝えてはならないことであるか、おかげさまで私はその線引きには迷うことがありません。
貴族の子女に王家が学んで欲しいと望んでいることもよく理解している自信はあります。
学園ならば私のことも監視しやすいでしょうし、私のために仕事を増やす方が最小限で済むのではないでしょうか。
我ながらこれはとても良案だと感じました。
それとも、教わる一方でしかなかった私が人に教えることを考えるなど烏滸がましいことでしょうか?
この国のために生きられるどんな方法があるか、急ぎ考え出さなければ──。
「マリー」
最初はいつもの呼び方でした。
けれども。
「いや、ローズマリー嬢。君にはスペアの座を辞してもらいたい」
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