夢から覚められない私
今度こそと思って目を覚ましましたのに、見える景色が変わっておりませんでした。
それどころか、お医者様に診ていただいたあとも、殿下は部屋から出ていきません。
あろうことか部屋には二人きり。
もう婚約者候補でもない私と扉の閉じた部屋に二人だけで過ごしていては、大変お困りになると思うのですが。
何故侍女が一人もいないのでしょう。
殿下の侍従はどうされましたか。
共に学んできた殿下がこれを知らないことはありません。
私は大変困惑していました。
「マリー。このまま改めて求婚させて?」
「きゅ……」
私はついにおかしくなってしまったようです。
口をぱくぱくと動かしても言葉が出て来なかったから。
お医者様は心労がたたったのであろうと、薬を飲んでよく休めば問題ないと仰っていましたのに。
ベッドに座る私の前に殿下が跪きました。
そのようなことを殿下はしてはいけません。
それなのに殿下は体勢を気にされることもなくそのまま私の両手を取って……どうしてこんなにも震えているのでしょうか?
きっと私の手が震えているのだと思います。今日は何度も震えてきましたもの。
けれどもこれでは、どちらの手が震えているのか分かりません。
殿下が私を見上げています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます