まだ信じられない私


 くすくすと楽しそうに笑うヴァイオレット様のお姿は、今まで見て来た次期王太子妃様のお姿とは重なりません。


 またローレンス殿下がこのように感情的になられているお姿も、私は見たことがありませんでした。


 お二人がずっと気安い仲だったとしたら、どうしてローレンス殿下は私を王妃にと望んでくださるのでしょうか?

 もしやヴァイオレット様の恋のために自ら身を引いて?


「マリー。それはあとで二人になってからじっくりと話そうね。とにかくだよ。ヴァイオレット嬢の話に何ら嘘偽りがないことは分かったね?」


 私はまた失礼をしてしまいました。

 ローレンス殿下が嘘を吐いているなどとは思っていなかったのです。


 ただあまりに私の知るヴァイオレット様のお話とは思えない内容でしたから。

 お言葉を聞いても、理解して納得するということが困難で。


「そうだった、ヴァイオレット嬢。君からマリーに話して貰いたいことがあるんだ」


 まぁ、何かしら?と首を傾げるヴァイオレット様は、とても可憐でお花の妖精のようでした。

 庭の花々がその美しさを後押ししているよう。


「どうやって君がその騎士と仲を深めたか、それをマリーに教えてくれないか?どうしても私には聞かれたくないというのなら、少しの間席を外すことにしよう」


 そうです。それも気になっておりました。

 何故ならスペアである私でさえ、たとえお守りくださる騎士の方であっても、殿方と二人きりになることはあり得ません。

 次期王太子妃であられたヴァイオレット様が、一人の騎士様と特別に仲良くされる、というのは大変無理な話ではないかと。

 それもあって私はローレンス殿下のお言葉に心から納得出来なかったのです。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る