何も出来ない私
元第一王子の廃嫡が発表されてから数日が過ぎました。
この短い間に私という人間がお城に宙ぶらりんになっていて、私は自分の立場が分からなくなっています。
沙汰があるまで何もしなくていい、そのように命じられました。
第二王子殿下の立太子、それから婚約についての発表を控えている間は、大人しくしているようにという意味があるのでしょう。
今まで忙しくさせてきたからしばらくは好きなように過ごして欲しいという陛下からの有難いご伝言も賜りました。
けれども私には仕事がないとすることがありません。
お城に勤める多くの方々のように、帰る家があればまた違ったのでしょうか。
私には生家はありますけれど、家に戻ることは出来ません。
お城に与えられた私室があり、仕事以外の時間はそこで過ごすことになります。
スペアに選ばれたあの日から私は準王族と見なされ、王族に近い教育を受けてきました。
すると私は、一貴族である両親とは、通常の貴族の親子のように気軽には会えないのです。
会わなくなったわけではありません。
年に一度は登城してくる両親と顔を合わせる機会はあります。
けれども家族水入らずのような時間はなく、決まったお部屋で必ず文官が同席の元でお会いするのです。
そして私たちの会話はすべて記録され、書面に残されることになります。
ですからたとえ時間を持て余していたとしても、両親に会おうという気は起きません。
ただでさえお城の中が騒がしい時ですから。余計なお仕事を増やすことも考えられませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます