第2章 好きになっているのかもしれない

第14話 連絡先の交換=いつでもお喋りできる

 約1か月半程の夏休みに入った。学校から出された課題は早めに済ませるタイプなので誰とも会うことなく夏休み1週間はあっという間に終わってしまった。


 1週間経ち、俺は思った。誰にも会わず家にいる時間を過ごしていていいのかと。


 普通の高校生ならやっぱり友達と海やらプールに言って夏の思い出とやらを作るはずだ。


 このまま家にいるのも勿体ない気がしてどこかに行こうということで玲央と集まったのはファーストフード店だった。


「で、どこ行こっか?」


 頼んだポテトを食べつつ玲央は夏休みどこに行くかと尋ねてきた。


「普通にショッピングモールでいいんじゃないのか?」


「いや、夏なんだからさもっとプールとか海とかそういうのはないのか?」


「プールか海……」


 去年の夏休みは確か、由香と施設のプールへ2人で行った。来年も行こうねと約束していたが、その約束は果たされることなく終わった。


 プールか海に行くことはいいのだが、男2人で行くのは面白いのかと思ってしまう。


「あんまり気乗りしないか……。なら、陽菜と水篠さんも誘ってみて4人でどうだ?」


「4人で……それならいいけど」


 雨音と陽菜がいるならいいと思い、そう返事すると玲央がニヤニヤしながらこちらを見ていた。


「なんだよ、ニヤけて」


「い~や、水篠さんの水着見たさに行きたくなったのかと」


「なっ、それはない!」


「ほんとかなぁ~」


 玲央はそう言ってジュースを飲んだ。


 俺はよく表情を見てわかりやすいと言われる。自分自身そうは思わないが。


「じゃ、さっそく2人に聞いてみるか。俺は陽菜にメールで聞くから水篠さんは頼む」


「頼む……俺が?」


「そりゃ、そうだろ。俺は、水篠さんの連絡先は持ってない。お前はあんなに仲いいし持ってるだろ?」


「……な、ない」


「えっ……?」


 あのショッピングモールに出掛けたときに連絡先を聞こうと決めていたのに楽しくてすっかり忘れていた。


 ショッピングモールから出て彼女を家まで送って、よし、いい感じのお出かけだった!みたいにどや顔していた自分が恥ずいわ。


「ま、まぁ、水篠さんには陽菜から聞いてもらえばいいことだし、大丈夫だ」


「そ、そうだな……」


 ポテトを食べようと手を伸ばそうとすると玲央は肩をポンポンと叩いてきた。


「遊びに行った日に連絡先聞かないとな。忘れるなよ?」


「あぁ……連絡先知らないと不便だしな」


「……いや、待てよ。陽菜経由でもしかしたら交換できるかもしれない。どうする?」


 陽菜経由は、玲央が陽菜に『俺が雨音の連絡先知りたがってるんだけど連絡先教えてもらえる?』と聞く方法。確かにそれもいいけど、せっかくなら会って交換がしたい。


「いや、いいよ。会えたときで」


「ん、わかった。じゃあ、今交換だな」


「今……?」


 玲央がおかしなことを言うので後ろを振り向くとそこには雨音と陽菜がいた。


「お、お久しぶりです……蒼空くん」


「お、おう……」


 まさか夏休み、偶然こうして会えるとは思っておらず驚いた。それにしても今日も私服が可愛くて輝いている。


 俺と雨音の会話を聞いていた陽菜は、面白かったのか笑っていた。


「久しぶりって終業式からまだ1週間しか経ってないよ。ねぇ、席移動して広いところで4人で食べよう」


「そうだな。蒼空、移動しようぜ」


「うん」


 4人で座れるところに移動し、席に着くと話はさっそくプールの話になった。


「で、で、プールでしょ? あまねんは、どう? 私は全然オッケーだよ」


「プールですか。私も構いませんよ。お友達とプールなんて初めてです」


 陽菜も雨音もプールに行くことには賛成してくれた。


 俺の隣がいいのか今、雨音が隣にいる。連絡先をするなら今だよな。


「あ、雨音……」


「? どうかしましたか?」


「えっと……連絡先教えてほしんだけど……」


「連絡先……ほ、ほんとですね、してませんでした。蒼空くんとはここ最近ずっといたのでもうした気分でいました」


 彼女は、俺と連絡先を交換していなかったことに気付き、カバンからスマホを取り出した。


「えっと、こうですか?」


 彼女は、QRコードをスマホに表示させて俺に見せてきた。


「あっ、うん」


 彼女が表示させているQRコードを自分のスマホで読み取ると雨音と表示されたところを追加した。


「できたか確認のために適当にスタンプ送ってみるわ」


「はい」


 よろしくと可愛いクマのスタンプを雨音に送ると彼女は「来ました」と言った。


 雨音は、スマホを胸に当てて嬉しそうに小さく笑った。


「ふふっ、蒼空くんとこれでいつでもお喋りできますね」


「そうだな」


「あまねん、嬉しそう。さてさて、4人のグループも作っておこうよ。私が玲央とあまねん誘うから、あまねんは、蒼空をよろしく」


 陽菜は、グループを作成し、雨音は、俺をそのグループに招待した。


「そう言えば2人はどこか行ってたのか?」


 玲央は、女子がファーストフード店をメインで遊びに来るわけないと思い、尋ねた。


「さっきまで服屋で服を選び合ってたの。あまねんは、もうどれ来ても似合う服ばっかりでさ、悩んだわ~」


「陽菜さんも似合う服ばかりでしたよ」


「いやいや、私はズボン系が多いけどスカートはあんまり似合わないからさ、似合うあまねんは羨ましいよ。男子2人は、何してたの?」


 女子は服屋に行って、小腹が空いたからこのファーストフード店に入ったそうだ。さすがにこれメインでは来ないか。


「ここで昼食。だべってただけだよ」


 玲央はそう言って俺に「なっ?」と視線を送ってきたので俺はコクりと頷いた。


「男子らしいや。あっ、あまねん、私、新しい水着買いたいからさこの後いい?」


「いいですよ。私も見に行きたいですし」


「やった! じゃ、決まりね。蒼空と玲央も来る?」


 陽菜にそう言われて俺は、どう答えるのが正解か玲央が答えるのを待つことにした。


「いや、お楽しみってことで行かない」


「何、お楽しみって!? 蒼空は?」


「俺もいいかな……お楽しみってことで」


「だからお楽しみって何!? まぁ、いいや、あまねん2人で行こっ」


「はい」


 女子が水着選びに行くところについていくのは難易度が高すぎる。


 プールに行くことが決まり、ファーストフード店を出て雨音と陽菜とは別れることになった。









        

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