第30話 爆乳なクラスメイトは…

 特に今、気軽に話せることはなかった。

 むしろ、どんな話題を彼女に提供すればいいのかさえ、高橋良樹たかはし/よしきは考えられずにいた。


 現状、由梨とは同じ図書委員として、昼休みの時間帯に受付カウンター内の椅子に座っている。


 いつもなら、一緒の時間帯に作業ができることに喜びさえ感じていたが、無言が続いたままだと、隣同士で座っている事から余計に気まずい。






「この本を借りたいんですが」

「いいですよ。こちらの方で受付しますね」


 藤井由梨ふじい/ゆりは椅子から立ち上がって、棚から本を持ってきた女子生徒とやり取りを行っていた。


「返却日は、来週の火曜日になります」


 由梨はパソコンや、カウンターテーブルの上に置かれた記録長に、どの学年の人がいつ、どんなジャンルの本を借りたのか全て入力したり、記入した作業を行っていた。


「ありがとうございます」


 由梨から本を受け渡された生徒は立ち去って行く。


 良樹は椅子に座ったまま、それをただ見ていた。

 そこまで今日は図書館内が混んでないからこそ特にやることがないのだ。


 普段なら、昨日の業務の残りや、簡単な指示などが図書委員の委員長からあったりするのだが、それすらもなかった。


 朝方や放課後の時間帯であれば、新しい本を棚に並べたり、貸し出した本についての結果報告書を書くことがある。


 昼休みというのは、本を貸し出すだけであり、今日はいつも以上に業務が少ないのだ。


 借りた人が図書館を後にすると、由梨は椅子に腰を下ろしていた。

 そして、その爆乳が揺れ動く。


 今は彼女との関係性が悪いからこそ、性的な感じに、その高貴なるおっぱいを直視する事が出来なかった。

 彼女はスカートを整え、隣に座った直後に良樹の方をチラッとだけ見てくる。


 もしかして、何か話題を振ってくるのかと思い、待っていたが、そんなことはなく、先ほどと同様に無言な時間が続く事となった。


 やっぱり、難しいのか……。






 いつまで、こんな事を続ければいいんだろ……。


 良樹は一人でモヤモヤと悩んでいた。

 誰にも相談できないことに、心が締め付けられるように苦しくなる。


 クラスの中でも陰キャ寄りの方であり、誰かに打ち明けることができないのだ。


 中野彩芽なかの/あやめに相談するという手段は、今日の朝の出来事以降、無理だと悟った。


 彩芽は信用できないかもしれない。

 けど、朝、彼女のベッドで起きた時の情景がフラッシュバックし、急に恥ずかしくなった。


 高校生になって、幼馴染のおっぱいや、それ以上のモノを見ることになるとは誰が想定していただろうか。


 エロい気持ちを抱いちゃダメだ。


 多分、それすらも、幼馴染の策略なのだから。


 彩芽とは嫌らしい関係になったものの、やはり、どこかで真剣に話をしたい。今後、三人の子とも和解をし、もう一度由梨に告白するためにも穏便に解決させていきたいと思う。


 やることは色々と山詰みだが、一先ずは今一緒にいる由梨との和解を成立させたい。


 良樹はチラッと右横を見る。

 由梨は普段と変わらず、パソコン画面を見、この図書館にあるジャンルごとの本を確認していた。




「……今日の件なんだけど」

「……」


 由梨は唇すらも動かしてくれなかった。


「あの……俺は彩芽とはそういう関係じゃなくて、たまたま、ああいう風になっただけで」


 良樹は話を続ける。


「……あの子とは、なんでもないの?」


 由梨はパソコンのキーボードから手を離し、ようやく良樹の方を見てくれたのだ。


「そうだね。変な誤解をさせてしまって。困惑していると思うからさ。改めて説明しようと思って」


 良樹はここぞというタイミングで、声の抑揚を上げた。


「あなたが、本気で私たちの事を気にかけてくれるなら、もう一度チャンスを与えるけど」

「本当に?」


 ヨシといった感じに、心が震えた。


「うん。私も朝はね、現実を受け入れたくなくて、あんなに強い口調で言ってしまったの」

「そうなんだ。でも、ありがと。面倒な事をかけてしまったけど」


 良樹はホッとした。

 大きな壁が少しだけ取り除かれた気がする。


 午前中。由梨と同じクラスで過ごし、緊迫した環境下の中、授業を受け続けていたのだ。

 やっと希望を見いだせるようになり、気が晴れてきた。


「じゃあ、俺の方から他の二人にも話をつけておくから」

「お願いね。でも、今回も私を選んでくれるよね?」

「そ、それは当り前さ」


 今後、特に大きな問題に直面しない限り、由梨を選ぶと思う。

 だから、良樹は素早く頷いたのだ。






 それにしても、由梨の爆乳具合が凄い。

 隣同士で座っていると、横の方から見えるおっぱいに感銘を受けた。


 ギリギリ和解の方へ持っていくことができ、快く彼女のおっぱいを拝めることができたのだ。


 正式に付き合うことが出来たら、その果実を自分のモノにできると思うと興奮してくる。


 実のところ、由梨のおっぱいのサイズはどれくらいなのだろうか?


 推定Oカップだと思い込んでいるが、未だに彼女が持つ素晴らしき果実の大きさは知らない。

 知りたくてしょうがなかった。






「ねえ、ちゃんと意識ある?」

「え?」


 パッと声をする方を見ると、自分のカウンター席前には、何してたのと言わんばかりの顔を見せる、とある女子生徒が佇んでいたのだ。


「す、すいません。本の貸し出しですかね?」


 良樹は椅子から素早く立ち上がった。


「返却なんだけど。あなた、大丈夫なの?」


 その女子生徒からは、不思議そうな顔を浮かべられていた。

 さらなる辛辣なセリフを投げかけられたが、我慢して対応する。


 良樹は由梨の爆乳に気を取られていて、全然気づいていなかったのが悪いのだ。

 気を取り直し、自分の前にあるパソコンを弄り、慌てて作業を始める。


 右隣の方を見やると、由梨も別の生徒の対応に当たっていた。


 爆乳ばかりに意識を持っていかれてはダメだと思い、図書員会として業務と真面目に向き合い始める。


 それにしても、図書館内が混んでないか?


 チラッとだけ、辺りを見渡すと、カウンターのところに三人ほど列になっていた。


 急に忙しくなるなんて聞いてないんだけど……。


 良樹は、その女子生徒から急かされながらも、テキパキと作業を続けるのだった。

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