第13話 さすがに爆乳には勝てないと思う…

 遊園地内の飲食店内にいる良樹には、今から決めないといけないことがある。

 それは、この場に居合わせている子のいずれかと付き合うこと。


 そのためにもまず、それぞれの子と付き合う必要性があった。


 最初、遊園地でデートするなら誰がいいかということだが……。


 本当に誰を手始めに選ぶべきだろうか?


 悩ましいことではある。


 下手に選んでしまうと、どこかで話が拗れてしまう可能性だってあり得るからだ。


 真剣になってしまうのも無理なかった。






「ねえ、早く決めたら?」

「そうですよ! 私からでいいですよね?」

「良樹君が、ハッキリとしないと時間が無くなってしまいますよ」


 ナギ、五華、由梨。

 各々の子から、問い詰められていた。


 まじまじと見られている中、高橋良樹たかはし/よしきは即答は出来なかった。


 そんな些細な勇気も出せず、良樹が口ごもっていると――


「私が優先で、お願いしますね、良樹先輩!」


 右側に座っている後輩の宮崎五華みやざき/いつかが立ち上がり、積極的に体を接近させてくるのだ。


 彼女の胸の膨らみが腕に接触し、変な妄想に至ってしまう。

 如何わしいことを考えている余裕があるわけではないが、興奮してしまうのは抑えられそうもなかった。


 いきなり、それはヤバいって……。




「私の方がいいですよね?」


 気が付けば、席から立ち上がっていたナギからも片方の腕に抱きつかれてしまう始末だ。


 今、席に座ったまま良樹は板挟みに合っている状態で、ほぼほぼ立ち上がれず、逃れられない状況でもあった。


 ヤバいって、これ……。


 おっぱいというものを、ここまで感じることになるなんて、人生で初めてかもしれない。




「二人とも、そういうのはよくないと思うわ。しかも、皆が見ている前で」


 対面上の席に座っている由梨は立ち上がって良樹らに問いかけてくる。

 その表情は少々真っ赤に染まっていた。


 店内は込み始め、子供ずれのお客が多い中で、如何わしいやり取りは極力抑えないといけなかったのだ。


「でも。良樹先輩が早く決めないから」

「そうですからね。あなたが何も言わないから、こうなってるんだからね」


 由梨の発言に、五華とナギは不満げな表情を浮かべるも、最終的には、その一番の原因を作っているのは良樹と結論づけられたのだ。


 そう言われてもな……。


 良樹は悩ましくなるも、顔を上げ、パッと視界に映るのは正面にいる由梨の姿だった。

 彼女は今、三人に指摘するために前かがみになっており、その豊満な胸がハッキリと、良樹の瞳に焼き付いていたのだ。


 制服の上からでも、その爆乳が際立っていたが、ラフな私服の状態だとなおさら、そのデカさが強調されているようだった。


 どこに視線を向けても、おっぱいしかない現状。


 何かを思考するにしても、平常心で物事を判断する事が出来なくなっていた。


 一応思考はできるが、双方から伝わってくるおっぱいの感度に、脳内が一時的に機能停止しているようだった。




「ねえ、どうなんですか?」

「私が最初でいいですよね?」

「良樹君、そういうところだからね」


 五華、ナギ、由梨から男らしくないと思われ始めていた。


 このままだと、三人から嫌われてしまう。


 思考回路がおっぱいで制圧されているなら、下半身にその感覚を委ねるしかないと思った。


 これは最終手段であり、それこそが今生き延びる希望の道だと思う。






「良樹君は、私でよかったの?」

「まあ、ね……」


 先ほどの飲食店を後に、あの二人とは別れ、良樹は最初のデート相手に藤井由梨ふじい/ゆりを選んで、遊園地内を一緒に歩いていた。


 本能に赴くまま、爆乳が決め手になったとは口が裂けても言えないが、後悔はなかった。


 やはり、性というのには抗えないようだ。


 チラッと横を見るだけで、その爆乳具合が視界に入る。


 何か果物でも入っているのではと思ってしまうほどの重量感があるのだ。


 実際に触ったことはないものの、以前、学校の図書館内で下着姿の由梨の姿を目撃したことがある。


 だから、その爆乳度合いには偽りはないと思った。


 それにしても、カップ数はどれくらいなんだろ。


 そんな不埒な妄想が脳裏をよぎる。


 いや、そんなことは今考えちゃダメだろ……。


 だがしかし、彼女をそういう目で見てしまうのは、本能には逆らえないらしい。




「良樹君はどこに行きたい? 私はどこでもいいよ」

「どこでも?」

「うん」


 由梨は気軽な笑顔を見せてくれる。


 どこでもいいなら、本当に迷わず色々な場所に連れていくのだが。

 女の子が言う、どこでもいいという言葉を本気で受け入れてはいけないと思う。


 由梨にも何かしらの趣味があり、好きなことも嫌いなこともあるのだ。

 今のところは彼女と会話して探りながら、どういうアトラクションがいいか選別した方がいいだろう。


「藤井さんは、何が好きなの?」

「好きなの? それは……それより、私の事は下の名前で呼んでもいいからね」

「下の方? 由梨さん呼びで?」

「うん、そうだね。その方が、私も楽だから。苗字呼びだと堅苦しいから」

「それもそうだな」


 前々から興味を抱いていた相手からの嬉しい反応だった。


 もしかしたら、彼女の方も気があるのだろうか?


 そう都合のいいように考えてしまう。


 でも、その前に一つだけ、彼女に聞いておきたいことがあった。


「以前さ、俺、見てしまってさ。ごめん……」

「え? あの件は、まあ、しょうがないし。それに、この前、喫茶店で奢ってもらったから。そこまで気にはしてないけど。良樹君って、やっぱり、紳士的だね」

「いや、そんなことはないと思うけど」

「だって、図書委員会の業務もちゃんとやっているし。私、助かっているからね」

「そうなの?」

「うん。私、胸が大きくて、困ることもあるから。高い棚に本を戻す時だって、良樹君に手伝ってもらってるし」


 確かに、委員会活動の時は、積極的に協力しようとはしている。

 彼女と少しでも一緒にいたいから、関わっているようなものだけど。


 由梨からしたら、好意的に受け取られていたらしい。


 これは嬉しいことではあった。


 まさか、今回本当にいいところまで行けるのか?


 そんな期待を抱いてしまう。


「こういう話はあとで話すとして。私ね、遊園地なら、少し刺激的なアトラクションが好みかな?」

「だったら、ジェットコースターはどうかな?」


 良樹は激しめのアトラクションを提案する。


 彼女が頷いたのを確認した良樹は、その目的地まで共に歩き始めるのだった。

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