第12話 好きという感情が定まらないのだが…

「あなたの考え方はわかりましたけど、あなたは私たちに隠しすぎです。今回でハッキリとさせてもらいますから!」

「……はい、すいません……」


 高橋良樹たかはし/よしきは申し訳なく頭を下げた。


 土曜日の今日。遊園地内の飲食店内にいるのだが、その中で良樹の立場は一番低かった。


 店内には子供ずれのお客も多く。比較的静かな声の音量でやり取りをしている最中。


 同じテーブルを囲ってる三人の美少女から問い詰められ、先ほど数分ほどかけて良樹は事の経緯についての説明を施したのである。


「でも、どうしてそんな嘘ばかりをついてたんですか?」

「それは、しょうがないというか。俺の立場的に……なんていうか……その、状況的に言えなかったんだ」

「だとしても、ここまで隠し事をしていたなんてね」


 左側の席に座っているメイドのナギは、ため息をはき、呆れ顔を見せていた。


「けど、ナギとは友達として付き合うって話だったはずでは?」


 良樹は伺うように一言告げた。

 その一言が余計だったのだろう。


「まあ、一応はそうでしたけど……あなたは私に隠してたんですよね?」


 結果として、ナギから睨まれる。

 可愛らしい印象の彼女からは想定考えられない顔つきだった。


「はい……」


 良樹はおどおどした口調になる。


「隠し事をする人が、言い訳しないでほしいんですけど」

「すいません……」


 そういうことを突っ込んで言われると反論しづらい。


 ナギには迷惑をかけすぎて、申し訳なさを感じてしまうほどだ。


 おっぱいを揉んでしまったこともあり、頭を上げられない状況だった。




「それで、良樹君は、どうしたいの?」


 正面の席に座っている藤井由梨ふじい/ゆりから問われる。


「それに関しては、俺にもどうしたらいいか……」


 良樹は由梨の方へと視線を向けるものの、三人に対しての隠し事が多すぎて、悩ましくも言葉に詰まっていた。


 すぐにこれといった結論には至れないというのもあり、自分なりの言葉で話を進ませることが出来ていなかった。


「良樹先輩がいつまでたっても決断できないから、こうなってるんですから! そういうこと、分かってくださいね!」


 後輩の宮崎五華みやざき/いつかからも強めの口調で忠告された。


 三人に対し、嘘をついていたことに関しては本当に申し訳なく思う。

 だが、自分にも事情というものがあるのだ。


「だからなんですね、良樹先輩は。好きな人がいたから、私とは付き合おうとしなかったんですね!」


 右側にいる五華からジト目で見られていた。


 前々から五華は良樹に対し、積極的に話しかけてきていたのだ。

 もしかすれば、その行為が好きという意味合いだったのだろう。


 だが、好きという断言的な発言がないため、良樹からしたら、五華の気持ちを理解しきれていなかったのだ。


「えっと……そういうわけではないんだけど……」

「じゃあ、ここでハッキリさせませんか? 私、いつまでも待てないので」


 五華は提案をしてくる。


 彼女的にもモヤモヤとした関係性をこのまま続けたくはないのだろう。


 確かに、ここでハッキリとさせておいた方がいいよな……。


 五華の瞳を見て、そう感じた。




「では、今から決めますから」


 五華が話を進めていた。


「今⁉」


 良樹は体をビクつかせた。


「はい。じゃないと、良樹先輩の事なので。ずるずると長引きそうなので」

「それはいいね。それで、あなたは誰が好きなの? もし、付き合うならさ?」

「それは……」


 五華の意見に賛同するナギの発言により、良樹は恐る恐る周りの三人を見渡す。


 パッと視界に入ってきたのは、由梨である。


 実際、由梨と付き合いたいという思いはあり。

 けど、今、そんなことを言ったら、おっぱい目的だと思われそうで、勘違いされる可能性がある。


 他の二人もそれなりのおっぱいの膨らみを持っているのだが、由梨と比べれば、申し訳程度に感じるのだ。


 ナギのモノに関しては直接触ったこともあり、視覚的に、その大きさを把握できていた。


 おっぱい的には断然、由梨一択しかないか……。

 でも、五華のもいいかもしれない。


 ナギの胸に関して本音で言えば、触りやすかった。

 焦った感情も相まって具体的な評価には至れないが、爆乳よりも普通くらいの方が触る分には心地よい気がする。




「良樹君。それで、誰にするんですか?」


 正面の席に座っている由梨から問われた。

 おっぱいのことについて考えていたこともあり、その彼女の爆乳が私服の上からでもハッキリとわかる。


 デカい方がいい。


 しかし、女の子はデカいだけでは決まらないかもしれないけど……。


 迷う。

 感情が揺れているのだ。


 まだ彼女らとは関わってからの日数が浅く、誰と付き合いたいか断言できる状況ではなかった。


「まあ……なんていうか」


 具体的な結論には至れず、口ごもり、あやふやな回答になってしまう。


「もう、ハッキリとしないですね!」


 五華に少々怒られてしまっていた。


「そう言うところですから!」


 そう言われてもどうしたらいいんだ……。


 良樹は迷っていると、ある結論に辿り着いた。

 良い閃きがあれば、すぐに提案した方がいい。

 そう思って、口を開いたのだ。


「……じゃあ、今日一緒にそれぞれ付き合ってみて、それから決めるっていうのは?」

「それぞれ? まあ、いいですけど」


 五華は首を傾げ、迷ったのち、一応は頷いてくれたのだ。


「俺、もう少し、君たちの事を知りたいというか。まだ、半年以上も関わってるわけじゃないし」


 正式に付き合うと断言したとしても、恋人として長い期間関わっていくことになる。恋愛といえども、ある程度の信頼感がないと長続きしないだろう。


「それもそうですね。その方がしっかりとした判断を告げてくれそうですね」


 ナギもそれで納得した。


「藤井さんもそれでいいかな?」

「はい。いいですよ。良樹君からちゃんとした反応を頂けるのなら」




 今、皆の考えが一致した瞬間だった。


 一応、解決なのか……?


 まあ、本当の意味で解決にはなってはいないと思うが、何とか三人を宥めることは出来たと思う。


 あとはこれからどういう風に立ち回っていくかだけど、どうしよ……。


「まずは、順番を決めようと思うんだけど。最初、俺と行動したい人は……」


 良樹の発言に、三人が同時に手を挙げた。


 一番乗りをかけて、皆、譲る気はないようだ。


 もう少しだけ、この問題が長引きそうな気がした。

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