第14話 真っ暗な空間で感じる彼女の手が…?

 欲を言えば、おっぱいは大きい方が良い。

 小さいのもいいのだが、どちらかと問われると大きい方には目がないのである。


 ……やっぱり、明らかにデカいよな……。


 高橋良樹たかはし/よしきはゴクリと唾を呑んだ。


 今、隣を歩いている子は爆乳の持ち主である。


 普通に生活していたら、ましてやプライベートで爆乳な女の子と遊園デートができるわけがない。


 自分は運がいいのだと思う。


 自身の瞳に焼き付く、その爆乳。

 内心、テンションが高まっている。

 下半身のテンションも上昇しているわけだが、あまりにも感情を表に出しすぎると、彼女に迷惑をかけてしまうだろう。


 それだけは気を付けようと心に念じ、遊園地内を探索するように彼女と時間を共にする。


 数分前。遊園地の飲食店内にいた頃合いは、宮崎五華みやざき/いつかとナギも関わっていたが、現在は別行動になっていた。


 そう言えば、あの二人は今どこにいるんだ?


 良樹はチラッと辺りを見渡すが、彼女らの姿は見当たらなかった。


 本当に別のところで遊んでいるのだろうか?


 監視されると思っていたのだが、個々のデート時のルールをちゃんと守っているらしい。


 一応、遊園地デートを邪魔してはならないというルールがある。

 飲食店にいる際、皆で取り決めた事だった。


 むしろ、この静けさが逆に怪しく思えてくる。


 何事もなければいいのだが……。






「ごめんね、さっきは」

「え? い、いや、大丈夫だよ。俺は別に気にしていないから」

「そう、ならいいんだけど……」


 藤井由梨ふじい/ゆりは申し訳なさそうに顔を俯けていた。


 先ほど由梨を連れてジェットコースターエリアに向かった。がしかし、そこにいた女性のスタッフに引き留められ、乗車を拒否されてしまったのだ。


 原因は複数ある。


 由梨が爆乳すぎて、ジェットコースターの安全バーが閉まらなかった事。

 それから、胸が大きすぎて何かを入れているのではという疑いをかけられた事。


 普通、高校生ぐらいの子が、他人の目を見張るほどの乳を持つなどありえない。


 その時に居合わせた一般のお客からも疑われるように、由梨の爆乳を見られていたのだ。


 それほどに彼女の胸は凄いのである。


 今のところ、由梨のおっぱいのカップ数は定かではない。

 ただ、見た感じ、Oカップくらいはありそうな気はする。


「やっぱり、こういう私じゃ困るよね?」

「そ、そんなことはないよ。それも由梨さんの魅力だと思うし」


 遊園地内にいる人らの視線を今でも感じながらも、良樹は由梨の豊満な胸を横目でチラチラと見ながら言う。


「良樹君からジェットコースターに乗ろうって提案してもらったのに。本当に、ごめんね」

「いいよ。でも、由梨さんは、以前は乗れたの?」

「うん。そうだね。昔はね」

「いつ頃?」

「それは……三年前かな」

「三年前? その時は乗れたんだ」

「そうなんだよね。中学三年生の夏休み頃まではよかったんだけどね」


 由梨はため息をつきながら、過去の記憶を辿るように振り返っていたのだ。


 三年前は普通だったということだが、なぜ、数年ほどで、ここまでも魅了するほどのボディになってしまったのだろうか。


 実に興味深いというか。でも、そういう不埒なことは考えず、今は冷静に由梨と向き合っていこうと思う。


 ジェットコースターや乗り物系は難しいとして、もう一度行き先を定めることにした。






「えっとね。確か、ここら辺にあれがあったはず……」


 良樹は手にしているパンフレットを由梨に見せ、別の提案をし始める。


 現状の条件を踏まえ遊べる場所として、お化け屋敷というエリアがあったのだ。


 由梨さんって、怖い系のアトラクションって大丈夫なのかな?


 女の子は一般的にホラー系に弱い傾向がある。


「一応、聞いておくけど、怖いのって大丈夫だったりする?」


 良樹は恐る恐る問いかける。

 妙な間があったものの、彼女は大丈夫だよと、小声で返答してくれた。


 もしや、耐性がある?

 けど、我慢している可能性もあるしな……。


 憶測で物事を思考してしまうが、由梨と一緒に遊べるのが、これしかなかった。


 それに今日は、五華とナギとも遊ばないといけないのだ。


 ジェットコースターの件で大幅に時間を消費してしまい、深く考えている余裕などなかった。


 むしろこれはチャンスなんだ。

 由梨さんと一緒の時間を過ごせる絶好のね。


 お化け屋敷なら由梨に良いところを見せられると思いながらも、彼女の事を気に掛けるように寄り添い、その場所へ向かうのだった。






 実際に入ってみると、やはり、お化け屋敷は怖い。

 暗いというのもあるが、殆ど視界が黒いと、何がそこに存在するのか想像するだけでも恐怖心が掻き立てられるようだった。


 だが、完璧に真っ暗なわけじゃない。


 薄暗く、目がこえてくれば、何となく周りを把握できる状況。


 二人は壁を触りながら出口を目指し、先へ先へと足を進ませていたのだ。




「ここかな……違うのかな?」


 ここに扉のようなものがあるような気がしたが、本物の扉ではなかったようだ。


「じゃあ、こっちかな?」


 良樹が迷っていると――


「ねえ、良樹君、どこにいるの?」


 どこからか、彼女の声が薄っすらと聞こえてくる。


「ここにいるけど」

「どこ?」

「ここだから」


 電気も殆どなく、空間を探るように手を無差別に差し出す。


 刹那、パッと指先に冷たい感触があった。


「良樹君?」

「うん、この手って、由梨さんの?」

「……そうだよ」


 一安心した。


 だが、このお化け屋敷というアトラクションからの脱出が出来なければならないのだ。


 この遊園地にあるお化け屋敷は、お化けが出るという怖さではなく、どこに何があるかわからない怖さを体験できるアトラクションらしい。


 むしろ、何かが出るよりも、恐怖心という思いから生み出される妄想が一番怖いとさえ思う。


 片手で彼女の手を触り、壁を頼りに進んでいくと、ようやく本物の扉のところに辿り着く。

 が、その瞬間に、何かが落ちる音が、この場所一体に響き渡る。


「きゃッ」


 手を繋いでいる彼女が急に背後から抱きついてきたのだ。


 背中には、爆乳が思いっきり接触している。


 もはや、怖いのか、エロいのかわからなくなってきていた。

 最終的には、怖さよりもエロさが勝ったことで、双方の感情が中和され、逆にこの空間でも平常心を保てるようになっていたのだ。


 由梨が背後に抱きついているのはわかるが、一応手を繋いだまま、片方の手でその扉を開け、お化け屋敷の外へ全力で脱出するのだった。

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