第29話 おっぱいに誘惑されている俺は終わりなのかもしれない
周りからは、いつも通りの声が聞こえる。
今日は段取りよく事を解消していこうと、意気込んで幼馴染の家を出て、やっとの思いで学校の敷地内にいるのだが。
非常に緊迫した状況だった。
「ねえ、どうして、彩芽さんと一緒にいるのかな?」
校舎の校門を潜り抜けた後、
いつも通りの爆乳具合に、視線がその大きな膨らみへと向かっていく。
やっぱり、デカいな……。
いや、今はそんな卑猥なことじゃなくて。
解決すべきことがあるだろ。
「これには理由があって」
良樹は活舌よく事の経緯を説明しようとした。
が、その間に、隣に佇んでいた
幼馴染のおっぱいとの接触。
今朝の事が脳裏をよぎり、下半身が反応し始めてくる。
緊迫した状況なのに、さらなる窮地へと追いやられたのだ。
そんな事をしたら、ダメだって……。
どんな環境下だとしても、おっぱいに誘惑されていてはダメだと思う。
下半身のアレが敏感になっていたとしても、強引に説明を続けようとした。
「それは昔からの馴染みで」
「そう……でも、そんなに人前で見せつける必要性はないんじゃないかな?」
由梨は笑顔を見せているが、表情に黒いオーラが入り混じっている。
本気で怒っているのだろう。
右腕に当たるおっぱいと、目の間にある恐怖を同時に感じていた。
「そ、そうですよね。彩芽、少し離れてくれないか?」
強引に話を進めようとしたが、無理だった。
接触するおっぱいには勝てなかったようだ。
良樹は、彩芽に告げる。
が、このままがいいと言って、離してくれる気配すらなかった。
先ほど家を出、通学路を一緒に歩いている際は、こんなにベッタリとくっ付いてくることはなかったのに。
一瞬で、今日の予定が崩れた。
次第に、学校に登校する人が増える時間帯。校門を潜り抜け、校舎の昇降口に向かって歩いている人らにも、この現状をジロジロと見られていた。
あとで面倒事に発展しそうだと思う。
それに、由梨とはこの前の一件以降、関係がよくないのだ。
学校に登校し、最初に由梨に、彩芽と一緒にいるところを見られるなんて幸先が悪い。
ただ、五華とナギにはバレていないから、ギリギリセーフだと思いたかった。
「良樹先輩って、そんな人なんですね」
背後から悪寒が走る。
嫌な感じを覚えつつ、首だけ後ろへ向けると後輩の
「人がいる前で、大胆な事をするなんて。私らへの当てつけなんですね」
「そうじゃないから。こ、これには訳があって……」
良樹は慌てて立ち回ろうとするが、おっぱいの感触に誘惑され、言葉に詰まってしまう。
「そういう発言は聞き飽きましたから。昨日言いましたよね。三人の中から考え直してくれるって。でも、その人とくっ付いている時点で、私らの事はなんとも思っていないんですよね?」
他人に信じてもらうなら態度で示すと良いというが、もはや、どう考えても言い訳などできる状況ではなかった。
「良樹先輩はそういう人なんですね。責任なんて、最初から取る気なんてないってことですよね?」
「ちょっと待ってくれ。それだと誤解されるから……」
周りには人がいる。
事の流れを知らない人に聞かれたら、誤解されてもおかしくない状況だった。
「良樹先輩がそういう姿勢なら、私も、あることないこと言いふらしますけどね」
「勘弁してくれ」
「でしたら、私を選んでくれますよね?」
五華はグッと距離を詰めてきた。
まじまじと見つめてきて、期待した言葉を早く聞きたいといった顔つきをしており、目を輝かせている。
「それは……それについて今話すのは少し難しくて」
「じゃあ、私と付き合えないの?」
「そうでもないというか……」
だ、ダメだ。
段取りを踏む前に超展開を迎えているんだが……。
予定が狂いすぎて、ただただ板挟みになっていた。
「良樹君。あなたが、そういう人だとは知りませんでした。一日経てば、考えを改めてくれると思っていましたが、もう無理かもね」
「え?」
「五華さん、一緒に行かない?」
「はい」
五華も由梨の問いかけに頷いて、彼女らは昇降口の方へ向かって行く。
何もできないまま、その瞬間が終わった。
残ったのは、二人から軽蔑されてしまった虚無感と、右腕に抱きついている幼馴染の存在だけだった。
「これで、これから二人っきりになれるね♡」
彩芽はウインクしてきた。
まさか、二人から嫌われることが彼女の策略だったのか?
幼馴染とは昔からの付き合いだが、これからは関わり方を考え直そうと思った。
朝のHRを終え、二時限目までの授業を終えた。
さっきの授業は体育の授業だった。
ゆえに、良樹は体操服に身を包んでいる。
授業中。誰かとペアになれと先生から指示があったが、その時余った人同士でペアになり、何とか乗り切った。
由梨とは同じクラスであり、彼女との関係性が悪くなければ、すんなりとペアを組めたと思う。
だが、由梨の方へ視線を向けた瞬間、彼女から思いっきり睨まれたのだ。
朝の出来事の事を根に持っているのだろう。
それは自分のせいであり、自身が蒔いた種だからこそ、しょうがないと思えた。
しかし、それも辛いものだ。
今まで普通に同じクラスで生活していた子なのに、ある日を境に関係性が拗れ、まったく口もきいてくれないとなると精神的に来るものがあった。
由梨の事は、今でも付き合いたいとは思っている。
けど、現状的に、その環境を覆すのは難しいだろう。
どうしたらいいのかと体育館を後に、悩みながら廊下を歩き、教室へ向かっていると周りから変な噂をされていることに気づいた。
学年もクラスも違う女の子らから、朝の出来事をネタにヒソヒソ話をされている。
良樹がその場に立ち止まると、周りにいた女の子らはキモイ奴から見られたと言って、どこかへ駆け足で立ち去って行った。
俺、どうしたらいいんだろ……。
このまま由梨と五華と関係性が拗れたまま、学校生活を続けないといけないのだろうか。
そんなのは嫌だ。
どうにかして、この環境を変えたいと思った。
だから、彩芽の件も含め、他の三人との責任も解消したい。
良樹は一つずつ解消していこうと、その廊下でグッと決意を固め、教室に向かって再び歩き出したのだった。
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