第十一話、合戦場の骨の話

 この辺りは昔、それこそ戦国時代に合戦場だったらしい。

 大型のショッピングモールを立てるために再開発が起こったとき、その名残りが出てきてわかったんだ。


 土の中から鏃やら火薬が出てきて、もちろん遺骨もあった。

 ただその中のひとつがおかしかったんだ。戦国時代に死んだはずなのに、どう見てもトラックに轢かれたとしか思えなかったんだって。

 フロントガラスの破片やら、車の塗装やらがくっついてたらしい。


 後から轢き逃げにあった死体を埋めたんじゃないかってことだったけど、研究者が言うには、骨はちゃんと死後四百年以上経っていたって。


 骨を見つけた学者が、戦国時代にはオーパーツとでも呼ぶべき戦車があったかもしれないって躍起になって研究したそうだ。

 でも、研究は頓挫した。その学者が死んだんだ。


 研究室に向かう途中、居眠り運転のトラックに撥ねられた。即死だったらしい。

 現場にはフロントガラスの破片や剥がれた外観塗装代替えテープが散らばってた。



 研究は後任が引き継いだけど、すぐやめになった。

 研究する価値がないからだって。

 見つかった遺骨は何の変哲もない、馬に蹴られて頭蓋骨が陥没しただけの、どこにでもある戦国時代の死人に代わっていたそうだ。

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